縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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幕間【第二節】

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 部屋に戻ると手探りで薬箱を探して、絆創膏ばんそうこうを取り出した。ついでに鎮痛剤も引っ張り出す。どれだけ飲んでいいのか分からないから、箱に入っている分を一気に口の中に放り込み、水も飲まずに噛み砕いた。

 一息をつき、指に絆創膏をぐるぐる巻きにすると、彼女は大きく溜め息を漏らして、定位置の部屋の片隅へと座り込んだ。

 ふと、その時のことだった。テーブルの辺りがほんのりと発色すると、耳障りな音と共に振動を始めた。這いつくばるような形で明かりのほうへと向かうと、テーブルのふちに手をかけて覗き込む。そこには縁のスマートフォンがあった。ここに置いているのを忘れて眠ってしまったのだろう。明かりはディスプレイとやらが発しているらしく、耳障りな音は着信音なのであろう。ここまで騒がしく呼んでいるというのに、自らが振動してまで通話を促すとは、面倒な奴である。

 どうしようか――。縁を起こすべきだろうか。そこまで考えて円は首を横に振った。いいや、縁は眠っているのだから、今は放っておいてやろう。いつもいつも忙しそうにしているし、これはある意味優しさであるとも言えよう。そもそも、こんな時間に電話をしてくるのは、一般常識的に考えて失礼にあたるのではないだろうか。

 そんなことを思いながらもディスプレイを覗くと、そこには【尾崎裕二】という名前が表示されていた。円は小さく溜め息を漏らすと、そっとその場を離れて定位置へと戻る。

 着信音は鳴り止まない。それどころか、耳にこびりつくかのように次第に大きくなる。振動音も大きくなり、ついには部屋全体が揺れ始めた。スマートフォンから放たれる明かりが人の形になって、それが大きくなって彼女に覆いかぶさろうとする。途端に呼吸が苦しくなる。首筋に――確かに人の手があった。スマートフォンが放つ光が形成した人ではない何かが、首を強く締め付けていたのだ。

「――やめろ、やめろやめろやめろ。やめろ!」

 必死になって抵抗する。手を振り回し、そして足をバタバタとさせ、まるで駄々っ子であるかのように暴れるだけ暴れる。耳元で低い男の声が聞こえる。それは早口で、何を言っているのか分からない。お経みたいだった。

 ふっと体が軽くなった彼女は、縁のスマートフォンに飛びつくと、それを思い切り床に叩きつける。体にまとわりついていた光は細かくなって霧散し、いつものように静かで――心地よい夜が戻ってきた。
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