続きは第一図書室で

蒼キるり

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15.好きなところ

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「普通に生活して、普通に好きな人を見つけて、普通の結婚をして幸せになるのが一番なんだけどね」

 そう母に言われたのはいつ頃だっただろうか。
 そんな事をふと、放課後の図書室で思い出した。
 昨日浩也の関係について考えたからかもしれない。
 普通に。それが一番なのは俺もよく分かっていて、ずっとそうして来たつもりだけど……浩也と俺がしている事は普通だろうか。

「……こっちも良かったけど読む?」

 浩也が渡してくる本はどれも俺も面白いとおもえるもので、最近は図書室で貸し借りをする事もある。

「浩也って最初会った時は、なんか小難しそうなの読んでたけどこういうのも読むんだよな。」

 というか最近はそういうのを読んでいるのを見た事がない。
 実はこういう俺がよく読むような面白い物の方が好きなんじゃないだろうか。
 そう思って少し笑うと不機嫌そうに眉を寄せてくる。

「別に。なんでも読むよ。そっちこそ、結構見境なしに読むほうじゃない?」

 これとか、と近くにあった本を指差して言われる。
 表紙を見て言葉を詰まらせる。まあ……確かに高校に入って男同士の恋愛モノ読むとは思ってなかったけどな。
 苦い顔をしていたのに気づいたのか、浩也が小さく笑いを漏らす。

「佐武」

 小さな声で名前を呼ばれる。
 そうされると、次の浩也の行動が否応無しに分かってしまう。そんなに多く、こんな事をしているとも思えないのに。
 お互い座っているから、浩也がこちらを向いて横から掠めるようにキスしてくる。
 浩也の髪が頬に触れた。不快な感じではなく、浩也の髪は柔らかくてキスの角度を変える度に頰に擦れるのが心地好い。

「……佐武。こっち来て、キスしにくい」

 ああ、道理でいつもみたいに深くしないなと思った。
 それはそれで良かったんだけどな、と少し思う。深いキスは息も苦しいし、浩也に喰われてしまうんじゃないか、なんておかしな事を考えてしまうから。
 でも、浩也は俺みたいに何もしない女とキスはした事がないって事か、と気づく。
 って事は、行動的な女とばかり付き合ったりしてたって事で……
 それは、なんかこう……もやもやしてしまう。なんでだろう、浩也がそういう事をするのが想像しにくいからかな。
 そんな事を考えているとくっと腕を引かれる。反動で浩也の胸に収まる。
 細く見えるのにびくともしないんだな、と少し意外だった。

「佐武って、キスしてる時に動かないよな」

「……動き方とか知らないだろ、普通」

 軽く体を起こして、椅子を浩也の方に寄せる。
 ふと思い立って手を伸ばす。浩也の 髪に触れる。
 おお、柔らかい。頭に手を乗せて撫でるように動かしてみるのが、想像してたより楽しい。

「……なにしてるの?」

「んー、浩也って髪柔らかいんだな。あとちょっと長い。頭髪検査引っかかるぞ」

「あー、切るのが面倒臭くて。変?」

「いや、良いと思うけど。似合ってるし」

 髪に指を絡めても特に文句は言われなかったから、存分に触らせてもらう。
 うちは母も俺も妹も髪質がしっかりしてるからなー。多分、お世辞にも柔らかいなんて言えない。

「俺、浩也の髪……好きだな」

 良いなあと思って、特に意図せず言葉が漏れた。
 浩也が一瞬驚いた顔をして、口を塞いできた。
 そのまま深くしようとはせず、浩也は啄むようにキスをして少しだけ唇を離した。

「……佐武、俺がキスしたら舌を絡めて」
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