魔法と呪いの姫君は光とともに

皇ひびき

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始まり

10 (ルカ視点)【改稿】

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 僕はクタリと眠った様に身じろぎすらしないアンジェを、手のひらに乗せたままだ。左手にはアメジストのネックレスを掴んでいた。

 彼女が人の形を取るための必須アイテムだ。貴重なものでもあるし、失くすわけにはいかない。早々にアクセサリーにしか見えない魔道具は、魔道具に魔力を補充するケースにそっとしまう。

 ホワホワとした羽が手のひらに当たり、肌が触れる部分から感じる熱は熱い位だ。小鳥は飛ぶために必要なエネルギーが多いからなのか、体温が熱い。

 愛おしい存在をそのまま触れていたい様な、早くゆっくり休ませてあげたい様な、なんとも複雑な感情につい振り回されてしまう。
執事としての僕にとってあるべきことではないけれど、アンジェが夜を過ごすゲージ内にすぐに寝かせることができなかった。じわりじわりと伝わってくる高い体温を手放し難かったとも言える。
 宝物のように手のひらで優しく包み、小さく美しい銀色の翼をたたみ込んだその背に、そっと頬を寄せると安らかな心音が伝わって来る。

「こんなことをしていたら、フェルド様になんと言われる事か…。まだ幼いとはいえ、まだ幼いとは淑女に対しての態度ではないな…」

 僕は不意に、アンジェを主と呼ぶ大きなぬいぐるみのような形をした鳥型のものを見つめる。

 鳥が好きならつい抱きしめたくなる、フォルムをしているかもしれない。フェルド様なら間違いなく抱き潰してしまうだろう。

 いつかその洗礼は受けるのだろう。
妹がずっと小鳥の姿をまとっていたからかフェルド様は小鳥には弱い。

 フェルド様は見つかっていないつもりかもしれないけれど、屋敷の木々に小さな巣を取り付けていた。彼らが餌に困らぬ様に、指示を出しているのを見たことがあった。

「別に悪い事ではないだろうに」

 鳥にとっては寝床と食事を与えてくれる、無くてはならない存在かもしれない。よく小鳥に集られているところも見かける。

「クロムと言ったか…。お前の主は魔力の使い過ぎで寝落ちてしまったらしい……」

『主は…目を覚ます?』

 少しヨタつきながらも、つぶらな瞳で僕を見上げながら、クロムと名付けられた存在は言う。

 魔力が足りないのかも知れないと、魔力を結晶化してみた。せっかくクロムという存在を倒れてまでも作り上げたのに、明日の朝になって動かないのは困る。泣きじゃくる彼女が目に見える様だ…。

 味が無いより少しの甘さを混ぜ込んでみるか。今後、倒れる前にアンジェ様の口にでも放り込むかとひっそりと心に決め、お米よりも少し大きいサイズの魔力の結晶をお皿に入れ、与えた。

 魔力の結晶を作れるのは恐らくアンジェと僕くらい。なのでアンジェの家族しか、魔力を結晶化できるその事実を知らない。
 そっとアンジェをケージの巣に入れて、鳥籠の外に布をかけた。

「明るいままじゃ、よく眠れないかもしれないから僕の部屋へ行こう」

 そうして小鳥の餌のようになった結晶を美味しそうに口にするクロムを眺めつつ、その日の夜はふけていった。
 アンジェ様の意識がない時くらいは、私と言えなくても、許して欲しいなんて事をこっそり思ったのは内緒だ。
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