探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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 トレーを手にした菱田が先頭になって歩き出す。榎本が振り返って「用事を済ませたらここに戻ってくるから」と一言。食堂に残るのは安楽、真美子、香純の3人。菱田、榎本、蘭、英梨の4人が諸々の事情で廊下へと出ることになる。

 嵐は相変わらず止む気配がない。昼間でもずっと薄暗いため、時間の感覚がおかしくなりそうだ。

「僕が廊下で見張っているから、それぞれの部屋で化粧してもらって構わない。ただ、万が一のことを考えて鍵は開けておいて欲しい。なにかあったら遠慮せずに声を上げてくれ。まぁ、僕もなにかあったら声を上げるから、その時は助けてもらうことになるけどね」

 榎本は冗談っぽく言ったが、全く笑いが取れなかったからか、咳払いをして場をごまかした。それはさておき、廊下に立っていれば、両者の部屋の出入り口を見張ることができる。榎本は廊下の中ほどに立ち、周囲を警戒してくれるのであろう。

「俺は彼の部屋に行ってくる」

 菱田はトレーを片手に螺旋階段のほうへと向かい、そして姿を消した。無事に関係を修復することができればいいが。そんなことを考えつつ自分の部屋に戻ると、広げてあった荷物から化粧ポーチを手に取る。

 この島に来て2日目。初日から麗里が殺害され、そしておそらく日付が変わった以降に亜純が殺された。今は固まっていることで身を守っているが、これがいつまで通用するのか。しかも外は嵐であり、いつ嵐が止むかも分からない。

 蘭は軽い気持ちで安楽に声をかけたのを後悔した。いや、なんというか軽い気持ちではなかったのだ。少なくとも、彼の分の旅費まで用意したのだから、内心では一緒に来たかったのだろう。しかしながら、またしてもこうしてジンクスは本物のものとなった。これで、さらに安楽と一緒にどこかに出かけるというのは難しくなった。ハリネズミのジレンマのように、お互いがお互いの針で傷付け合う程度ならば、まだ良かったのかもしれない。だが、その針が全く無関係の他人に向けられてしまうのだ。恵まれぬ星のもとに生まれてしまったものだ。

 考えごとをしながらアイラインを引いたりしているうちに、普段通り程度の化粧は終えてしまった蘭。よそゆきの時は、ここからもう少し手間をかけるのであるが、ここでお洒落をしても仕方がない。榎本を待たせるのも悪いから、そこで化粧を切り上げて部屋の外に出た。

「おぉ、個人差はあるものだと思っていたが、随分と早いんだね」
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