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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と
20話2Part (元)魔王と勇者の皇国魔王軍対策会議(?)
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同時刻、ヴァルハラ独立国家敷地内の畑に、沢山のトラックがやって来ていた。......と、そこに1人の少女が真面目な面持ちでそれを見つめながら佇んでいた。
「っおいおいおいおい!!」
「......」
「おい!!!聞いてんのか!!」
「はあ......何よ、聞こえてるわ。何?何の用?」
その元にとある青年が大声を発しながら走って近づいてきた。The日本人な焦げ茶の髪と瞳、悪魔っけなど全くないその風貌ながら下界第13代目(元)魔王という位を持つ青年·緑丘 望桜だ。
どうやら彼は畑にまだまだどんどんやって来るトラックとその周りについて警備している重装備の近衛兵達を見て、誰かが何かやらかそうとしているのではないかと来てみたらしい。
「お前こんな厳戒態勢で何を運びこもうとしてんだよ!!実は俺たちの首を狩るための騎士団でした~とか勇者軍でした~とかだったら許さねえからな!!」
「違うわ。......これは、キャッサバ芋よ」
「......は?」
限りなく真剣な表情で聖火崎が告げた言葉に、固唾を飲んで続きを待っていた望桜は拍子抜けしてしまった。
思えばこんな気持ちになったのは最終決戦の時に"ポータルを使ってここから逃げろ"と言われた時以来ではなかろうか。......今、なんと仰って?
「14代目魔王軍に対抗するためのものよ」
「いやいやいやいや、お前何言ってんの!?あんな芋っころとぷにぷにした礫サイズの粒で悪魔に対抗出来るわけねえだろ!?」
「出来るわよ!!......アスタロト軍なら、追い返せるわ」
「お前馬鹿じゃねえの!?」
ダメだこいつ......と落胆する望桜なんか心底どうでもいいといったふうに真剣な顔つきのまま、トラックを眺める聖火崎。望桜の至極真っ当な言い分をことごとく無視し、聖火崎はまだ他の"新たな魔王軍対抗策"を羅列し続ける。
「これだけじゃないのよ、例えばチーズINバーグディッシュの作り方とか......」
「アスモデウス対策!?ドッキリモンキーのメニューじゃねえか!!」
「八咫烏の卵の取り方と更に美味しいチキンライスの作り方、それから半熟オムレツの作り方とマヨネーズとケチャップを作る方法とか......」
「ルシファー対策もかよ!!あ、ならあとりんごカード100万円分とか追加するといいと思うぜ!!」
「ル〇バとかダイ〇ンとか、あとダス〇ンに空気清浄機のセット......」
「ベルフェゴール対策!!ってかあいつもう日本に永住するつもりなんだが......って違あああああああう!!!!」
なんかもう日本の物をここにみだりに伝来していいのかとか、ベルフェゴール対策超完璧じゃんとか本当に伝えたい事とは別の事ばかりがほいほい湧き出てくるのを脳内でなんとか霧散させて、望桜はなんとか言いたい事を口にした。
「何よ!!大声出さないでちょうだい、耳に響くでしょ!?」
「お前本気でそんなんで魔王軍に対抗できると思ってんのか!?ってさっきも似たような事言ったような気が......」
「そんな事はどうでもいいのよ。今は少しでも生き残る可能性に賭ける!!それこそが勇者の使命!!」
「何言ってんの!!ほんとお前何言ってんの!?ってかお前スマホも伝来させただろ!!」
そして東方市街で昨日見た光景を思い出して、それについても勢いに任せて言った。......ふわふわパウンドケーキを目の前にスマホでパシャパシャ写真を撮りまくった後で、『超カワイイ~!!これTritterに上げよ~☆』って言いながら画面をたぷたぷと操作している若者達だ。
Tmitterじゃないんだ、Tritterなんだとかこちらに関しても思う事が多々あるものの、そもそもスマホやウィズオート皇国版Tmitterがある事に驚いていた。......お前の仕業か?と望桜は問うたつもりだったのだが、聖火崎の反応はまたしても望桜を拍子抜けさせた。
「......は?ちょっと何言ってるか分かんない」
「は?だってお前......」
「ウィズオート皇国には、元からスマホあるわよ」
「......は?いやいや、お前俺を騙そうったってそうはいかな......」
「そんなに私の事が信じられない?ならこれを見てちょうだい」
「これ、スマホ......ん?」
聖火崎の言葉がどうしても信じられない、といったふうの望桜に聖火崎は1台のスマホを渡した。
一見は日本で使われているものと大差ないのだが、画面を起動させてみたりバージョン数やアプリの内容、その他確認できる限り全てをよーく見てみると......
「......これ、日本のじゃない......?それどころか、地球で売ってるものでも......」
「これがウィズオート皇国で使われている物よ。見た目だけ見れば地球の物と変わりはないけど、性能は天地の差があるわ」
「へえぇー......うわ、マジだ。バージョン数がえげつない事になってる」
設定画面から見ることのできるiOS端末情報の欄の1番上、"端末バージョン"の所には"端末バージョン 101.0.β"と記されている。
いや、101の時点でなんかもう次元が違うのは分かるんだが、βって何だよ......αとかγがあるってか......?と望桜の頭の中はこの情報だけでいっぱいいっぱいなのだが、そこに更に情報を聖火崎は付け足した。
「日本でも使えるAR、Tritter、ウィズオート皇国版MINEのFINEはもちろん使えるわ。まあ基本的には電話の代わりとして"テレパシー"、カメラとして"シーンキーパー"、オンライン回線やインターネットとして"イデアシェアラー"を神気消費無しで使える魔法道具として1個日本円で安いやつは15万円位で売ってあるわ」
「便利だけど高ぇんだな......」
「当たり前よ、中級法術を修得なしで使えるんだもの。まあ貧しい人達は持ってなかったり、1つの集落共用で1個とかで所持してたりする所もあるけれど」
「勇者軍の人達は......」
「準元帥クラスになると買わされるわ。もちろん経費で落ちるから、私が買った時には1番高くて性能が良いやつを買ったのよ。150万位のやつ」
「マジか」
「勇者軍会計係曰く、普通は魔法道具用の経費が余るらしいんだけど、私が買った年だけむしろ足りなかったらしいわ」
「お前最低だな」
まさかの異世界技術の高さと勇者軍に会計係がいる事にも望桜は度肝を抜かれたのだが、1番は聖火崎のセコさに驚き思わず思った事を言ってしまった。
そして魔王軍にとっては敵である勇者軍会計の事を不覚にも哀れに思ってしまった。......お疲れさまです、会計係。
「仕方ないでしょ。北方の山の中で魔獣を狩って生活してたのに、急に街中に放り出された挙句家探しまでぜーんぶ1人でさせられたんだから」
「あー......じゃなくて、とにかく変な対策たてるよりもっとしっかりしたやつをだな......」
「その点に関しては大丈夫よ。一応自衛軍の練兵とかも並行してやってるから。......ていうか、あなたに言われる事でもないと思うんだけど」
「あ......まあそうなんだけどな」
先程までの調子からいきなり正論を言われ調子を狂わされる望桜。......確かに、ノリツッコミやらまともに考えろとか言ったりはしたものの、本来なら聖火崎や翠川等の勇者軍は望桜達にとっては敵だ。
そしてふと、聖火崎からそう言われた後に、そういえば......と前々から疑問に思っていることを望桜は訊ねた。
「ってかそれを言ったらお前も、どうして日本で初めて俺達に会った時や時々再会する時、あからさまに敵対してきたりとか殺そうとしてきたりしないんだ?」
「っ、それは......」
「あ、ああ~......すまん、言いにくいことなら別に」
「私は勇者だから、悪魔を討ち滅ぼす使命を負った人間だから本当はこういう事を言うのはダメなのかもしれない」
「......」
望桜からの問にあからさまに口ごもってしまう聖火崎に、望桜は若干申し訳なさを感じ、慌ててその言葉を取り消そうとした。しかし意外にも聖火崎がその先を自ら語りだした事により、望桜は不思議そうにしながらも大人しく閉口した。
「......私は、勇者でありながら"民を守る者"としてあってはならない行為をしたの。......あなたも覚えてるでしょ?日本で初めて葵雲に会った時のこと......まあ貴方はあの時一緒に居なかったけれど......」
そう言って聖火崎は目を瞑り、あの時......およそ2ヶ月前の事を思い返した。葵雲が堺市役所屋上から、アオンモール堺に向かって爆炎術式を放った直後の事を。
──「......もう二度と、あの惨劇は繰り返させないって、誓ったのにっ......」
「あーあー、また"守れなかった"んだね、約立たず」
「うっ、ひぐっ、......ぉお前えええええ!!!!」────────
「......あの時、葵雲に言われたの。また"守れなかった"、役立たずって......」
「でも、結果的に俺達が守ったから」
「話が逸れたわ。私が、悪魔を討ち滅ぼす使命を負った私だから、本来は言ってはダメな事......」
聖火崎は閉じた瞼を開いて、望桜に向かって力強くこう告げた。
「......私は、"人間と悪魔が啀み合う世界"を"どちらかが一方を滅して平和に過ごす世界"じゃなくて、"互いに手を取り合って平和に過ごす世界"にしたいの。その為に、まずは全人間の"鏡"である私と、全悪魔の"鏡"であるあなた、それからあいつらが相手の事を理解しなくてはならない」
「......」
「1部の者達がダメだったから人間はダメ、悪魔はダメって決めつけちゃいけない。全体の人柄を全て確認してから、初めて"相手の本質を理解した"と言えると私は思っているわ。これだけは標本調査じゃだめなのよ」
「......お前が言いたい事は何となく理解した」
そして聖火崎の熱弁に彼女の伝えたい事を何となく理解した望桜は、それをそのまま伝えた。しかしそれで全て、ではないらしく聖火崎は再び続きを語り始めた。
「これが私の勇者としての最終目標なの。それに......」
「それに?」
「......私も初めは"標本調査"だった。その所為で守るべき人達を死なせてしまった」
そう言って再び目を瞑り、昔の記憶を思い起こす聖火崎。それと並行して、自身の持つ5唯聖武器の1つ"聖弓ミストルティン"に保存してある記録をホログラムを用いてその場に映し出した。映し出された映像はぼやけており、どこか赤々しくパチ、パチ......と何かが燃えるような音を発している。
そして、その脳裏に鮮明に刻まれている記憶とその惨劇の内容を事細かに呼び起こし、
「......小規模隔離結界《クライン·アイソレーション》」
小規模の隔離結界を張った。映像はいつしかはっきりと映し出され、移されているものがなんなのかの判断がつく程になっていた。
「うおわっ......何で隔離するんだ?」
「ここは独立国家内といえど一応ウィズオート皇国の中、いつ誰が見てるかわからないからよ。......もう遅いかもしれないけど」
「そうか......」
望桜の相槌を聞いた後、聖火崎は昔の事を話し始めた。
──────────────To Be Continued─────────────
「っおいおいおいおい!!」
「......」
「おい!!!聞いてんのか!!」
「はあ......何よ、聞こえてるわ。何?何の用?」
その元にとある青年が大声を発しながら走って近づいてきた。The日本人な焦げ茶の髪と瞳、悪魔っけなど全くないその風貌ながら下界第13代目(元)魔王という位を持つ青年·緑丘 望桜だ。
どうやら彼は畑にまだまだどんどんやって来るトラックとその周りについて警備している重装備の近衛兵達を見て、誰かが何かやらかそうとしているのではないかと来てみたらしい。
「お前こんな厳戒態勢で何を運びこもうとしてんだよ!!実は俺たちの首を狩るための騎士団でした~とか勇者軍でした~とかだったら許さねえからな!!」
「違うわ。......これは、キャッサバ芋よ」
「......は?」
限りなく真剣な表情で聖火崎が告げた言葉に、固唾を飲んで続きを待っていた望桜は拍子抜けしてしまった。
思えばこんな気持ちになったのは最終決戦の時に"ポータルを使ってここから逃げろ"と言われた時以来ではなかろうか。......今、なんと仰って?
「14代目魔王軍に対抗するためのものよ」
「いやいやいやいや、お前何言ってんの!?あんな芋っころとぷにぷにした礫サイズの粒で悪魔に対抗出来るわけねえだろ!?」
「出来るわよ!!......アスタロト軍なら、追い返せるわ」
「お前馬鹿じゃねえの!?」
ダメだこいつ......と落胆する望桜なんか心底どうでもいいといったふうに真剣な顔つきのまま、トラックを眺める聖火崎。望桜の至極真っ当な言い分をことごとく無視し、聖火崎はまだ他の"新たな魔王軍対抗策"を羅列し続ける。
「これだけじゃないのよ、例えばチーズINバーグディッシュの作り方とか......」
「アスモデウス対策!?ドッキリモンキーのメニューじゃねえか!!」
「八咫烏の卵の取り方と更に美味しいチキンライスの作り方、それから半熟オムレツの作り方とマヨネーズとケチャップを作る方法とか......」
「ルシファー対策もかよ!!あ、ならあとりんごカード100万円分とか追加するといいと思うぜ!!」
「ル〇バとかダイ〇ンとか、あとダス〇ンに空気清浄機のセット......」
「ベルフェゴール対策!!ってかあいつもう日本に永住するつもりなんだが......って違あああああああう!!!!」
なんかもう日本の物をここにみだりに伝来していいのかとか、ベルフェゴール対策超完璧じゃんとか本当に伝えたい事とは別の事ばかりがほいほい湧き出てくるのを脳内でなんとか霧散させて、望桜はなんとか言いたい事を口にした。
「何よ!!大声出さないでちょうだい、耳に響くでしょ!?」
「お前本気でそんなんで魔王軍に対抗できると思ってんのか!?ってさっきも似たような事言ったような気が......」
「そんな事はどうでもいいのよ。今は少しでも生き残る可能性に賭ける!!それこそが勇者の使命!!」
「何言ってんの!!ほんとお前何言ってんの!?ってかお前スマホも伝来させただろ!!」
そして東方市街で昨日見た光景を思い出して、それについても勢いに任せて言った。......ふわふわパウンドケーキを目の前にスマホでパシャパシャ写真を撮りまくった後で、『超カワイイ~!!これTritterに上げよ~☆』って言いながら画面をたぷたぷと操作している若者達だ。
Tmitterじゃないんだ、Tritterなんだとかこちらに関しても思う事が多々あるものの、そもそもスマホやウィズオート皇国版Tmitterがある事に驚いていた。......お前の仕業か?と望桜は問うたつもりだったのだが、聖火崎の反応はまたしても望桜を拍子抜けさせた。
「......は?ちょっと何言ってるか分かんない」
「は?だってお前......」
「ウィズオート皇国には、元からスマホあるわよ」
「......は?いやいや、お前俺を騙そうったってそうはいかな......」
「そんなに私の事が信じられない?ならこれを見てちょうだい」
「これ、スマホ......ん?」
聖火崎の言葉がどうしても信じられない、といったふうの望桜に聖火崎は1台のスマホを渡した。
一見は日本で使われているものと大差ないのだが、画面を起動させてみたりバージョン数やアプリの内容、その他確認できる限り全てをよーく見てみると......
「......これ、日本のじゃない......?それどころか、地球で売ってるものでも......」
「これがウィズオート皇国で使われている物よ。見た目だけ見れば地球の物と変わりはないけど、性能は天地の差があるわ」
「へえぇー......うわ、マジだ。バージョン数がえげつない事になってる」
設定画面から見ることのできるiOS端末情報の欄の1番上、"端末バージョン"の所には"端末バージョン 101.0.β"と記されている。
いや、101の時点でなんかもう次元が違うのは分かるんだが、βって何だよ......αとかγがあるってか......?と望桜の頭の中はこの情報だけでいっぱいいっぱいなのだが、そこに更に情報を聖火崎は付け足した。
「日本でも使えるAR、Tritter、ウィズオート皇国版MINEのFINEはもちろん使えるわ。まあ基本的には電話の代わりとして"テレパシー"、カメラとして"シーンキーパー"、オンライン回線やインターネットとして"イデアシェアラー"を神気消費無しで使える魔法道具として1個日本円で安いやつは15万円位で売ってあるわ」
「便利だけど高ぇんだな......」
「当たり前よ、中級法術を修得なしで使えるんだもの。まあ貧しい人達は持ってなかったり、1つの集落共用で1個とかで所持してたりする所もあるけれど」
「勇者軍の人達は......」
「準元帥クラスになると買わされるわ。もちろん経費で落ちるから、私が買った時には1番高くて性能が良いやつを買ったのよ。150万位のやつ」
「マジか」
「勇者軍会計係曰く、普通は魔法道具用の経費が余るらしいんだけど、私が買った年だけむしろ足りなかったらしいわ」
「お前最低だな」
まさかの異世界技術の高さと勇者軍に会計係がいる事にも望桜は度肝を抜かれたのだが、1番は聖火崎のセコさに驚き思わず思った事を言ってしまった。
そして魔王軍にとっては敵である勇者軍会計の事を不覚にも哀れに思ってしまった。......お疲れさまです、会計係。
「仕方ないでしょ。北方の山の中で魔獣を狩って生活してたのに、急に街中に放り出された挙句家探しまでぜーんぶ1人でさせられたんだから」
「あー......じゃなくて、とにかく変な対策たてるよりもっとしっかりしたやつをだな......」
「その点に関しては大丈夫よ。一応自衛軍の練兵とかも並行してやってるから。......ていうか、あなたに言われる事でもないと思うんだけど」
「あ......まあそうなんだけどな」
先程までの調子からいきなり正論を言われ調子を狂わされる望桜。......確かに、ノリツッコミやらまともに考えろとか言ったりはしたものの、本来なら聖火崎や翠川等の勇者軍は望桜達にとっては敵だ。
そしてふと、聖火崎からそう言われた後に、そういえば......と前々から疑問に思っていることを望桜は訊ねた。
「ってかそれを言ったらお前も、どうして日本で初めて俺達に会った時や時々再会する時、あからさまに敵対してきたりとか殺そうとしてきたりしないんだ?」
「っ、それは......」
「あ、ああ~......すまん、言いにくいことなら別に」
「私は勇者だから、悪魔を討ち滅ぼす使命を負った人間だから本当はこういう事を言うのはダメなのかもしれない」
「......」
望桜からの問にあからさまに口ごもってしまう聖火崎に、望桜は若干申し訳なさを感じ、慌ててその言葉を取り消そうとした。しかし意外にも聖火崎がその先を自ら語りだした事により、望桜は不思議そうにしながらも大人しく閉口した。
「......私は、勇者でありながら"民を守る者"としてあってはならない行為をしたの。......あなたも覚えてるでしょ?日本で初めて葵雲に会った時のこと......まあ貴方はあの時一緒に居なかったけれど......」
そう言って聖火崎は目を瞑り、あの時......およそ2ヶ月前の事を思い返した。葵雲が堺市役所屋上から、アオンモール堺に向かって爆炎術式を放った直後の事を。
──「......もう二度と、あの惨劇は繰り返させないって、誓ったのにっ......」
「あーあー、また"守れなかった"んだね、約立たず」
「うっ、ひぐっ、......ぉお前えええええ!!!!」────────
「......あの時、葵雲に言われたの。また"守れなかった"、役立たずって......」
「でも、結果的に俺達が守ったから」
「話が逸れたわ。私が、悪魔を討ち滅ぼす使命を負った私だから、本来は言ってはダメな事......」
聖火崎は閉じた瞼を開いて、望桜に向かって力強くこう告げた。
「......私は、"人間と悪魔が啀み合う世界"を"どちらかが一方を滅して平和に過ごす世界"じゃなくて、"互いに手を取り合って平和に過ごす世界"にしたいの。その為に、まずは全人間の"鏡"である私と、全悪魔の"鏡"であるあなた、それからあいつらが相手の事を理解しなくてはならない」
「......」
「1部の者達がダメだったから人間はダメ、悪魔はダメって決めつけちゃいけない。全体の人柄を全て確認してから、初めて"相手の本質を理解した"と言えると私は思っているわ。これだけは標本調査じゃだめなのよ」
「......お前が言いたい事は何となく理解した」
そして聖火崎の熱弁に彼女の伝えたい事を何となく理解した望桜は、それをそのまま伝えた。しかしそれで全て、ではないらしく聖火崎は再び続きを語り始めた。
「これが私の勇者としての最終目標なの。それに......」
「それに?」
「......私も初めは"標本調査"だった。その所為で守るべき人達を死なせてしまった」
そう言って再び目を瞑り、昔の記憶を思い起こす聖火崎。それと並行して、自身の持つ5唯聖武器の1つ"聖弓ミストルティン"に保存してある記録をホログラムを用いてその場に映し出した。映し出された映像はぼやけており、どこか赤々しくパチ、パチ......と何かが燃えるような音を発している。
そして、その脳裏に鮮明に刻まれている記憶とその惨劇の内容を事細かに呼び起こし、
「......小規模隔離結界《クライン·アイソレーション》」
小規模の隔離結界を張った。映像はいつしかはっきりと映し出され、移されているものがなんなのかの判断がつく程になっていた。
「うおわっ......何で隔離するんだ?」
「ここは独立国家内といえど一応ウィズオート皇国の中、いつ誰が見てるかわからないからよ。......もう遅いかもしれないけど」
「そうか......」
望桜の相槌を聞いた後、聖火崎は昔の事を話し始めた。
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