男爵家の娘の私が気弱な王子の後宮に呼ばれるなんて何事ですか!?

蒼キるり

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12.思いがけない変化だけど

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「あれは妹だが」


 さも当然のように言う皇子の声を聞き、絶対に上げるものかと思っていた顔をミアは最も簡単に上げてしまった。
 皇子はひどく穏やかな顔をしていた。ミアが声を荒げたことなど少しも気にしていないように。もしくは他の事に気掛かりで気になどしていられなかったように。


「母は違うが父は同じだから列記とした妹だし、産まれた時期が一番近いんだ。妹や弟の中では一番よく話をする」


 ミアは皇子の顔を見て何度も瞬きを繰り返す。皇子は不思議そうな顔で首を傾げる。


「妹の話、していなかったか?」

「……仲の良い妹がいる、というのは確かに聞いていましたね」


 聞いてはいたが、ミア自身の弟が歳が離れていることもあり、妹という言葉から勝手に幼い姿を想像してしまっていた。


「大変失礼致しました。勝手に勘違いして酷い事を……」


 例え本当だったとしても言う資格などないのに、とミアが顔を顰めると、皇子は何故か頬を赤らめて首を振った。


「いや、その、なんというか、そんな風に思ってもらえるのは、嬉しい」

「……それは、どういう意味でしょうか」

「だって、少なくとも少しは好意を持ってくれているから、気にしてくれたということじゃないか」


 赤く染まった皇子の頬をミアは驚くほど淡々と見つめていた。皇子が自分を嫌ってはいないだろうという想像はついていた。
 そうでなければ理由をつけてもっと来る頻度を減らすだろうし、どうにかして共寝は避けるはずだ。それをしないということは少なくとも嫌われてはいない。
 それよりも自分が皇子に好意を抱いているという事実の方が驚いていた。


(ああ、そうか。私はこの人を憎からず思っているのか。このまま側にいたいと思うくらい。ゆっくりと関係が変わっていってもいいと許容出来るくらい)


 自分が家に帰りたいと最初の頃のように思わなくなった理由さえ明らかになって、ミアは思わずふっと笑ってしまっていた。認めてしまえばなんて簡単で単純なんだろう。
 皇子はミアが笑ったからか、おどおどと続きを話し始めた。


「本当は妹とも、そういう話、というか相談を聞いてもらっていたんだ。とても優しくて良いなと思う女性がいるから、どうしたらいいと思う、と」

「なんと言われたんですか」

「妹は正妃にすればいいじゃないか、なんて簡単に言ってきたが……」


 それは確かに自分たちにはすぐには決められないことだとミアは曖昧に微笑んだ。
 お互いどんな顔をして向き合えばいいのか分からなくて、とりあえずという風に寝台に腰を掛けた。顔は見ないままに皇子がぽつりと話し出す。
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