世間が何を言おうとも、私たちは夫婦です。

蒼キるり

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婚姻届を出さない夫婦

25話

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 家事なんかのやらなきゃいけないことを全部終えた後に、ソファーに座って宮くんとテレビを流し見しながら会話をするのは、私たちにとって大切な時間だ。
 ここで一緒にお酒を飲む時もあるのだけど、お互いあまり強くはないから次の日が休みの時だけだと決めている。
 明日はお互い仕事だから、それはまた今度、週末の楽しみということになる。


「そういえば、藤崎さんとは上手く話せた?」

「うーん、上手くかどうかは分かんないけど、ちゃんと思ってることは言えたと思うよ」


 私の返答を聞いて、宮くんが安心したように笑う。
 きっと心配させていたんだろうなと思うのだけど、心配してくれたことがやっぱり嬉しい。
 大丈夫だよ、と力を込めて頷いておく。
 私にしては上出来なくらい話せたし、藤崎さんは最初から最後まで丁寧過ぎるほど丁寧に話を聞いてくれた。それだけで十分過ぎるくらいだ。


「藤崎さんに、ちゃんと宮くんのことも話しておいたよ」

「うーん、それはちょっと恥ずかしいような」

「えー、本になるんだよ?」


 恥ずかしがってたらせっかくの本も読めないよ、と揶揄う。
 そうだった、と宮くんが吹き出すから、つられたように私もけらけらと笑った。
 この時間が堪らなく愛おしい。

 その時、テレビのニュース番組がふと目に飛び込んできた。
 それは夫婦別姓についてのニュースだった。日本ではまだ認められていないそれをこれから先の未来で認めていくのかそれとも現状維持を続けるのか、そんなことがつらつらと読み上げられていく。
 賛成か、反対か、その言葉にどれだけの意味が込められているのだろう。

 私も宮くんも、流れるニュースについては特に何も言わない。口を開かない。ただ眺めるだけだ。
 この件については、私たちが何度も話し合ってきたことだ。
 もしこの先、婚姻届を提出しても苗字が別々なままで良くなることがあるとして、私たちはどうするかと雑談の合間に、真剣な会話の際に何度も話してきた。
 まだ明確に答えは出てはいない。

 いつか近い将来変わるのかもしれないし、まだ時間がかかるのかもしれない。先のことは分からないから。
 もし、そうなった時に決めればいいことだとも思う。
 認める。認めない。って、なんなのだろう。例え国に手を挙げていなくても、私たちが夫婦であることに変わりはないのに。
 ただ、私が感じたあの不安を誰かが今も感じているのかと思うと、背筋が寒くなるものがある。
 傍目から見たら大したことでなくても、当人たちには大切なことがこの世にはごまんとあるのだから。
 私が何の不安もなく松ちゃんと呼ばれることや宮くんと呼ぶことが幸せの象徴なのと同じだ。
 だから私はいま、とても幸せだ。
 その幸せな気持ちのまま、隣に座る宮くんを呼びかけた。
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