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第二章・赤い夢
悪魔祓い
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セイとアギの二人に着いて街を歩く。
前回は王都を貫く一番の大通りを進んで中心地に向かったが、今回の目的地はその西側に広がる商業地区である。整然とした王宮近くの雰囲気とは異なり、複雑に入り組んだ通りに様々な種類の店が軒を並べ、そのわずかな隙間を縫うように露店を開いている者がいるという、とにかく雑多な印象の場所だ。
歩いて来られる距離とは言え、街自体に不慣れなサクでは、二人とはぐれたら二度と帰れないかもしれない。絶対に彼らの背中を見失わないように、必死で着いて行く。
通りを往く人々には、この辺りに勤めているのだろう、制服のようなものを着た人も多く、ここでなら作業着姿のサク達も目立たないはず。というのは、少々考えが甘かった。
「ほんっとさあ、これだからセイと一緒に歩くのイヤなんだよね」
先ほどから、すれ違う人々、特に女性達が皆こちらに視線を送ってくる。中には手を振ったり、声をかけようとする人までいる始末だ。彼女らのお目当ては、アギでもなければ、もちろんサクでもない。王子様より王子様らしい清掃員、セイである。
「いやあ、はは……照れるなあ」
「いや別に照れるとこじゃなくない?褒めてないからね?」
どうにも、この二人の会話はズレているというか、聞いていると気が抜ける。サクは背の高いセイを見上げて、話しかけた。
「セイさんって、なんだか華やかだし、雰囲気ありますよね。役者さんみたい」
「あれ、よく分かったねサクくん。ボク、昔は役者だったんだよ」
「えっ?!」
予想外の答えに、思わず声が裏返る。そんな見たまま過ぎる。というか、何があって役者から清掃員になろうなんて思ったのだろう。その疑問の答えは、セイではなくアギの口から、あっさりと告げられた。
「セイはさ、昔は王宮にも出入りするような大きな劇団の看板役者だったんだよ。なのに王族の女性、しかも人妻に手を出したせいで劇団から追い出されちゃって、こんな王都の隅で掃除屋なんてする羽目になったの。ほんっと、ばかだよね」
「アギくん、自分の仕事を卑下するような言い回しはどうかと思うよ」
「いや今のは自分を卑下したんじゃなくて、セイをばかにしたんだけど?ちゃんと聞いてた?」
また漫才のようなやり取りが始まってしまった。
しかし、セイがそんなにすごい人だったなんて、想像もしなかった。ということは、彼が注目されるのは見てくれのせいだけでなく、元有名人だったからなのか。
「あ、ここだよ。ここの角を曲がったところが、今回の現場」
そういって、野菜の入った木箱がうずたかく積まれている横を、アギが器用に抜けていく。箱を倒してしまわないように注意しながら、セイとサクも後ろに続いた。
「こんなところにも店があったんだね。この辺りには何度も来たことがあるのに、全然知らなかったよ」
セイが辺りを見回して感心したように言う。大人二人が、ぎりぎりすれ違えるくらいの幅しかない路地の半ばに、ごく控えめなデザインの看板が吊るされていた。ここに店があると知っていなければ、ほぼ見逃してしまうだろう。
「言ったでしょ?やばめの店だって。ほんとに悪魔が取り憑いてるような品物仕入れてくる店が、表通りに並んでたらまずいでしょ」
言いながら、アギが店舗横の細い扉をノックする。
「おはようございます。ご依頼ありがとうございます、清掃所の者です」
少し間をおいて、扉が薄く開き、中から小柄な中年女性が顔を覗かせた。おそらく彼女が今回の依頼人である、ここの店主の妻なのだろう。疲れきった表情の女性は、アギの顔を見ると、ほんの少し安心したように息をついた。
「ああ、アギくん、来てくれたのね。もう、本当にあの人は、おかしな物ばかり買い付けて。いつかこうなるんじゃないかって思ってたのよ。あなたも気をつけないと駄目よ?私が言うのもなんだけれど、あなたはまだ若いんだから、もっと他の趣味も」
「あはは……そうですね、気をつけます。それでですね、清掃に入りますので、お店の鍵を貸していただきたいんですけど」
話が長くなりそうな気配を察してか、アギが強引に話を進める。女性はまだ話し足りない様子だったが、素直に口を噤んで隣の店舗に目を向けた。
「先に教会の人が来て、中でお祓いしてくれているの。鍵も開いてるはずだから、あなた達も勝手に入っていいわよ」
「ああ、そうだったんですね。じゃあ僕達も失礼します」
「ええ、お願いね」
短く言い残して、女性は建物の中に戻って行った。サクは振り向いたアギに尋ねる。
「あの、教会の人って?」
「今回の夢魔みたいなのが原因の精神汚染は、普通の医者じゃ治せない。教会の神父やシスターによる祈祷が必要なんだよ。ロンさんも今頃は教会にいると思う」
「そして、汚染されるのは建物も同じ。魔物本体が死んでも呪いは解けないからね。放っておいたら、入る度に悪夢を見せられる呪いの物件になってしまう」
アギの言葉を引き継いで、セイがそう締めくくる。
「そうなんですね。私、全然知りませんでした」
「人や物に取り憑くタイプの魔物は、人間が多く集まる場所を好むからねえ。逆に田舎の方では、ほとんど見かけないから仕方ないね、うん」
フォローしているのか、煽っているのか、微妙な調子でアギは言うと、軽い足取りで店舗の方の扉に手をかけた。
「おはようございまーす!清掃所の者でーす!」
言いながら今度はノックもせずに扉を開くと、そのままズカズカと中に入っていく。
「お、お邪魔します」
サクも躊躇いつつ、アギの後に続いて店内に足を踏み入れた。
さして広くない店内には、使いどころのよく分からない品物が所狭しと並べられている。奥側には店主が座るのであろう椅子と、ボロボロのカウンターテーブルが置かれており、その脇に黒いコートを着た男性が立っていた。
「あっ、ユノさんだ」
アギの声に、男性が振り向く。穏やかな表情を浮かべたその人は、艶やかな赤毛を耳の上で綺麗に切りそろえて、全身に清潔そうな雰囲気をまとっていた。年はおそらく三十前後、セイと同じくらいだろうか。
「もしかして、教会の方ですか?」
サクが尋ねると、男性がこちらを見て微笑んだ。
「ええ、そうですよ。はじめまして、ユノと申します。お嬢さんは、新しく入られた方でしょうか?」
「あっ、はい!サクです、よろしくお願いします」
頭を下げた拍子に、横に飾られていた古い甲冑に肩がぶつかってしまい、倒れてきたのをセイが素早く手を伸ばして支えてくれた。慌ててセイに礼を言う。注意していないと、余計に散らかしてしまいそうだ。
「すみません、こちらはもう終わりますので、少しそこで待っていてくださいますか」
「ああ、はい、もちろんですよ。サクくん、こっちにおいで。せっかくだから見学させてもらおう」
セイに促され、肩を寄せ合いながら、入り口近くに三人で並んだ。サク達が無言で見守っているのを確認すると、ユノは静かに目を閉じて、両手の指を絡ませた。
「大地に宿りし母なる精霊よ、迷える邪なる魂をお救いください」
ユノが祈りの言葉を口にした途端、彼の足元から柔らかい風が生まれ、その長いコートの裾をふわりと巻き上げた。
「わあ……」
思わず感嘆の声が漏れる。埃っぽく澱んでいた空気が一気に浄化されたのが、なんの力も持たないサクにも、はっきりと分かったからだ。
「さあ、もうよろしいですよ。後は皆さんにお任せします」
ユノはそういって踵を返すと、サクの前で歩みを止めた。
「どうにも慌ただしくてすみません、サクさん。いずれまた、お会いする機会もあるでしょうから、その時はどうぞ、よろしくお願いします」
「はい!こちらこそ、お願いします」
今度はどこにもぶつけないように、小さく頭をさげる。ユノも軽く会釈を返すと、アギとセイの二人にも挨拶をして、そのまま店を出ていった。
「神父さんって、もっと年配の人を想像してましたけど、ずいぶん落ち着いた感じの人ですね」
「ユノさんはねー、わりと"当たり"の人だよ。中には、すっごいつんつんしてて感じ悪いおばさんシスターとかもいるし」
「アギくん、女性に対してそんな言い方は」
「男だろうが女だろうが、ムカつくものはムカつくでしょ。セイのそういう感じの方が、よっぽど差別的だと思うけど」
口を尖らせながら、先ほどまでユノが立っていたあたりの床を覗き込んで、アギが「うわっ」と悲鳴をあげた。
「よく見たらめちゃくちゃ散らかってるじゃん!どこが楽な方の仕事だよ、もー!」
アギの肩越しに、その視線の先を確認すると、確かに、品物を並べていたらしい背の低い机が倒され、その上に乗っていたであろう用途不明の雑貨が、ごちゃごちゃと床に転がっている。中には砕けた何種類もの陶器の破片も混じっていて、これを全て片付けて元に戻すのは、なかなかに骨が折れそうだ。
「あ……」
ひどく散らかった床の上に、ぽつんと転がっている、小さな生き物の死体に気がついた。ネズミくらいの大きさで、痩せ細った黒ヤギのような姿をしたそれは、口から内臓をはみ出させ、哀れな姿を晒して死んでいる。
かつては人間達の世界を脅かす、恐ろしい存在だった魔物達。しかし今の世の中では、かつての脅威など見る影もない。それは人にとっては良い事のはずなのに、なぜだかサクは胸が痛んだ。
死体の傍に落ちている、古びた香炉に何気なく手を伸ばす。これに夢魔が取り憑いていたのだろう。
「あっ、ちょっと待ってサクくん!まだそれに触っちゃ……」
「えっ?」
焦りを孕んだセイの声に振り返ろうとした瞬間、サクの視界が突然真っ赤に染まった。
時刻は夜。空は暗闇に覆われている。それなのに、視界は奇妙に明るい。炎だ。赤い蛇のような炎が、故郷の村を覆って、さらには天空までも焼き尽くそうと鎌首をもたげているのだ。
現実味のない景色の中で、耳障りなノイズのような音が、頭の中で反響する。それが悲鳴だと理解するのに、かなりの時間がかかった。
そうやって放心している間にも、赤い蛇の体は益々肥大化して、何もかもを飲み込もうとしている。ああ、さっきから鼻をつくこの不快な匂いはなんだ。いや、本当は分かっている。これは、この匂いは、人の……友の、家族の、焼ける匂い。
「……くん……サクくん!聞こえるかい、サクくん!」
「…………っ!?」
何度もサクを呼ぶ声に、はっと我に返った。恐怖、怒り、悲しみ、絶望……今さっきまで渦巻いていた激しい感情は一瞬で消え去り、それでも確かにそこにあったことを主張するかのように、心臓を強く揺さぶっている。
追いつかない思考を整理するために、何度か瞬きを繰り返すうち、目の前で心配そうな表情を浮かべる、セイの整った顔に気がついた。
「ああ、良かった、気がついたんだね。あのまま悪夢に呑まれてしまったら、どうしようかと思ったよ」
セイが安堵して、息を吐き出した。悪夢?今のは夢だったのか。あんなにも、まるで自分が本当にそこに居るかのような、恐ろしいまでの現実感があったのに?
「この香炉は、夢魔本体が取り憑いていた依り代、つまり呪いの元凶だから、呪いの残滓がまだ完全には消えていなかったんだね。すまないサクくん、真っ先に注意するべきだったのに」
「い、いえ、そんな。完全に私の不注意ですから」
申し訳なさそうに目を伏せるセイに、こちらが恐縮してしまう。どう考えたって、現場の物に勝手に触れたサクが悪い。
「夢魔は相手が一番思い出したくない、最も辛い記憶を見せつけて、心を弱らせようとする。嫌なものを見てしまったよね」
セイの言葉に、サクは首を傾げた。
「相手の記憶?でも、あれは私の記憶じゃないと思います」
サクの故郷であんな大きな火災が起きたなんて、祖父母の代ですら聞いたことがない。ましてサクの記憶の中には、小さなボヤすら存在しないはずだ。
「サクちゃんのじゃないなら、誰か別の人の記憶かもね」
アギが先ほどの香炉を手の中で弄びながら言う。もう悪夢の残滓は消えてしまったようだ。
「他の誰か?」
「そう。記憶の奥底に、深く深くこびりついて離れないくらい強烈な、誰かの悪夢。それが夢魔の力で目を覚ましたのかもしれない」
香炉の蓋を開けて、アギがその中を覗く。もちろん中には、もう何も入ってはいない。
「古い物には持ち主達の記憶とか感情とか、そういったものが、少しずつ積み重なって残っていく。"曰く"っていうのは、そういうことだよ。何も魔物の力によるものだけじゃない……いいなあ、この香炉買い取らせてもらえないかなあ」
「……欲しいんですか?それ」
祓ったとはいえ、正真正銘の悪魔憑きで、あんなに恐ろしい悪夢まで残っていたというのに。
顔を顰めるサクの前で、アギが薄く笑う。
「もちろん。本物の悪夢が宿った香炉だなんて、最高にぞくぞくするよ……ふふ、これだから古物の収集は辞められないよねえ」
「……ボクは、アギくんのことが好きだし、同僚として尊敬もしているよ。だけど、その収集癖だけは、悪趣味だと言わざるを得ないな」
「はあ?どう考えても、セイの女遊びよりはマシでしょ」
けろりといつもの調子に戻って、アギがセイを軽く睨んだ。
「待ってくれアギくん、ボクは遊びのつもりなんてない。ボクは全ての女性を真剣に愛して」
「あーはいはい、そういうのいいから」
セイの言葉を適当にあしらって、アギは手に持っていた香炉を近くの棚に置いた。
「さあて、面倒だけどさっさと片付けちゃおっか。この割れてるのとか勝手に捨てていいのかなー?奥さんの許可は取ってるみたいだけど、ロンさんが帰ってきたら、めちゃくちゃ怒りそうだよね。一応別のところに残しとこっか」
一人で勝手に結論付けると、アギがさっさと箒とちりとりを持ち出して、陶器の破片を片付け始めた。
なにやら取り残されたような気持ちで立ち尽くすサクの隣で、セイが身を屈めながら小声で囁いた。
「ごめんね。いろいろ驚いたと思うけど、アギくんはすごく優秀だし、とてもいい子なんだよ。これに懲りずに仲良くしてくれたら、ボクも嬉しいな」
そういって微笑むセイの顔を、じっと見つめ返す。
「セイさんは、アギさんのこと本当に好きなんですね」
サクがそういうと、なぜかセイは顔を赤らめて視線を逸らしてしまった。
「……あの、好きってそういう意味じゃないですから……ないですよね?」
「も、もちろん!ボクは、ここに来るまで同性の友達なんていなかったから、こんなに親しく付き合える男の子はアギくんだけなんだ……だから、うん。友達として、彼のことが好きだよ。アギくんの方は、なんとも思ってないかもしれないけど」
そういって、セイは少し寂しそうに笑った。
「……私は、今日初めてお二人にお会いしたからこそ、客観的に見られると思うんですけど」
サクが何を言おうとしているのか、測りかねたようにセイが首を傾げる。
「少なくとも、アギさんとセイさんは、とても仲が良いように見えました……ちょっと羨ましいくらいには」
サクが育った狭い村では、産まれた時から村中みんなが知り合いで、家族も友人も親戚も、その境目はとても曖昧だった。だから、セイのように、大人になってから出会った相手をまっすぐに好きだと言える、そんな友人関係を素直に羨ましいと思う。
「ねえ、さっきから好きとか付き合うとか、何の話してんの?いい加減ペルさんに言いつけるよ?ていうか仕事しろよ」
すっかり話しこんでいたセイとサクの二人を引き剥がすように、アギが割り込んできた。どうやら、なにか誤解されてしまったらしく、冷えきった視線がセイに注がれる。
「あ、アギくん!違うよ、これはそういうんじゃ」
「ほんっと見境ないんだから!いつか刺されても僕は助けないよ」
「誤解だって……」
またどうでもいい言い争いを始めた二人にため息をついて、サクは自分の掃除用具を手に取った。この二人に真面目に付き合っていたら、いつまで経っても終わらない。
とりあえず、形が残っている商品だけでも拾い集めてしまおうと床に膝をついた時、ゴミに紛れて転がっている、小さな魔物の死体と目が合った。
かつては人間を支配下に置いていたという魔物達も、今やその存在を恐れる者などほとんどいない。そんな魔物達の姿を哀れだと感じてしまうのは、傲慢だろうか。
前回は王都を貫く一番の大通りを進んで中心地に向かったが、今回の目的地はその西側に広がる商業地区である。整然とした王宮近くの雰囲気とは異なり、複雑に入り組んだ通りに様々な種類の店が軒を並べ、そのわずかな隙間を縫うように露店を開いている者がいるという、とにかく雑多な印象の場所だ。
歩いて来られる距離とは言え、街自体に不慣れなサクでは、二人とはぐれたら二度と帰れないかもしれない。絶対に彼らの背中を見失わないように、必死で着いて行く。
通りを往く人々には、この辺りに勤めているのだろう、制服のようなものを着た人も多く、ここでなら作業着姿のサク達も目立たないはず。というのは、少々考えが甘かった。
「ほんっとさあ、これだからセイと一緒に歩くのイヤなんだよね」
先ほどから、すれ違う人々、特に女性達が皆こちらに視線を送ってくる。中には手を振ったり、声をかけようとする人までいる始末だ。彼女らのお目当ては、アギでもなければ、もちろんサクでもない。王子様より王子様らしい清掃員、セイである。
「いやあ、はは……照れるなあ」
「いや別に照れるとこじゃなくない?褒めてないからね?」
どうにも、この二人の会話はズレているというか、聞いていると気が抜ける。サクは背の高いセイを見上げて、話しかけた。
「セイさんって、なんだか華やかだし、雰囲気ありますよね。役者さんみたい」
「あれ、よく分かったねサクくん。ボク、昔は役者だったんだよ」
「えっ?!」
予想外の答えに、思わず声が裏返る。そんな見たまま過ぎる。というか、何があって役者から清掃員になろうなんて思ったのだろう。その疑問の答えは、セイではなくアギの口から、あっさりと告げられた。
「セイはさ、昔は王宮にも出入りするような大きな劇団の看板役者だったんだよ。なのに王族の女性、しかも人妻に手を出したせいで劇団から追い出されちゃって、こんな王都の隅で掃除屋なんてする羽目になったの。ほんっと、ばかだよね」
「アギくん、自分の仕事を卑下するような言い回しはどうかと思うよ」
「いや今のは自分を卑下したんじゃなくて、セイをばかにしたんだけど?ちゃんと聞いてた?」
また漫才のようなやり取りが始まってしまった。
しかし、セイがそんなにすごい人だったなんて、想像もしなかった。ということは、彼が注目されるのは見てくれのせいだけでなく、元有名人だったからなのか。
「あ、ここだよ。ここの角を曲がったところが、今回の現場」
そういって、野菜の入った木箱がうずたかく積まれている横を、アギが器用に抜けていく。箱を倒してしまわないように注意しながら、セイとサクも後ろに続いた。
「こんなところにも店があったんだね。この辺りには何度も来たことがあるのに、全然知らなかったよ」
セイが辺りを見回して感心したように言う。大人二人が、ぎりぎりすれ違えるくらいの幅しかない路地の半ばに、ごく控えめなデザインの看板が吊るされていた。ここに店があると知っていなければ、ほぼ見逃してしまうだろう。
「言ったでしょ?やばめの店だって。ほんとに悪魔が取り憑いてるような品物仕入れてくる店が、表通りに並んでたらまずいでしょ」
言いながら、アギが店舗横の細い扉をノックする。
「おはようございます。ご依頼ありがとうございます、清掃所の者です」
少し間をおいて、扉が薄く開き、中から小柄な中年女性が顔を覗かせた。おそらく彼女が今回の依頼人である、ここの店主の妻なのだろう。疲れきった表情の女性は、アギの顔を見ると、ほんの少し安心したように息をついた。
「ああ、アギくん、来てくれたのね。もう、本当にあの人は、おかしな物ばかり買い付けて。いつかこうなるんじゃないかって思ってたのよ。あなたも気をつけないと駄目よ?私が言うのもなんだけれど、あなたはまだ若いんだから、もっと他の趣味も」
「あはは……そうですね、気をつけます。それでですね、清掃に入りますので、お店の鍵を貸していただきたいんですけど」
話が長くなりそうな気配を察してか、アギが強引に話を進める。女性はまだ話し足りない様子だったが、素直に口を噤んで隣の店舗に目を向けた。
「先に教会の人が来て、中でお祓いしてくれているの。鍵も開いてるはずだから、あなた達も勝手に入っていいわよ」
「ああ、そうだったんですね。じゃあ僕達も失礼します」
「ええ、お願いね」
短く言い残して、女性は建物の中に戻って行った。サクは振り向いたアギに尋ねる。
「あの、教会の人って?」
「今回の夢魔みたいなのが原因の精神汚染は、普通の医者じゃ治せない。教会の神父やシスターによる祈祷が必要なんだよ。ロンさんも今頃は教会にいると思う」
「そして、汚染されるのは建物も同じ。魔物本体が死んでも呪いは解けないからね。放っておいたら、入る度に悪夢を見せられる呪いの物件になってしまう」
アギの言葉を引き継いで、セイがそう締めくくる。
「そうなんですね。私、全然知りませんでした」
「人や物に取り憑くタイプの魔物は、人間が多く集まる場所を好むからねえ。逆に田舎の方では、ほとんど見かけないから仕方ないね、うん」
フォローしているのか、煽っているのか、微妙な調子でアギは言うと、軽い足取りで店舗の方の扉に手をかけた。
「おはようございまーす!清掃所の者でーす!」
言いながら今度はノックもせずに扉を開くと、そのままズカズカと中に入っていく。
「お、お邪魔します」
サクも躊躇いつつ、アギの後に続いて店内に足を踏み入れた。
さして広くない店内には、使いどころのよく分からない品物が所狭しと並べられている。奥側には店主が座るのであろう椅子と、ボロボロのカウンターテーブルが置かれており、その脇に黒いコートを着た男性が立っていた。
「あっ、ユノさんだ」
アギの声に、男性が振り向く。穏やかな表情を浮かべたその人は、艶やかな赤毛を耳の上で綺麗に切りそろえて、全身に清潔そうな雰囲気をまとっていた。年はおそらく三十前後、セイと同じくらいだろうか。
「もしかして、教会の方ですか?」
サクが尋ねると、男性がこちらを見て微笑んだ。
「ええ、そうですよ。はじめまして、ユノと申します。お嬢さんは、新しく入られた方でしょうか?」
「あっ、はい!サクです、よろしくお願いします」
頭を下げた拍子に、横に飾られていた古い甲冑に肩がぶつかってしまい、倒れてきたのをセイが素早く手を伸ばして支えてくれた。慌ててセイに礼を言う。注意していないと、余計に散らかしてしまいそうだ。
「すみません、こちらはもう終わりますので、少しそこで待っていてくださいますか」
「ああ、はい、もちろんですよ。サクくん、こっちにおいで。せっかくだから見学させてもらおう」
セイに促され、肩を寄せ合いながら、入り口近くに三人で並んだ。サク達が無言で見守っているのを確認すると、ユノは静かに目を閉じて、両手の指を絡ませた。
「大地に宿りし母なる精霊よ、迷える邪なる魂をお救いください」
ユノが祈りの言葉を口にした途端、彼の足元から柔らかい風が生まれ、その長いコートの裾をふわりと巻き上げた。
「わあ……」
思わず感嘆の声が漏れる。埃っぽく澱んでいた空気が一気に浄化されたのが、なんの力も持たないサクにも、はっきりと分かったからだ。
「さあ、もうよろしいですよ。後は皆さんにお任せします」
ユノはそういって踵を返すと、サクの前で歩みを止めた。
「どうにも慌ただしくてすみません、サクさん。いずれまた、お会いする機会もあるでしょうから、その時はどうぞ、よろしくお願いします」
「はい!こちらこそ、お願いします」
今度はどこにもぶつけないように、小さく頭をさげる。ユノも軽く会釈を返すと、アギとセイの二人にも挨拶をして、そのまま店を出ていった。
「神父さんって、もっと年配の人を想像してましたけど、ずいぶん落ち着いた感じの人ですね」
「ユノさんはねー、わりと"当たり"の人だよ。中には、すっごいつんつんしてて感じ悪いおばさんシスターとかもいるし」
「アギくん、女性に対してそんな言い方は」
「男だろうが女だろうが、ムカつくものはムカつくでしょ。セイのそういう感じの方が、よっぽど差別的だと思うけど」
口を尖らせながら、先ほどまでユノが立っていたあたりの床を覗き込んで、アギが「うわっ」と悲鳴をあげた。
「よく見たらめちゃくちゃ散らかってるじゃん!どこが楽な方の仕事だよ、もー!」
アギの肩越しに、その視線の先を確認すると、確かに、品物を並べていたらしい背の低い机が倒され、その上に乗っていたであろう用途不明の雑貨が、ごちゃごちゃと床に転がっている。中には砕けた何種類もの陶器の破片も混じっていて、これを全て片付けて元に戻すのは、なかなかに骨が折れそうだ。
「あ……」
ひどく散らかった床の上に、ぽつんと転がっている、小さな生き物の死体に気がついた。ネズミくらいの大きさで、痩せ細った黒ヤギのような姿をしたそれは、口から内臓をはみ出させ、哀れな姿を晒して死んでいる。
かつては人間達の世界を脅かす、恐ろしい存在だった魔物達。しかし今の世の中では、かつての脅威など見る影もない。それは人にとっては良い事のはずなのに、なぜだかサクは胸が痛んだ。
死体の傍に落ちている、古びた香炉に何気なく手を伸ばす。これに夢魔が取り憑いていたのだろう。
「あっ、ちょっと待ってサクくん!まだそれに触っちゃ……」
「えっ?」
焦りを孕んだセイの声に振り返ろうとした瞬間、サクの視界が突然真っ赤に染まった。
時刻は夜。空は暗闇に覆われている。それなのに、視界は奇妙に明るい。炎だ。赤い蛇のような炎が、故郷の村を覆って、さらには天空までも焼き尽くそうと鎌首をもたげているのだ。
現実味のない景色の中で、耳障りなノイズのような音が、頭の中で反響する。それが悲鳴だと理解するのに、かなりの時間がかかった。
そうやって放心している間にも、赤い蛇の体は益々肥大化して、何もかもを飲み込もうとしている。ああ、さっきから鼻をつくこの不快な匂いはなんだ。いや、本当は分かっている。これは、この匂いは、人の……友の、家族の、焼ける匂い。
「……くん……サクくん!聞こえるかい、サクくん!」
「…………っ!?」
何度もサクを呼ぶ声に、はっと我に返った。恐怖、怒り、悲しみ、絶望……今さっきまで渦巻いていた激しい感情は一瞬で消え去り、それでも確かにそこにあったことを主張するかのように、心臓を強く揺さぶっている。
追いつかない思考を整理するために、何度か瞬きを繰り返すうち、目の前で心配そうな表情を浮かべる、セイの整った顔に気がついた。
「ああ、良かった、気がついたんだね。あのまま悪夢に呑まれてしまったら、どうしようかと思ったよ」
セイが安堵して、息を吐き出した。悪夢?今のは夢だったのか。あんなにも、まるで自分が本当にそこに居るかのような、恐ろしいまでの現実感があったのに?
「この香炉は、夢魔本体が取り憑いていた依り代、つまり呪いの元凶だから、呪いの残滓がまだ完全には消えていなかったんだね。すまないサクくん、真っ先に注意するべきだったのに」
「い、いえ、そんな。完全に私の不注意ですから」
申し訳なさそうに目を伏せるセイに、こちらが恐縮してしまう。どう考えたって、現場の物に勝手に触れたサクが悪い。
「夢魔は相手が一番思い出したくない、最も辛い記憶を見せつけて、心を弱らせようとする。嫌なものを見てしまったよね」
セイの言葉に、サクは首を傾げた。
「相手の記憶?でも、あれは私の記憶じゃないと思います」
サクの故郷であんな大きな火災が起きたなんて、祖父母の代ですら聞いたことがない。ましてサクの記憶の中には、小さなボヤすら存在しないはずだ。
「サクちゃんのじゃないなら、誰か別の人の記憶かもね」
アギが先ほどの香炉を手の中で弄びながら言う。もう悪夢の残滓は消えてしまったようだ。
「他の誰か?」
「そう。記憶の奥底に、深く深くこびりついて離れないくらい強烈な、誰かの悪夢。それが夢魔の力で目を覚ましたのかもしれない」
香炉の蓋を開けて、アギがその中を覗く。もちろん中には、もう何も入ってはいない。
「古い物には持ち主達の記憶とか感情とか、そういったものが、少しずつ積み重なって残っていく。"曰く"っていうのは、そういうことだよ。何も魔物の力によるものだけじゃない……いいなあ、この香炉買い取らせてもらえないかなあ」
「……欲しいんですか?それ」
祓ったとはいえ、正真正銘の悪魔憑きで、あんなに恐ろしい悪夢まで残っていたというのに。
顔を顰めるサクの前で、アギが薄く笑う。
「もちろん。本物の悪夢が宿った香炉だなんて、最高にぞくぞくするよ……ふふ、これだから古物の収集は辞められないよねえ」
「……ボクは、アギくんのことが好きだし、同僚として尊敬もしているよ。だけど、その収集癖だけは、悪趣味だと言わざるを得ないな」
「はあ?どう考えても、セイの女遊びよりはマシでしょ」
けろりといつもの調子に戻って、アギがセイを軽く睨んだ。
「待ってくれアギくん、ボクは遊びのつもりなんてない。ボクは全ての女性を真剣に愛して」
「あーはいはい、そういうのいいから」
セイの言葉を適当にあしらって、アギは手に持っていた香炉を近くの棚に置いた。
「さあて、面倒だけどさっさと片付けちゃおっか。この割れてるのとか勝手に捨てていいのかなー?奥さんの許可は取ってるみたいだけど、ロンさんが帰ってきたら、めちゃくちゃ怒りそうだよね。一応別のところに残しとこっか」
一人で勝手に結論付けると、アギがさっさと箒とちりとりを持ち出して、陶器の破片を片付け始めた。
なにやら取り残されたような気持ちで立ち尽くすサクの隣で、セイが身を屈めながら小声で囁いた。
「ごめんね。いろいろ驚いたと思うけど、アギくんはすごく優秀だし、とてもいい子なんだよ。これに懲りずに仲良くしてくれたら、ボクも嬉しいな」
そういって微笑むセイの顔を、じっと見つめ返す。
「セイさんは、アギさんのこと本当に好きなんですね」
サクがそういうと、なぜかセイは顔を赤らめて視線を逸らしてしまった。
「……あの、好きってそういう意味じゃないですから……ないですよね?」
「も、もちろん!ボクは、ここに来るまで同性の友達なんていなかったから、こんなに親しく付き合える男の子はアギくんだけなんだ……だから、うん。友達として、彼のことが好きだよ。アギくんの方は、なんとも思ってないかもしれないけど」
そういって、セイは少し寂しそうに笑った。
「……私は、今日初めてお二人にお会いしたからこそ、客観的に見られると思うんですけど」
サクが何を言おうとしているのか、測りかねたようにセイが首を傾げる。
「少なくとも、アギさんとセイさんは、とても仲が良いように見えました……ちょっと羨ましいくらいには」
サクが育った狭い村では、産まれた時から村中みんなが知り合いで、家族も友人も親戚も、その境目はとても曖昧だった。だから、セイのように、大人になってから出会った相手をまっすぐに好きだと言える、そんな友人関係を素直に羨ましいと思う。
「ねえ、さっきから好きとか付き合うとか、何の話してんの?いい加減ペルさんに言いつけるよ?ていうか仕事しろよ」
すっかり話しこんでいたセイとサクの二人を引き剥がすように、アギが割り込んできた。どうやら、なにか誤解されてしまったらしく、冷えきった視線がセイに注がれる。
「あ、アギくん!違うよ、これはそういうんじゃ」
「ほんっと見境ないんだから!いつか刺されても僕は助けないよ」
「誤解だって……」
またどうでもいい言い争いを始めた二人にため息をついて、サクは自分の掃除用具を手に取った。この二人に真面目に付き合っていたら、いつまで経っても終わらない。
とりあえず、形が残っている商品だけでも拾い集めてしまおうと床に膝をついた時、ゴミに紛れて転がっている、小さな魔物の死体と目が合った。
かつては人間を支配下に置いていたという魔物達も、今やその存在を恐れる者などほとんどいない。そんな魔物達の姿を哀れだと感じてしまうのは、傲慢だろうか。
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