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6.練習
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「は?……なに、雰囲気作りの練習?」
浩也が当然のように言ってくるから、俺もなんの気もなしにそう言った。浩也でも冗談なんて言うんだな、と続けて言おうとしたら、
「妹さんの為なんでしょ?」
そう言われてこちらに顔を近づけられる。
とん、と俺が今背を向けてる机に手を置いて立ったままの浩也に見つめられると、何を言われたかもよく分からなくなって頷くしかなかった。
「じゃあ、早速練習……始めようか」
浩也が淡々とそう言い、手を伸ばしてくると、浩也の手が俺の頰に触れる。
って、ちょ、ちょっと待てよ!
「なんでお前が動いてるんだよ!普通、彼女の練習なら俺が」
「……最近の女子って肉食なんだよ。基本的に女子の方からキスするし迫るし上に乗る」
「……まじで」
なにそれ、女子怖い。
美奈はそんな事してないだろうな、と一瞬心配になった。いや、あいつは中学に入ったばっかりだし、いやいやないない。
「ともかく、それぐらいされても一切動じないこと。それが男」
「な、なるほど……」
彼女持ちの奴って苦労してたんだな。
「……それともやめる?こんな事でやめてたら、一生彼女なんて出来ないかもだけど」
そう言って、頬から手を離された。それに何故か酷く動揺した。言われた事にじゃない。浩也が離れたことに。思わずその手を掴むと、流石の浩也も少し驚いた顔をしていた。
「つ、続けろよ。練習……」
やっとの事でそう言うと、浩也は一瞬だけ哀しそうな顔をした後、少し笑って俺の耳に了解と囁いた。
先ほどの本棚の前での行動と似たようで、明確に意識されたのであろうそれに、俺は思わずびくりと体を震わせてしまった。
次の瞬間、浩也の顔が俺の目の前にあった。一瞬目線が交差して、声を出そうとした瞬間、ふっと唇に柔らかな感触が重なった。
熱い。最初に浮かんだのはそれだった。次に頰に硬い物が当たった気がしたけど、浩也が首を捻ったのかその感触は消えて、ただただ俺の唇に熱くて柔らかいものが押し当てられてる事しか考えられなかった。
てか、コレってキス……
そんな考えが一瞬だけ浮かんで、次の瞬間に霧散した。
浩也の唇より熱いものが俺の唇をなぞる。浩也に肩を抱き寄せられ、なぞっていただけの浩也の舌が俺の口の中に掻け入ってきた。
驚いて引っ込めていた俺の舌を浩也の舌が誘うようになぞる。それだけで力が抜けてしまう。小さく水音を立てながら浩也は自分の舌を俺の舌に絡めて来た。
何も考えられなくて、されるがままに舌を浩也のと絡めていた。時々、吸い上げられるようにされると、体が痺れたみたいになった。
「……こう、や」
必死で口を開けて名前を呼ぼうとしても、息が上がってうまく呼べない。むしろ変な声が出そうになって黙っていることしか出来なかった。
散々舌を弄られ浩也が息を吐いて離れる頃には、俺の息はすっかり上がっていた。
「……おまえ、なにしてんだよ」
舌が、口の中がまだ変な感じでうまく舌が回らなかった。
睨むように言ってみたけど、そのせいで迫力はなかったと思う。
「……練習って言わなかった?」
そんな風に言われてキスしてくれなんて頼んでないだろ、と怒鳴りたくなったけど特に悪びれもない顔を見て、その気も失せた。
帰る、と一言告げて立とうとすると一瞬足に力が入らなくて、それにもまたイライラする。
机に手をついて立ち上がり図書室を出ようとすると、待ってと声を掛けられた。
「鞄も持たずに帰るつもり?」
はい、と言われてはは何も言えなくて手を出した。鞄を渡された時に少しだけ触れた指先に動揺してる事を、浩也に知られたくなくて、ふいと目を逸らした。
相変わらずガラガラとうるさいとを開けて外に出ると、また声が掛けられた。
「佐武……また明日」
そう言った浩也の顔は、振り返らなかったから見えなかったけど、声がなんか少しだけ切羽詰まった様に聞こえた。でも俺は返事をせずに後ろ手で戸を閉めた。
そういえば、浩也が俺の名前呼んだのは初めてじゃないだろうかと気付いたのは、もう随分と第一図書室を後ろにした頃だった。
浩也が当然のように言ってくるから、俺もなんの気もなしにそう言った。浩也でも冗談なんて言うんだな、と続けて言おうとしたら、
「妹さんの為なんでしょ?」
そう言われてこちらに顔を近づけられる。
とん、と俺が今背を向けてる机に手を置いて立ったままの浩也に見つめられると、何を言われたかもよく分からなくなって頷くしかなかった。
「じゃあ、早速練習……始めようか」
浩也が淡々とそう言い、手を伸ばしてくると、浩也の手が俺の頰に触れる。
って、ちょ、ちょっと待てよ!
「なんでお前が動いてるんだよ!普通、彼女の練習なら俺が」
「……最近の女子って肉食なんだよ。基本的に女子の方からキスするし迫るし上に乗る」
「……まじで」
なにそれ、女子怖い。
美奈はそんな事してないだろうな、と一瞬心配になった。いや、あいつは中学に入ったばっかりだし、いやいやないない。
「ともかく、それぐらいされても一切動じないこと。それが男」
「な、なるほど……」
彼女持ちの奴って苦労してたんだな。
「……それともやめる?こんな事でやめてたら、一生彼女なんて出来ないかもだけど」
そう言って、頬から手を離された。それに何故か酷く動揺した。言われた事にじゃない。浩也が離れたことに。思わずその手を掴むと、流石の浩也も少し驚いた顔をしていた。
「つ、続けろよ。練習……」
やっとの事でそう言うと、浩也は一瞬だけ哀しそうな顔をした後、少し笑って俺の耳に了解と囁いた。
先ほどの本棚の前での行動と似たようで、明確に意識されたのであろうそれに、俺は思わずびくりと体を震わせてしまった。
次の瞬間、浩也の顔が俺の目の前にあった。一瞬目線が交差して、声を出そうとした瞬間、ふっと唇に柔らかな感触が重なった。
熱い。最初に浮かんだのはそれだった。次に頰に硬い物が当たった気がしたけど、浩也が首を捻ったのかその感触は消えて、ただただ俺の唇に熱くて柔らかいものが押し当てられてる事しか考えられなかった。
てか、コレってキス……
そんな考えが一瞬だけ浮かんで、次の瞬間に霧散した。
浩也の唇より熱いものが俺の唇をなぞる。浩也に肩を抱き寄せられ、なぞっていただけの浩也の舌が俺の口の中に掻け入ってきた。
驚いて引っ込めていた俺の舌を浩也の舌が誘うようになぞる。それだけで力が抜けてしまう。小さく水音を立てながら浩也は自分の舌を俺の舌に絡めて来た。
何も考えられなくて、されるがままに舌を浩也のと絡めていた。時々、吸い上げられるようにされると、体が痺れたみたいになった。
「……こう、や」
必死で口を開けて名前を呼ぼうとしても、息が上がってうまく呼べない。むしろ変な声が出そうになって黙っていることしか出来なかった。
散々舌を弄られ浩也が息を吐いて離れる頃には、俺の息はすっかり上がっていた。
「……おまえ、なにしてんだよ」
舌が、口の中がまだ変な感じでうまく舌が回らなかった。
睨むように言ってみたけど、そのせいで迫力はなかったと思う。
「……練習って言わなかった?」
そんな風に言われてキスしてくれなんて頼んでないだろ、と怒鳴りたくなったけど特に悪びれもない顔を見て、その気も失せた。
帰る、と一言告げて立とうとすると一瞬足に力が入らなくて、それにもまたイライラする。
机に手をついて立ち上がり図書室を出ようとすると、待ってと声を掛けられた。
「鞄も持たずに帰るつもり?」
はい、と言われてはは何も言えなくて手を出した。鞄を渡された時に少しだけ触れた指先に動揺してる事を、浩也に知られたくなくて、ふいと目を逸らした。
相変わらずガラガラとうるさいとを開けて外に出ると、また声が掛けられた。
「佐武……また明日」
そう言った浩也の顔は、振り返らなかったから見えなかったけど、声がなんか少しだけ切羽詰まった様に聞こえた。でも俺は返事をせずに後ろ手で戸を閉めた。
そういえば、浩也が俺の名前呼んだのは初めてじゃないだろうかと気付いたのは、もう随分と第一図書室を後ろにした頃だった。
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