Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第5章 堕天使は聖教徒教会の

✨31話1Part 晴耕雨読

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 ポタ、ポタポタ......


「っと、粗方終わったか」

「凄まじいわね、色々と」


 ......ウィズオート皇国南方領主·ジシュの離屋敷の庭。

 領主の防衛に就いていた南方地方騎士団の大半は、最早もはや服やら髪やらの元の色が分からない程には血に塗れ、自身の武器であるモルゲンシュテルンから滴る血を眺める或斗によって文字通り穴だらけにされていた。

 残りも、聖火崎の聖弓による法術でバラバラで、どれが誰の体なのか区別がつかない状態だ。

 汚い、そうとしか表現しようのない程の惨状の中、或斗と聖火崎は静かに佇んでいた。

 上がった息が落ち着く頃に、或斗は聖火崎に声をかけた。


「はぁ......で、1部残りがいるらしいが、どうする?」

「そうね......」


 聖火崎がその場で周囲を見回すが、今の所視界内に生きている敵はいないらしい。

 が、遠くからまだ声が聞こえてくるので、恐らく底に残りの騎士と南方領主がいるのだろう。

 まあ、どんな現状であれど聖火崎の返事は変わらないが、或斗から問い掛けられたので聖火崎は一応返事を返しておいた。


「後で何かあっても面倒臭いし、片付けましょ」

「だな」


 聖火崎の返事に異議はないようで、声のする方に歩きだした聖火崎に続いて、或斗も其方そちらへ向かい始めたのだった。



                                                    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ひ、ひぃっ!?あいつだ、館を襲った奴らが来たっ......!早く片付けろ!!」


 残っている騎士達も案の定強くはなく、2人は難なく撃破した。

 その先に、肥えた腹をがたがたと震えさせながらも偉そうに指示を出している南方領主の姿があり、自身の周りを囲んでいる残り少ない騎士達に早く2人を倒すよう必死で呼び掛けていた。


「おー、見ての通り怯えてるけど、相変わらず偉そうにしてるわね~」


 そんなジシュの姿を遠くからまじまじと観察しながら、聖火崎は他に何も来ないかどうかを見張っている。

 ......南方領主を討ちたいというのは聖火崎が言い出したのだが、或斗がまだ戦い足りなそうだったのと、万が一アズライールが領主の護衛に就いていた場合に心理的に考えて殺されにくそうと判断して留めは或斗に任せたのだ。

 右手にモルゲンシュテルン左手に剣と、両手に花ならぬ武器を装備したままゆっくりとにじり寄ってくる或斗を見て、領主のすぐ側で剣を構えている4人の騎士は何とも頼りなさそうに脅えている。


「何をやってるんだ!!」


 そんな騎士に声を掛ける領主だったが、


「早くしっ......うわぁああああ!?」


 ザクッという鈍い音と共に、4人全員が無惨にも力なく崩れ落ちる。

 そしてその直後に、領主の体はふわっと宙に浮き上がった。

 空中に留まってふわふわと浮く領主へと向けて、或斗はてのひらを向けている。

 ......下界の暗黙の了解で"お前に対していつでも魔法を行使できる"という事を示すのが、この行為だ。


「助けてっ、助けてくれぇ......!!」

うるさい。喚くな」

「ぴぎっ!?」


 或斗がかざしている手をぐっと握ると、領主の体もそれに合わせてぎゅっと締められる。


「っぁ、......ぃ......かふっ......」

「......、」

「ぅはっ、はー、はーっ......」


 そして、或斗が拳を崩すと、領主の体は宙に浮いた状態は変わらぬまま開放された。

 締められたのは数秒間だけだったが、余程強かったのか顔は青ざめて鬱血している。


「......っぐ、お前、何者っ......だ......?」

「............」


 空気に弄ばれるままの領主が発した言葉に、或斗は暫しだんまりを決め込んで、


「......通りすがりの魔道士見習い、とでも名乗っておこう」


 と、顔を伏せてから小さく返してやった。


「魔道士......?ウィズオートには、魔力で魔法を行使するっ......魔道士は、いない......」

「あ、間違えた」


 しかし、領主は顔を潜めて睨んできたので、名乗ってやったのに......と少し不機嫌そうにしつつも或斗は領主の方を見遣る。


「勇者に脅されて嫌々付き合わされてる拷問官、だな」

「なっ、」


 じっ......とりとした重たく鋭い視線を向けたまま或斗がさらりと発した言葉に、領主はさっと顔を青ざめさせて、引き攣った顔でまさしく痙攣した時のような詰まった声を喉奥から絞り出した。


『ねえ、その言い方色々語弊があるんですけど』


 その直後に聖火崎からの不機嫌全開なテレパシーが飛んできて、


「あながち間違ったことしか言ってないぞ?」

「なるほ、ど......」『まるっきり違うわよ!!』


 或斗はそこまで悪びれもせずに流れに任せてそう言い、それを聞いていた2人は或斗の語弊しかない言い方に気づかぬまま各々反応を示した。流れに任されてしまえば、案外気づかないものだ。


『こっちはあんたの失礼な発言を聞くために盗聴器仕込んだ訳じゃないんだけど!!』「......お前、魔王軍拷問官の癖に何故勇者と共に行動しているのだ!!」

「あ゛ーあ゛ー煩い煩い話すなら1人ずつにしてくれ聞き取れんっ!!」


 領主も聖火崎も煮え切らない部分があるのか声を荒らげて同時に色々言ってくるので、或斗は自身がキャパオーバーを起こす前に同じくらい声を大にして文句を言う。

 そんな或斗に返ってきたのは、聖火崎の小さな溜息だけだった。


『......私見張り役やってるから、早く終わらせてよね』


 それには或斗は返事は返さず、領主に掌と視線を向けたまま口を開く。


「......それで?魔王側近の補佐官で拷問官でもある俺に、お前達はあっ......さり撃破された訳だが、何か言うことはあるか?」


 或斗はやけに遅く煽るようにそう言い放ち、"あ゛"なのか"う゛"なのか区別がつかない獣の短い唸り声のような呻きを上げた領主をゆっくりと締め付けた。


「高位攻撃魔法《Mit rücksichtslosen Möbeln spielen》」

「っ......」


 ......と、同時に、自身が得意な高位攻撃魔法《Mit rücksich無情なtslosen Mö家具達beln spieの戯れlen》という、大量の剣やら槍やらを召喚して弾幕のように飛ばす魔法を展開させる。

 大量の武器は飛んできてはいないが、周囲を囲まれるだけで領主の体はがっちがちに固まってしまった。

 刹那、未だに宙に浮かされ動こうにも動けないままの領主が、口元をぴくぴくと痙攣させながら沈黙を崩した。


「............は、......お前、勇者にたぶらかされたんだろう」

「はぁ......?」『は?』


 ......今現在、別に不機嫌ではなかった......何なら血を浴びられた事で少しだけ上機嫌だった或斗の顔を、一瞬で歪ませるような言葉を発しながら。



 ─────────────To Be Continued─────────────


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