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第一章
018 ツッコミどころが多すぎてツッコみきれねぇ
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俺の言葉を聞いた面白軍団達は、おもむろに立ち上がると女が仁王立ちし、そしてその左の足元に小さい男、右の足元に大男が座るように位置取った。
その様子を不思議に感じ見ていると、大胆不敵に笑い声を上げる。
まず仮面女が、両手を時計の九時の形にして、
「オォーホッホッホ! ワタクシはリーダー担当の『L』 暁に散る薔薇レミュエラ!」
そして小さな男も両手を九時の形にして、
「フッフッフ。私はレフト担当の『L』 黄金の聖輝石リチャールソン!」
最後に大男も両手を九時の形にして、
「ウェ~ヘッヘッヘ。おではライト担当の『L』 えーとぉ、えーとぉ、レドモンドだぞぉ!」
三人とも名前を言う時やたらと巻き舌で、ポーズを取るたびにどっからともなく、
ばぁぁぁん! ばぁぁぁん! ばばぁぁぁぁん! とでも聞こえて来そうなほどの勢いに、俺も歩もポカーン状態。
そんな俺達の事なんてまるでいないがの如く、三人組は腕を組み、仮面女が口を開きやはり巻き舌で、
「レミュエラ! リチャールソン! レドモンド! ワタクシ達ぃぃぃ、三人揃ってぇぇぇぇ、トリプルL!」
そのまま、まるで『決まった!』と言わんばかりに体を震わせ身を打ちひしがれている様子。
ここでも、どばばぁぁぁぁぁん! とでも聞こえてきそうな勢い。
確かに決まったんだろうが、ツッコミどころが多すぎてやばいだろう。
流石にこれにツッコまなければ、俺としてのアイデンティティが保てなくなる。
俺は惚けた顔をした歩に手で制止をかけながら口を開く。
「よし! お前らの名前とグループ名は分かった。分かった上であえて言わせてもらおう!」
だが、そう決意を込めて言った俺の言葉に、レミュエラがおもいっきり手で制止をかけてくる。
「ちょっと待っていただけますの? ワタクシ、言いたいことがありまして。ちょっとレドモンド!」
言いながらピンクの仮面から覗く青の双眸で、レドモンドと名乗った大男を睨みつけた。
「あなたの手が私の体にかかってたじゃないの! いつも言ってるの覚えてないわけ? もう少し左にずれなさいって!」
レドモンドは頭の上で大きな両手を合わせ頭を下げる。
「ごめぇん、ねぇちゃぁん。本番って初めてだったからぁ、練習の時とは違ったんだよぉ」
「ふん、そうね。分かったわ! けれど、あなた二つ名も忘れてしまっていたじゃないですの!」
「だってぇだってぇ、おでのやつ難しいんだもんよぉ。もっかい教えてくれよぉ」
「あなたのはねぇ、大山鳴動蟻一匹、よ! ちゃんと覚えておきなさい!」
大山鳴動して鼠が一匹よりさらにしょぼいその二つ名。俺はそれを聞き本当に仲間、いや姉弟なのかと疑いたくなった。
だが確かに的を射てるとは思う。ウドの大木的な意味で考えれば、まさにぴったりとも言える言葉。
四字熟語も異世界でも通用し、一般に使用していることに舌を巻いていると、レミュエラが俺の顔をじっと見据えてきていた。
ボディラインを強調したような服と、露出の髙過ぎる軽装鎧が否応なく目に入り、動くたびにプルンと揺れる御胸が俺の意識を引っ張る。
「あなた! 何か言いかけてましたわね! 何を言おうとしていたんですの?」
「ええとな――」
「その前に!」
喋ろうとすると声を被せてくる。主導権をこちらに渡してこない。
リーダーとしての責務を理解しているのかもしれない。
「ワタクシ達が名乗ったんですから、あなたたちも名乗るのが筋ではなくって?」
確かにそうだが、何を言おうとしてたかを聞いてきたのはこいつらだ。
こんな訳の分からないやつらに普通に名前を名乗るのは負けたような気がする。
さてどうするか、と思いつつ言葉を考えると、にまりと口が緩む、
「俺の名前は藤堂兵輔! お前らのような阿呆共に名乗る名は持っておらんわい!」
言いながら、びしりと指先を突きつける。勿論、完璧な決め顔ではあるがドヤ顔ではない。
名前を名乗ったうえで、名乗る名は持っていないと言ったのは当然分かっているのだから。
だがしかし。
俺の言葉に、レミュエラは両手を握りしめ二度振り下ろすような動作をした。
そして色気のある唇から放たれる言葉に俺は呆気にとられることになる。
「あ、あほですって! あなた、今なんて言いました!?」
俺のボケを完全にスルーして天然ボケをぶちかましてくるレミュエラに心底おののいた。
もし狙っているのだとしたら凄まじいが、流石にそんな感じではない。
勿論、言い直したりボケ直すのは愚の骨頂である。
ということで、俺は単純に罵倒してやることにした。
「だから、あほっていったんだよ。今自分で言ったじゃん」
「くきぃぃぃぃぃぃぃ!」
レミュエラはつけていた手袋の端を噛みながら、奇声を上げ枯れ葉の上に腰を下ろした。
もう無茶苦茶だ。
あまりの勢いにツッコみたいとこにはツッコめないし、いつまでたっても話が先へと進んでいかない。
そんな風に思っていると、歩が俺の肩をちょいちょいとつついてきた。
「ね、ねぇ、兵輔。日本の名前はちょっとまずいんじゃないの……? 皆、カタカナの名前だしさ」
確かにそう。俺は自分の名前に誇りを持っている。
けれど、郷に入っては郷に従えという言葉、そして適応力もあると自負している。
異世界人とばれるとまずいのかどうかは知らないが、予習組の歩の言葉は無下に切り捨てるわけにはいかない。
「じゃあ、俺の名前はウィリアムスだ! つって、納得できんの?」
「ええっ? いや、下の名前でいいんじゃない? ちなみに兵輔がウィリアムスだったら僕はどうなるの?」
「俺がウィリアムスだったら、歩はウォークだ! 完璧だろ?」
「いやいや、待ってよ! それ、ただ僕の名前を英語にしただけじゃんか! もういいよ! 名前ね。下の名前で!」
そんな会話を小声でしていると、気を取り直したのか、慰められていたレミュエラが俺に向かって指を突きつけてくる。
当然のようにその時御胸はたゆゆんと揺れて俺の気を引いた。
まじでそれが狙いの服装なんじゃないかと思えるほど。
「ふふふふ。あなた、ワタクシの事を愚弄に愚弄してくれましたわね! カッコよくて好みだったのだけど、もう許しませんわ!」
そんなストレートに言われると照れるなぁ、と頭を掻いた後、指を突きつけながら言葉を返す。
「いや、まだ終わってないぞ! まだまだ言いたいことは山ほどある!」
「な、何ですって! き、聞いてあげるから言ってみなさいよ!」
なんで聞いてもらわにゃならんのだ、と思いつつ口を開く。
「まずは、お前らの三人のポーズ。こっちから見るとLの文字が逆向きだ! それではただの九時でしかない! トリプルくじだ! おそらく三回ティッシュだろう!」
「な、なんですってぇー! って、あいたっ」
俺が体を斜めにしビシリと指を突きつけると、レミュエラはずささっと後退り、石ころに引っかかりこけた。仮面の中の青の瞳が滲んだが、この服装では残念ながらおパンツは拝むことは出来ない。
けれど、体中から色気を発散する女が仰向けで転がっている姿は、俺の男の子の心を否応にもなくくすぐってくる。
弟たちはレミュエラに駆け寄ると、心配したような顔で口を開く。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫かぁ? ねぇちゃぁん?」
毎度毎度、俺のリズムを崩してくれる三人組。
でも、俺自身はそれほど悪感情は持っていないことに気付く。
リアクション芸人みたいだし、こけた時も当たり前と言わんばかりにぷるるんって御胸が揺れるのが見えた。
見てるだけで目の保養になるなと思いつつ、
「おいおい、大丈夫か、レミュエラ」
と、一応手を掲げながら心配して声を掛けると、立ち上がってスタスタと俺に向かって歩いてくる。
「な、なんでいきなり呼び捨てにしているんですの! レミュエラ様と言いなさい! レミュエラ様と!」
指を突きつけ、ジッと青の双眸を向けてくるのに、なんで様付けせなあかんのだ、と言いたかったがグッと飲み込んだ。
「いいじゃん、呼び捨ての方が親密になれるぞ? レミュエラも俺の事兵輔って呼べよ。で、こいつは歩な」
歩の肩を叩きながらそう言うと、マスクをしてるから口が半開きになってるくらいしか分からんが、キョトンとしたような雰囲気で俺と歩の顔を交互に視線を向けた。
近くで改めて見るとマスクの下は整った顔をしているような気がする。
マスクを剥ぎ取ったら、相当可愛いんじゃないか?と、悪戯心がくすぐられているとレミュエラが腕を組み唇を引き締めた。
「ヒョ、ヒョウスケとアユムね。覚えておくわ! 永遠のライバルとして! それで、言いたいことは全部ですの?」
「いや、まだまだ全然だ! いいか? まずリーダーのLは良い。レフトのLも良い。けどな? ライトはLじゃなくてRなんだよ。お分かりかね?」
「な、なんですってぇー! あいたぁっ」
レミュエラは俺の言葉を聞くと、大声を上げながら後退っていき、今度は木にぶつかった。
そのままずりずりと木の幹に背中を預けて滑り落ちていくのに、だんだん可愛く思えてきたような気がする。
弟たちが駆け寄ろうとしたが、その前に俺は手を差し出す。
全部付き合ってると、どんどん時間が過ぎていくし俺の方がだいぶ距離が近い。
「ほらっ。立てるか?レミュエラ」
レミュエラは倒れたまま俺の手と俺の顔を交互に見つめ、恐る恐る手を取り立ち上がる。
「あ、ありがとですの。け、けど、それとこれとは別の話ですわ! でも、しばしお待ちくださいですの!」
と、言って駆けつけてきていた弟の所に歩み寄り口を開く。
「ライトってLじゃなくてRって言うのは聞きましたわよね? どうしようかしら……」
と、そのまま三人で何やかや話し始めるのを見て、俺は息をつきながら歩に声を掛けた。
「はぁ~。なんなんだ、これ。あんま長引くと野宿する羽目になるんじゃねーの……。こんなモンスターがいる森のど真ん中でさ」
俺の言葉に歩はぐるんと森を見渡してから、瞳を僅かに揺らす。
「そ、それはまずいよぉ。食料もあんまり買ってないし。早めにここを切り抜けないと」
そう言って歩は視線を三馬鹿トリオに目を向けた。
俺もそれに倣うとレミュエラが俺達の方へと歩み寄ってきて口を開く。
「ちょっとあなた! あなたがLではなくRだと指摘したんですから、何か代案を考えなさい!」
「んで俺が……。弟たちと相談してたんじゃなかったのか?」
レミュエラは大きな御胸を押し上げる様に腕を組み、一回り程低い目線からじっと俺の眼を見つめてくる。
御胸が気になって気になって耳から言葉が抜けていきそうなので、そのポーズは止めて欲しい。
「一応案は出ましたわ! それで、一緒に考えて欲しいんですの! まず、ライトをリトルに変えるという案なのですけれど?」
あの大男が小さいを担当するわけになるということ。
「大男が逆に小さいと名乗ることで、相手の油断を誘うと言う作戦か。案外悪くないんじゃないか?」
言うと、何故か一瞬たじろいで弟たちに向かって振り返った。
「ちょっと、リチャールソン! あなた、そういう意味で言ってたの? 私はレドモンドがリトルを担当するなんてありえないと思っていたのに!」
あり得ないと思っていたんなら俺に聞くなよ、という気持ちと、意外とまともなのかな? という気持ちが、俺の中で絡み合う。
いや、見た目からしてまともなわけはない。ぺちぺちとたまに手を叩いてみせる鞭のような物も、近くで見たら完璧に蠅叩き。
全てに突っ込んでやりたいが、それをやっていたら、あら不思議、と本が一冊出来あがるだろう。
面白いけど文章しか書かれていない漫画を読んでいるような、現状そんな気分。意味不明だ。
また再度がやがやと話し出すのに溜息をつきたい気持ちを押し殺し、歩に顔を向ける。
「なぁ、なんか良い案でも出してやってくれよ。俺突っ込みたいところに突っ込めないどころか、時間が経過すればするほどツッコミどころが増えていってるんだけど」
俺の言葉に「うーん」と唸り声をあげ考え出す歩。
そしてそんな俺の言葉を聞いてか、俺と歩に期待と羨望の入り混じったような雰囲気で、レミュエラが見つめてきていた。
その様子を不思議に感じ見ていると、大胆不敵に笑い声を上げる。
まず仮面女が、両手を時計の九時の形にして、
「オォーホッホッホ! ワタクシはリーダー担当の『L』 暁に散る薔薇レミュエラ!」
そして小さな男も両手を九時の形にして、
「フッフッフ。私はレフト担当の『L』 黄金の聖輝石リチャールソン!」
最後に大男も両手を九時の形にして、
「ウェ~ヘッヘッヘ。おではライト担当の『L』 えーとぉ、えーとぉ、レドモンドだぞぉ!」
三人とも名前を言う時やたらと巻き舌で、ポーズを取るたびにどっからともなく、
ばぁぁぁん! ばぁぁぁん! ばばぁぁぁぁん! とでも聞こえて来そうなほどの勢いに、俺も歩もポカーン状態。
そんな俺達の事なんてまるでいないがの如く、三人組は腕を組み、仮面女が口を開きやはり巻き舌で、
「レミュエラ! リチャールソン! レドモンド! ワタクシ達ぃぃぃ、三人揃ってぇぇぇぇ、トリプルL!」
そのまま、まるで『決まった!』と言わんばかりに体を震わせ身を打ちひしがれている様子。
ここでも、どばばぁぁぁぁぁん! とでも聞こえてきそうな勢い。
確かに決まったんだろうが、ツッコミどころが多すぎてやばいだろう。
流石にこれにツッコまなければ、俺としてのアイデンティティが保てなくなる。
俺は惚けた顔をした歩に手で制止をかけながら口を開く。
「よし! お前らの名前とグループ名は分かった。分かった上であえて言わせてもらおう!」
だが、そう決意を込めて言った俺の言葉に、レミュエラがおもいっきり手で制止をかけてくる。
「ちょっと待っていただけますの? ワタクシ、言いたいことがありまして。ちょっとレドモンド!」
言いながらピンクの仮面から覗く青の双眸で、レドモンドと名乗った大男を睨みつけた。
「あなたの手が私の体にかかってたじゃないの! いつも言ってるの覚えてないわけ? もう少し左にずれなさいって!」
レドモンドは頭の上で大きな両手を合わせ頭を下げる。
「ごめぇん、ねぇちゃぁん。本番って初めてだったからぁ、練習の時とは違ったんだよぉ」
「ふん、そうね。分かったわ! けれど、あなた二つ名も忘れてしまっていたじゃないですの!」
「だってぇだってぇ、おでのやつ難しいんだもんよぉ。もっかい教えてくれよぉ」
「あなたのはねぇ、大山鳴動蟻一匹、よ! ちゃんと覚えておきなさい!」
大山鳴動して鼠が一匹よりさらにしょぼいその二つ名。俺はそれを聞き本当に仲間、いや姉弟なのかと疑いたくなった。
だが確かに的を射てるとは思う。ウドの大木的な意味で考えれば、まさにぴったりとも言える言葉。
四字熟語も異世界でも通用し、一般に使用していることに舌を巻いていると、レミュエラが俺の顔をじっと見据えてきていた。
ボディラインを強調したような服と、露出の髙過ぎる軽装鎧が否応なく目に入り、動くたびにプルンと揺れる御胸が俺の意識を引っ張る。
「あなた! 何か言いかけてましたわね! 何を言おうとしていたんですの?」
「ええとな――」
「その前に!」
喋ろうとすると声を被せてくる。主導権をこちらに渡してこない。
リーダーとしての責務を理解しているのかもしれない。
「ワタクシ達が名乗ったんですから、あなたたちも名乗るのが筋ではなくって?」
確かにそうだが、何を言おうとしてたかを聞いてきたのはこいつらだ。
こんな訳の分からないやつらに普通に名前を名乗るのは負けたような気がする。
さてどうするか、と思いつつ言葉を考えると、にまりと口が緩む、
「俺の名前は藤堂兵輔! お前らのような阿呆共に名乗る名は持っておらんわい!」
言いながら、びしりと指先を突きつける。勿論、完璧な決め顔ではあるがドヤ顔ではない。
名前を名乗ったうえで、名乗る名は持っていないと言ったのは当然分かっているのだから。
だがしかし。
俺の言葉に、レミュエラは両手を握りしめ二度振り下ろすような動作をした。
そして色気のある唇から放たれる言葉に俺は呆気にとられることになる。
「あ、あほですって! あなた、今なんて言いました!?」
俺のボケを完全にスルーして天然ボケをぶちかましてくるレミュエラに心底おののいた。
もし狙っているのだとしたら凄まじいが、流石にそんな感じではない。
勿論、言い直したりボケ直すのは愚の骨頂である。
ということで、俺は単純に罵倒してやることにした。
「だから、あほっていったんだよ。今自分で言ったじゃん」
「くきぃぃぃぃぃぃぃ!」
レミュエラはつけていた手袋の端を噛みながら、奇声を上げ枯れ葉の上に腰を下ろした。
もう無茶苦茶だ。
あまりの勢いにツッコみたいとこにはツッコめないし、いつまでたっても話が先へと進んでいかない。
そんな風に思っていると、歩が俺の肩をちょいちょいとつついてきた。
「ね、ねぇ、兵輔。日本の名前はちょっとまずいんじゃないの……? 皆、カタカナの名前だしさ」
確かにそう。俺は自分の名前に誇りを持っている。
けれど、郷に入っては郷に従えという言葉、そして適応力もあると自負している。
異世界人とばれるとまずいのかどうかは知らないが、予習組の歩の言葉は無下に切り捨てるわけにはいかない。
「じゃあ、俺の名前はウィリアムスだ! つって、納得できんの?」
「ええっ? いや、下の名前でいいんじゃない? ちなみに兵輔がウィリアムスだったら僕はどうなるの?」
「俺がウィリアムスだったら、歩はウォークだ! 完璧だろ?」
「いやいや、待ってよ! それ、ただ僕の名前を英語にしただけじゃんか! もういいよ! 名前ね。下の名前で!」
そんな会話を小声でしていると、気を取り直したのか、慰められていたレミュエラが俺に向かって指を突きつけてくる。
当然のようにその時御胸はたゆゆんと揺れて俺の気を引いた。
まじでそれが狙いの服装なんじゃないかと思えるほど。
「ふふふふ。あなた、ワタクシの事を愚弄に愚弄してくれましたわね! カッコよくて好みだったのだけど、もう許しませんわ!」
そんなストレートに言われると照れるなぁ、と頭を掻いた後、指を突きつけながら言葉を返す。
「いや、まだ終わってないぞ! まだまだ言いたいことは山ほどある!」
「な、何ですって! き、聞いてあげるから言ってみなさいよ!」
なんで聞いてもらわにゃならんのだ、と思いつつ口を開く。
「まずは、お前らの三人のポーズ。こっちから見るとLの文字が逆向きだ! それではただの九時でしかない! トリプルくじだ! おそらく三回ティッシュだろう!」
「な、なんですってぇー! って、あいたっ」
俺が体を斜めにしビシリと指を突きつけると、レミュエラはずささっと後退り、石ころに引っかかりこけた。仮面の中の青の瞳が滲んだが、この服装では残念ながらおパンツは拝むことは出来ない。
けれど、体中から色気を発散する女が仰向けで転がっている姿は、俺の男の子の心を否応にもなくくすぐってくる。
弟たちはレミュエラに駆け寄ると、心配したような顔で口を開く。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫かぁ? ねぇちゃぁん?」
毎度毎度、俺のリズムを崩してくれる三人組。
でも、俺自身はそれほど悪感情は持っていないことに気付く。
リアクション芸人みたいだし、こけた時も当たり前と言わんばかりにぷるるんって御胸が揺れるのが見えた。
見てるだけで目の保養になるなと思いつつ、
「おいおい、大丈夫か、レミュエラ」
と、一応手を掲げながら心配して声を掛けると、立ち上がってスタスタと俺に向かって歩いてくる。
「な、なんでいきなり呼び捨てにしているんですの! レミュエラ様と言いなさい! レミュエラ様と!」
指を突きつけ、ジッと青の双眸を向けてくるのに、なんで様付けせなあかんのだ、と言いたかったがグッと飲み込んだ。
「いいじゃん、呼び捨ての方が親密になれるぞ? レミュエラも俺の事兵輔って呼べよ。で、こいつは歩な」
歩の肩を叩きながらそう言うと、マスクをしてるから口が半開きになってるくらいしか分からんが、キョトンとしたような雰囲気で俺と歩の顔を交互に視線を向けた。
近くで改めて見るとマスクの下は整った顔をしているような気がする。
マスクを剥ぎ取ったら、相当可愛いんじゃないか?と、悪戯心がくすぐられているとレミュエラが腕を組み唇を引き締めた。
「ヒョ、ヒョウスケとアユムね。覚えておくわ! 永遠のライバルとして! それで、言いたいことは全部ですの?」
「いや、まだまだ全然だ! いいか? まずリーダーのLは良い。レフトのLも良い。けどな? ライトはLじゃなくてRなんだよ。お分かりかね?」
「な、なんですってぇー! あいたぁっ」
レミュエラは俺の言葉を聞くと、大声を上げながら後退っていき、今度は木にぶつかった。
そのままずりずりと木の幹に背中を預けて滑り落ちていくのに、だんだん可愛く思えてきたような気がする。
弟たちが駆け寄ろうとしたが、その前に俺は手を差し出す。
全部付き合ってると、どんどん時間が過ぎていくし俺の方がだいぶ距離が近い。
「ほらっ。立てるか?レミュエラ」
レミュエラは倒れたまま俺の手と俺の顔を交互に見つめ、恐る恐る手を取り立ち上がる。
「あ、ありがとですの。け、けど、それとこれとは別の話ですわ! でも、しばしお待ちくださいですの!」
と、言って駆けつけてきていた弟の所に歩み寄り口を開く。
「ライトってLじゃなくてRって言うのは聞きましたわよね? どうしようかしら……」
と、そのまま三人で何やかや話し始めるのを見て、俺は息をつきながら歩に声を掛けた。
「はぁ~。なんなんだ、これ。あんま長引くと野宿する羽目になるんじゃねーの……。こんなモンスターがいる森のど真ん中でさ」
俺の言葉に歩はぐるんと森を見渡してから、瞳を僅かに揺らす。
「そ、それはまずいよぉ。食料もあんまり買ってないし。早めにここを切り抜けないと」
そう言って歩は視線を三馬鹿トリオに目を向けた。
俺もそれに倣うとレミュエラが俺達の方へと歩み寄ってきて口を開く。
「ちょっとあなた! あなたがLではなくRだと指摘したんですから、何か代案を考えなさい!」
「んで俺が……。弟たちと相談してたんじゃなかったのか?」
レミュエラは大きな御胸を押し上げる様に腕を組み、一回り程低い目線からじっと俺の眼を見つめてくる。
御胸が気になって気になって耳から言葉が抜けていきそうなので、そのポーズは止めて欲しい。
「一応案は出ましたわ! それで、一緒に考えて欲しいんですの! まず、ライトをリトルに変えるという案なのですけれど?」
あの大男が小さいを担当するわけになるということ。
「大男が逆に小さいと名乗ることで、相手の油断を誘うと言う作戦か。案外悪くないんじゃないか?」
言うと、何故か一瞬たじろいで弟たちに向かって振り返った。
「ちょっと、リチャールソン! あなた、そういう意味で言ってたの? 私はレドモンドがリトルを担当するなんてありえないと思っていたのに!」
あり得ないと思っていたんなら俺に聞くなよ、という気持ちと、意外とまともなのかな? という気持ちが、俺の中で絡み合う。
いや、見た目からしてまともなわけはない。ぺちぺちとたまに手を叩いてみせる鞭のような物も、近くで見たら完璧に蠅叩き。
全てに突っ込んでやりたいが、それをやっていたら、あら不思議、と本が一冊出来あがるだろう。
面白いけど文章しか書かれていない漫画を読んでいるような、現状そんな気分。意味不明だ。
また再度がやがやと話し出すのに溜息をつきたい気持ちを押し殺し、歩に顔を向ける。
「なぁ、なんか良い案でも出してやってくれよ。俺突っ込みたいところに突っ込めないどころか、時間が経過すればするほどツッコミどころが増えていってるんだけど」
俺の言葉に「うーん」と唸り声をあげ考え出す歩。
そしてそんな俺の言葉を聞いてか、俺と歩に期待と羨望の入り混じったような雰囲気で、レミュエラが見つめてきていた。
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そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
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