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第4話
2.夜の戒め
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部屋の明かりを落とし、行灯の頼りない光だけが2人の寝床を照らしていた。
敷かれた布団の上で、湊は浴衣の襟を乱し、熱に浮かされたように呼吸を繰り返している。
覆いかぶさる厳の体温は、温泉の熱よりも遥かに熱く、重い。
「……っ、厳さん……」
首筋に熱い唇が落ちるたび、湊の口から甘い吐息が漏れる。
厳の大きく無骨な手が、浴衣の裾から入り込み、露わになった太腿をゆっくりと這い上がっていく。その指先にはマメがあり、少しざらついている。それがかえって、湊の神経を鋭敏にさせた。
「あ……だめ、です……そんなところ……」
快感に耐えきれず、湊は無意識に敬語で懇願していた。
その瞬間、這い上がっていた厳の手がぴたりと止まった。
「……湊」
厳が顔を上げ、至近距離から湊を見下ろす。
情欲に濡れていた瞳の奥に、鋭い光が宿っている。怒っているわけではない、けれど決して譲らない、という強い意思を感じさせる目だ。
「さっき、風呂で言ったはずだぞ。」
「え……?」
「ここには俺たちしかいない。……その堅苦しい言葉遣い、やめろ。」
厳の指が、戒めるように湊の敏感な場所を強めに擦る。
ビクン、と湊の背が弓なりに反った。
「っ、で、でも……癖で……」
「直せ。俺が抱いているのは部下じゃない。……お前だ。」
厳は湊の手首を掴み、布団に縫い付けるように押さえ込んだ。逃げ場はない。
「俺の名前を呼んでみろ。敬称はいらん。」
「そ、そんな……呼び捨てなんて、無理です……」
「無理じゃない。呼ぶまで、先には進めんぞ。」
厳がいじわるく笑い、愛撫の手を止める。
体中が火照って、今すぐにでも彼を求めているのに、焦らされる感覚がもどかしい。湊は潤んだ瞳で厳を見つめ返した。
この男は、本当にずるい。
組長という立場を捨てて、ただの男として自分を求めてくれている。それが嬉しくて、胸が押し潰されそうになる。
湊は覚悟を決めたように息を吸い込み、震える唇を開いた。
「……げん。」
「聞こえん。」
「……厳。」
「……まだ硬いな。まあいい、合格だ。」
厳が満足げに目を細めると、再び重たい唇が湊のそれを塞いだ。
先ほどまでの優しさとは違う、貪るようなキス。堰を切ったように溢れ出す雄の情熱が、湊の理性を溶かしていく。
「んっ……ぁ……厳……っ」
一度口にすると、不思議と恐怖心は消えていた。
名前を呼ぶたびに、厳の腕に力がこもり、より深く、激しく愛されているのを感じる。
浴衣が完全にはだけ、二人の肌が直接触れ合う。汗ばんだ肌の摩擦が、脳髄を痺れさせるような快楽を生み出していく。
「そうだ、その声だ……」
厳が湊の耳元で低く唸り、その首筋に所有印を刻むように歯を立てた。
痛みと甘美な痺れの中で、湊は厳の背中に爪を立てる。あの「鴉と牡丹」の刺青に触れながら、湊はどこか冷静な頭で考えていた。
もう、戻れない。
敬語という壁を取り払ってしまった今、2人の魂は完全に混じり合ってしまった。
たとえ明日、世界が敵に回ったとしても、この腕の中だけが自分の居場所なのだと。
行灯の光が揺れ、2人の影を一つに重ねていた。
敷かれた布団の上で、湊は浴衣の襟を乱し、熱に浮かされたように呼吸を繰り返している。
覆いかぶさる厳の体温は、温泉の熱よりも遥かに熱く、重い。
「……っ、厳さん……」
首筋に熱い唇が落ちるたび、湊の口から甘い吐息が漏れる。
厳の大きく無骨な手が、浴衣の裾から入り込み、露わになった太腿をゆっくりと這い上がっていく。その指先にはマメがあり、少しざらついている。それがかえって、湊の神経を鋭敏にさせた。
「あ……だめ、です……そんなところ……」
快感に耐えきれず、湊は無意識に敬語で懇願していた。
その瞬間、這い上がっていた厳の手がぴたりと止まった。
「……湊」
厳が顔を上げ、至近距離から湊を見下ろす。
情欲に濡れていた瞳の奥に、鋭い光が宿っている。怒っているわけではない、けれど決して譲らない、という強い意思を感じさせる目だ。
「さっき、風呂で言ったはずだぞ。」
「え……?」
「ここには俺たちしかいない。……その堅苦しい言葉遣い、やめろ。」
厳の指が、戒めるように湊の敏感な場所を強めに擦る。
ビクン、と湊の背が弓なりに反った。
「っ、で、でも……癖で……」
「直せ。俺が抱いているのは部下じゃない。……お前だ。」
厳は湊の手首を掴み、布団に縫い付けるように押さえ込んだ。逃げ場はない。
「俺の名前を呼んでみろ。敬称はいらん。」
「そ、そんな……呼び捨てなんて、無理です……」
「無理じゃない。呼ぶまで、先には進めんぞ。」
厳がいじわるく笑い、愛撫の手を止める。
体中が火照って、今すぐにでも彼を求めているのに、焦らされる感覚がもどかしい。湊は潤んだ瞳で厳を見つめ返した。
この男は、本当にずるい。
組長という立場を捨てて、ただの男として自分を求めてくれている。それが嬉しくて、胸が押し潰されそうになる。
湊は覚悟を決めたように息を吸い込み、震える唇を開いた。
「……げん。」
「聞こえん。」
「……厳。」
「……まだ硬いな。まあいい、合格だ。」
厳が満足げに目を細めると、再び重たい唇が湊のそれを塞いだ。
先ほどまでの優しさとは違う、貪るようなキス。堰を切ったように溢れ出す雄の情熱が、湊の理性を溶かしていく。
「んっ……ぁ……厳……っ」
一度口にすると、不思議と恐怖心は消えていた。
名前を呼ぶたびに、厳の腕に力がこもり、より深く、激しく愛されているのを感じる。
浴衣が完全にはだけ、二人の肌が直接触れ合う。汗ばんだ肌の摩擦が、脳髄を痺れさせるような快楽を生み出していく。
「そうだ、その声だ……」
厳が湊の耳元で低く唸り、その首筋に所有印を刻むように歯を立てた。
痛みと甘美な痺れの中で、湊は厳の背中に爪を立てる。あの「鴉と牡丹」の刺青に触れながら、湊はどこか冷静な頭で考えていた。
もう、戻れない。
敬語という壁を取り払ってしまった今、2人の魂は完全に混じり合ってしまった。
たとえ明日、世界が敵に回ったとしても、この腕の中だけが自分の居場所なのだと。
行灯の光が揺れ、2人の影を一つに重ねていた。
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