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第四話 三秒遅れの町
しおりを挟む町の時計は、すべて三秒遅れていた。
駅前の時計、交差点の信号、コンビニのデジタル看板。
人々は、特に気にしていない。
でも、私には分かる。
表示より三秒前に、すべてが起きている。
電車の発車ベルも、信号の赤も、歩行者の動きも、
すべてがほんの少し先行している。
⸻
最初は小さな違和感だった。
信号が青に変わる前に、車が交差点を通る。
店員が商品を並べる手の動きが、表示より早い。
誰も気づかない。
でも確実に、世界は三秒だけずれている。
⸻
ある日、町を歩いていると、
小学生の列に気づいた。
一人だけ、列から遅れている。
私には、その子の時間が「正しい現在」に見える。
その子が飛び出す寸前に気づく。
「止まれ!」
振り返ると、車はもう目の前。
だが子供は無事に列に戻った。
私は、初めて確信する。
三秒のズレは、私だけではない。
町全体、時間がずれている。
⸻
夕方、交差点で赤信号を待つ。
ふと、周囲を見る。
人々の歩幅、足音、会話――
すべてが微妙にずれている。
誰も気づかず、生活は流れていく。
でも私は知っている。
この町は、すでに時間の正常な流れを失っている。
そして恐ろしいことに、
そのズレは日ごとに大きくなる。
⸻
夜。
自宅の窓から町を見下ろす。
家の時計は正しい。
でも町の街灯、車のライト、ネオンサイン――
すべてが三秒遅れている。
小さな世界のズレが、
ゆっくり、確実に広がっている。
私は理解する。
この町は、
「時間の外側」に少しずつ取り込まれつつあるのだ、と。
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