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2.長い夜の始まり
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【2】
安楽達が出て行ってからしばらく。残された蘭達は、とりあえず簡単な夕食をとることにした。本当なら安楽達のことを待って、全員で食べるべきなのであろうが、ここまでの移動などで疲れが見え隠れしている人間の姿が見られた。そして、えてして疲れている人間の口から出るは、決まって不満や愚痴だ。一部からお腹が空いたとか、シャワーを浴びたいとか、人が死んでいると思えないほど平常運転な愚痴が出た時、改めて日本は平和なのだなと思った。
菱田のように断定してあおるつもりはないが、この中に麗里を殺した犯人がいるかもしれない――とか思わないのだろうか。それとも、自分は犯人に殺されることなどなく、当たり前のように日常と同じ時間が流れるとでも思っているのであろうか。良くも悪くも、いくつもの事件に安楽と共に巻き込まれてきた蘭は知っている。これまで無事だったのは、本当にたまたまであるということを。面白半分で安楽を連れてきてしまったことを、多少なりとも後悔している。
人が死んでいることもあり、食事は残った人間全員が、自然と食堂に集まって食べることになった。別荘に備蓄していた食糧も、地下に向かえばあったのであるが、それぞれがクルーザーに乗り込む前に買い物をしており、そこからそれぞれ食料を捻出するような形になった。その結果、蘭はどこのメーカーかも、味さえも曖昧なインスタントヌードルを食すことになったのだが。酒類は各々の自由であるが、さすがに飲んで騒ぐなんて雰囲気ではなく、どちらかといえばお通夜のごとく、厳かに時間だけが過ぎていった。
みんな疲弊していた。といっても、ここに来て特別何かをしたわけではないし、菱田と安楽のように、嵐の対策をして回っているわけでもない。ただ、日常に死体という非日常が混じっただけなのに、変に気疲れしている。今日はさっさと寝てしまいたいというのが本音ではないだろうか。
げっそりとした様子の安楽を連れ、かろうじて真っ暗になる前に菱田が戻ってきた。2人で行動を共にしていたということもあり、2人共無事だった。まぁ、彼らを除く全員が食堂に集まっていたのだから、当然といえば当然なのであるが。
「とりあえず1階の目に着く窓は全部外から板を打ち付けてきた。客室の2階を使う人間は、仕方がないから我慢してくれ。男達が必然的に2階の部屋を使う形になるな」
食堂に入ってくるや否や、雨合羽を抜き捨てながら指示を出してくる菱田に、外に出る出ないで揉めていた細川が、明らかに嫌そうな顔をする。
安楽達が出て行ってからしばらく。残された蘭達は、とりあえず簡単な夕食をとることにした。本当なら安楽達のことを待って、全員で食べるべきなのであろうが、ここまでの移動などで疲れが見え隠れしている人間の姿が見られた。そして、えてして疲れている人間の口から出るは、決まって不満や愚痴だ。一部からお腹が空いたとか、シャワーを浴びたいとか、人が死んでいると思えないほど平常運転な愚痴が出た時、改めて日本は平和なのだなと思った。
菱田のように断定してあおるつもりはないが、この中に麗里を殺した犯人がいるかもしれない――とか思わないのだろうか。それとも、自分は犯人に殺されることなどなく、当たり前のように日常と同じ時間が流れるとでも思っているのであろうか。良くも悪くも、いくつもの事件に安楽と共に巻き込まれてきた蘭は知っている。これまで無事だったのは、本当にたまたまであるということを。面白半分で安楽を連れてきてしまったことを、多少なりとも後悔している。
人が死んでいることもあり、食事は残った人間全員が、自然と食堂に集まって食べることになった。別荘に備蓄していた食糧も、地下に向かえばあったのであるが、それぞれがクルーザーに乗り込む前に買い物をしており、そこからそれぞれ食料を捻出するような形になった。その結果、蘭はどこのメーカーかも、味さえも曖昧なインスタントヌードルを食すことになったのだが。酒類は各々の自由であるが、さすがに飲んで騒ぐなんて雰囲気ではなく、どちらかといえばお通夜のごとく、厳かに時間だけが過ぎていった。
みんな疲弊していた。といっても、ここに来て特別何かをしたわけではないし、菱田と安楽のように、嵐の対策をして回っているわけでもない。ただ、日常に死体という非日常が混じっただけなのに、変に気疲れしている。今日はさっさと寝てしまいたいというのが本音ではないだろうか。
げっそりとした様子の安楽を連れ、かろうじて真っ暗になる前に菱田が戻ってきた。2人で行動を共にしていたということもあり、2人共無事だった。まぁ、彼らを除く全員が食堂に集まっていたのだから、当然といえば当然なのであるが。
「とりあえず1階の目に着く窓は全部外から板を打ち付けてきた。客室の2階を使う人間は、仕方がないから我慢してくれ。男達が必然的に2階の部屋を使う形になるな」
食堂に入ってくるや否や、雨合羽を抜き捨てながら指示を出してくる菱田に、外に出る出ないで揉めていた細川が、明らかに嫌そうな顔をする。
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