Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と

✨15話1Part 元魔王、ついに疑惑(?)の八と対面しました!

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「......で、今日望桜くんは休みだし、怪我してるから、完治するまで働かせる訳にはいかないのよねぇ~」

「そーすか......」

「気に病むことはないよ!!その分他の子と回せばいいし......あ、でもにはらいくんとは1度会っといておくれよ!確か2階にいるはずだからね!」


 ......聖火崎に泣きながら過去を明かされた日の午後、望桜はその事を頭の片隅に追いやってメルハニのテーブル席のひとつ、JR神戸線の拝める窓際の席に鎮座していた。それを瑠凪か丞か、はたまた冬萌か別のバイトの店員に見つけられて店長を呼ばれ、望桜の怪我の経過と完治するまでについて話し合うこととなり今に至る。

 望桜的にはアスモデウス戦後のまだ怪我の治りきっていなかった時の瑠凪がやっていたような商品のデコレーション等ならやってもいいと思っているのだが、店長曰く"瑠凪にはまだ世話をしてくれる人がいるからいいが、望桜はむしろ数人を扶養する大黒柱的な存在だからダメ"らしい。

 そう言われても少しまだ腑に落ちない望桜だが、ここは店長の気遣いにあやかって完治するまでは店に顔を覗かせる程度に控えておくことにした。......それより今は、2階担当スタッフである八 可愛にはらい かなめとの対面の方が先なのだ。


「おーい、八くーん!!」

「......ーぃ、とと......」

「............お、おお......え?」


 階段から数匹の猫を引連れて八が降りてくる。細く締まった脚に白のフリル付きの黒いソックス、膝丈のプリーツスカートの上から腰に巻かれた桃色のカーディガンに胸の白い大きなリボンが望桜の目を引く。......そこまで望桜は目視して、ん?あれ?と疑問を抱いた。

 ......オーナーは男子のスタッフのことは君付けで、女子のスタッフのことはちゃん付けで呼ぶはずだ。そしてさっきも"八くん"とハッキリ呼んでいたし......と困惑する望桜の様子を見て、八は一言、挨拶がわりに声をかけた。


「貴方が緑丘さん?私は八可愛っていうの、よろしくね!」

「......あ、うん、緑丘望桜です、よろ、しく......」

(すっげー......日本で初めて見たぞ女装男子......)


 尻すぼみながらも挨拶を返す望桜に、八は失笑し、兎逹は景気づけに望桜の背中を勢いよく1発叩いた。八がゆらゆら揺れる度に、1つにまとめられた彼の長髪とフリルがふわふわと揺れる。......普段から鐘音や葵雲達、そして特に瑠凪を見ている時に変質者ばりのにやけ顔を浮かべる望桜なのだが、八を見ている時ににやけないのはやはり筋金入りの中性男子コンだからだろうか。


「ぅいだっ!?」 

「そんなに気張らなくても大丈夫さね!八くんは優しいし、これでもうちの中ではベテランだからなんでも聞けばいいさ!」

「は、はーい......」

「よろしくねっ!」


 にこっと笑う八が兎逹と共に2階に引っ込んでいったあと、望桜は中央のテーブル郡の向こう側でポニーテールを揺らしながら接客する瑠凪を眺めて、


「......やっぱ瑠凪が1番性癖だわ」


 と呟き、瑠凪は悪寒が背筋を走り客の前だけれど思わず身震いした。


 ......ピロリン、


「ん?MINE......誰だこいつ、"不亜符胹嫢留"誰だこれ?」


 そして瑠凪を観察している最中、望桜のスマホがバイブレーションと共に音を小音鳴らしながら通知を受け取った。それはどうやらMINEというメッセージアプリの通知のようで、変な送り主の名前ではあったが、ウイルス対策アプリの稼働を確認した後にトークを開いた。

『13世目魔王様へ


 今まで汝やそのかたへを襲ひし明日裳提宇子や依舞、聖香愛琉や雅舞罹依瑠がなんの脈絡もなしに襲ひ来たりと思へり?それぞれの襲ひしゆゑや個人情報などを辿りゆかば、1つの真相に辿り着くるぞ!

 とりあえず聖ヶ丘學園の屋上に待ちたれば......


 ......来るぞかし?魔王様!                                                                                                  』



「......意味わかんねえ、ほんとなんだこれ......」


 望桜はとりあえずスマホの画面を落とし、なんで古文調なのかとか半分文語で半分口語なのかとか次々と湧いて出てくる疑問を一旦鎮め、再び瑠凪のことを眺めることに決めた。



 ───────────────To Be Continued──────────────



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