センシティブなフェアリーの愛♡協奏曲《ラブコンツェルト》

夏愛 眠

文字の大きさ
34 / 49

33話・死の真相

しおりを挟む
 その日の夕食は、グレンと入れ替わりに帰ってきたお父さんが一緒だった。そのせいで最初降りてこなかったエルナンも、父に顔を見せなさいと呼び出され食堂へやってきた。

 しかし、ちらりとアシュリーの顔を見ると、眉を寄せ顔を赤くしてうつむいてしまった。



 エルナンの父は「ほう」という顔をしてエルナンとアシュリーの様子を見ていたが、アシュリーはアシュリーで、先生から聞いた過去の話やこれからのこと、グレンと先生からの求婚など、考えることがいっぱいでエルナンのおかしな様子にも気づけないでいた。



 お屋敷からいなくなった庭師、そしてフェアリーのフューシャ。フューシャは庭師を追いかけて出ていったのだろうか。フューシャは庭師の方を愛していたのかしら……。



(明日……明日、ジャンに曾祖父さんの話を聞いてみよう……)



 そんな風に考えていた。





 ——翌朝、どんよりと曇っていて今にも雨が降りそうだ。朝食を食べてから早めにいつもの温室に向かってみる。今はまだ午前中の仕事中だろうから待つつもりでいたが、温室の裏手に回るとそこにはジャンと中年の男性がふたりで話し込んでいた。



「アシュリー」

「ジャン……おはよう」

「おはよう、ちょうどよかった」



 ジャンがもう一人の男性と目を合わせてから、アシュリーに向かって紹介してくれる。



「俺の父親のコビーだ」

「!!」



 ジャンより少し小柄で顔立ちもやさしいが、面差しはよく似ている。

「はじめまして、息子が世話になっとります」

 そう言って帽子を取って微笑んでくれる。



「は、はじめまして。あたしはアシュリーです」

「親父もここの庭師なんだ。いつもは表側で仕事しているが」



 どうやら広い庭園を分担していて、ジャンは北側の、お父さんは南側を主に世話しているらしい。



「アシュリーのことを話したんだ。緑の護り手の加護のことも。そしたら話したいというからここで待っていた」

「あたしも、曾祖父さんのこと聞きたくて……お父さんに会えてよかった」

「そうですか。どんなことですかな」

「えぇっと……」



 ちらとジャンの方を見ると、「話してくれ」と促されたので、そのまま続ける。



「ジャンの曾祖父さんは……もしかしてここの屋敷にいた庭師さん……ですか? 前の持ち主の時に」

「そうです。正しくは前の持ち主は管財人なので、前の前の持ち主ですがね」

「管財人……」

「以前の持ち主が破産してしまったので、三十年ほど誰も住まずに管理だけされておりました」

「なるほど……」



 その説明で、アシュリーにもなんとなくは理解できた。ただそこから何と話していいのかわからなくなってしまった。



「あ、あの……」



 仕方なくアシュリーは率直に訊いた。



「ジャンの曾祖母さんはフェアリーなのですか?」



 するとコビーもジャンも目を見開いてアシュリーを見た。

「……」

「驚きましたな。それは違います」



「あ……じゃあ、フューシャは曾祖父さんを追って出ていったわけじゃ……」

「……どこでそんな話を?」

「えっと……その……前の持ち主について調べていたんです……。どうして没落してしまったのか気になって」

「理由はわかりましたか?」

「庭師がいなくなって、庭が荒れ放題になって花園のフェアリーたちが去っていったって……。そのあとしばらくして、加護を与えてたフューシャも姿を消してしまったと」

「なるほど……そうでしたか」



 コビーとジャンは目を見合わせている。



「アシュリーさん、祖父のジムは一度だけフェアリーと結ばれて加護を授かりました。しかし、そのフェアリーは屋敷のおぼっちゃまに見初められて結婚し、以降は近しい友人としての付き合いだったのです。その後、ジムも同じ使用人だった祖母と結婚しとります。」

「……!!」



 なんだか自分の境遇と少しだけ似ている、とアシュリーは驚いた。



「おぼっちゃまは歳をとるうちにとても嫉妬に苦しまれたようで……というのも、フェアリーはいつまでも美しく若かったのです。そんなところに、昔フェアリーとジムが絆を結んでいたことを知ってしまったものだから、とてもお怒りになってジムを追い出しました」

「そんな……」

「ジムと一緒に働いていた私の祖母や両親も家族ぐるみで出ていくことになり、屋敷を追い出されたという噂で新しい仕事に就くのも難しく……苦労を重ねてジムは数年で亡くなりました。この屋敷が管財人のものになってやっと、私の父がこの屋敷に庭師として呼び戻されたのです」



 アシュリーはしばらく言葉を失っていたが、絞り出すように言った。

「……フェアリーは……ジムさんを不幸にしてしまったのね……」



 コビーは気づかわしげな顔をしてアシュリーを見つめて言った。

「いや、そうは思いませんです」

「え?」

「祖父が亡くなった時、まだわしも幼かったが……恨み言の一つも聞いたことはありません。いつも幸せそうでした。わしも、ジャンもそうだが、この仕事がとても好きなのです。緑の護り手になり、植物たちをもっと理解できるようになることは喜びでしかない……。ジャンもあなたの加護を得られたことを、とても幸せそうに話してくれました」



 ジャンを見ると、照れくさそうにしていてそんな表情はとても珍しいと思った。



「ジャンのことをよろしくお願いします。過去のフェアリーとのいざこざでアシュリーさんを悪く思うことはありません。でも、同じ不幸は生まずに済むならその方がいい。わしらにできることは少ないでしょうが、何かあったら力になりましょう」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...