世間が何を言おうとも、私たちは夫婦です。

蒼キるり

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セックスをしない夫婦

6話

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 昔から、恋人との距離感が分からない人間だった。
 いわゆる、好きな人という存在はいた。
 だから、何度か上手くいってお付き合いに発展したこともある。
 ただただ、その瞬間は確かに嬉しかった。それだけは確かだ。

 でも、どうしても、どうしても上手くいかないのだ。
 せっかくできた恋人と上手くいった試しがなかった。


「まだキスもダメなの?」


 していいかと尋ねられ、何度目かの断った時だった。
 呆れたような声と顔に身体が固まった。
 自分はおかしいのではないか、とその時初めて思った。

 手を繋ぐのは、まだ大丈夫だった。なんとなく違和感はあったけど、耐えられた。
 好きな人が手を繋ぎたいというなら、それくらい応えなければ駄目だろうとも思っていた。
 手を繋ぐことくらい。これくらい。そう思っても繋げば繋ぐほど、冷え切っていくような感覚は、どうしようとなかったけれど。

 でも、どうしてもキスは、違和感が拭えなくて、応えることが出来なかった。
 たかだか一瞬、唇と唇を合わせる行為がどうしてこんなに嫌なのだろうと思っても、どうしてもしたいと思えないのだ。
 だから、なんとか誤魔化していたけれど、長く続くはずもなかった。


「みんなしてるよ、それくらい」


 そう言われて、しぶしぶ受け入れたものの、身体中が冷え切っていくようで、こんなことの何が楽しいのかと不思議で仕方なかった。
 それ以上なんて考えるだけで嫌だった。
 きっとそんなことをしてしまったら、身体が本当に凍ってしまう。そう思うほどに、私は進んでいくのが怖かった。
 そんな怖い行為を進んでいくと評すのが、みんながしているからと言われるのが、無性に恐ろしかった。

 その人とは長く続かなかった。その後の人も、みんな長続きはしなかった。
 怖がっていることや嫌がっていることはきっと相手にも伝わるのだろうし、どんどん先に行きたいらしいみんなからすれば、私は物足りなかったに違いない。
 私はただ、時折会って二人きりで食事をしたり話したり、お互いが大切だということを確かめ合いたいだけなのに、それは違うと誰も彼もが言うのだ。
 そんなのは、恋愛ではないと。

 きっと自分は、交際には向かない人間なのだと、この頃にはさすがに悟っていた。
 寂しくはあったけど、至極楽ではあった。
 何かを求められない。先を促されない。自分の身体を自分だけのものとして、日々の生活を送れる。
 とても楽で、息のしやすい生活だった。
 一人で生きていこうと、誰かとお付き合いするのは止めようと思えば、それはそれでとても満ち足りた幸せな生活だったのだ。
 正樹と出会うまでは。
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