58 / 98
3.深まる謎と疑惑
14
しおりを挟む
トレーを手にした菱田が先頭になって歩き出す。榎本が振り返って「用事を済ませたらここに戻ってくるから」と一言。食堂に残るのは安楽、真美子、香純の3人。菱田、榎本、蘭、英梨の4人が諸々の事情で廊下へと出ることになる。
嵐は相変わらず止む気配がない。昼間でもずっと薄暗いため、時間の感覚がおかしくなりそうだ。
「僕が廊下で見張っているから、それぞれの部屋で化粧してもらって構わない。ただ、万が一のことを考えて鍵は開けておいて欲しい。なにかあったら遠慮せずに声を上げてくれ。まぁ、僕もなにかあったら声を上げるから、その時は助けてもらうことになるけどね」
榎本は冗談っぽく言ったが、全く笑いが取れなかったからか、咳払いをして場をごまかした。それはさておき、廊下に立っていれば、両者の部屋の出入り口を見張ることができる。榎本は廊下の中ほどに立ち、周囲を警戒してくれるのであろう。
「俺は彼の部屋に行ってくる」
菱田はトレーを片手に螺旋階段のほうへと向かい、そして姿を消した。無事に関係を修復することができればいいが。そんなことを考えつつ自分の部屋に戻ると、広げてあった荷物から化粧ポーチを手に取る。
この島に来て2日目。初日から麗里が殺害され、そしておそらく日付が変わった以降に亜純が殺された。今は固まっていることで身を守っているが、これがいつまで通用するのか。しかも外は嵐であり、いつ嵐が止むかも分からない。
蘭は軽い気持ちで安楽に声をかけたのを後悔した。いや、なんというか軽い気持ちではなかったのだ。少なくとも、彼の分の旅費まで用意したのだから、内心では一緒に来たかったのだろう。しかしながら、またしてもこうしてジンクスは本物のものとなった。これで、さらに安楽と一緒にどこかに出かけるというのは難しくなった。ハリネズミのジレンマのように、お互いがお互いの針で傷付け合う程度ならば、まだ良かったのかもしれない。だが、その針が全く無関係の他人に向けられてしまうのだ。恵まれぬ星のもとに生まれてしまったものだ。
考えごとをしながらアイラインを引いたりしているうちに、普段通り程度の化粧は終えてしまった蘭。よそゆきの時は、ここからもう少し手間をかけるのであるが、ここでお洒落をしても仕方がない。榎本を待たせるのも悪いから、そこで化粧を切り上げて部屋の外に出た。
「おぉ、個人差はあるものだと思っていたが、随分と早いんだね」
嵐は相変わらず止む気配がない。昼間でもずっと薄暗いため、時間の感覚がおかしくなりそうだ。
「僕が廊下で見張っているから、それぞれの部屋で化粧してもらって構わない。ただ、万が一のことを考えて鍵は開けておいて欲しい。なにかあったら遠慮せずに声を上げてくれ。まぁ、僕もなにかあったら声を上げるから、その時は助けてもらうことになるけどね」
榎本は冗談っぽく言ったが、全く笑いが取れなかったからか、咳払いをして場をごまかした。それはさておき、廊下に立っていれば、両者の部屋の出入り口を見張ることができる。榎本は廊下の中ほどに立ち、周囲を警戒してくれるのであろう。
「俺は彼の部屋に行ってくる」
菱田はトレーを片手に螺旋階段のほうへと向かい、そして姿を消した。無事に関係を修復することができればいいが。そんなことを考えつつ自分の部屋に戻ると、広げてあった荷物から化粧ポーチを手に取る。
この島に来て2日目。初日から麗里が殺害され、そしておそらく日付が変わった以降に亜純が殺された。今は固まっていることで身を守っているが、これがいつまで通用するのか。しかも外は嵐であり、いつ嵐が止むかも分からない。
蘭は軽い気持ちで安楽に声をかけたのを後悔した。いや、なんというか軽い気持ちではなかったのだ。少なくとも、彼の分の旅費まで用意したのだから、内心では一緒に来たかったのだろう。しかしながら、またしてもこうしてジンクスは本物のものとなった。これで、さらに安楽と一緒にどこかに出かけるというのは難しくなった。ハリネズミのジレンマのように、お互いがお互いの針で傷付け合う程度ならば、まだ良かったのかもしれない。だが、その針が全く無関係の他人に向けられてしまうのだ。恵まれぬ星のもとに生まれてしまったものだ。
考えごとをしながらアイラインを引いたりしているうちに、普段通り程度の化粧は終えてしまった蘭。よそゆきの時は、ここからもう少し手間をかけるのであるが、ここでお洒落をしても仕方がない。榎本を待たせるのも悪いから、そこで化粧を切り上げて部屋の外に出た。
「おぉ、個人差はあるものだと思っていたが、随分と早いんだね」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
死霊術士が暴れたり建国したりするお話
はくさい
ファンタジー
多くの日本人が色々な能力を与えられて異世界に送りこまれ、死霊術士の能力を与えられた主人公が、魔物と戦ったり、冒険者と戦ったり、貴族と戦ったり、聖女と戦ったり、ドラゴンと戦ったり、勇者と戦ったり、魔王と戦ったり、建国したりしながらファンタジー異世界を生き抜いていくお話です。
ライバルは錬金術師です。
ヒロイン登場は遅めです。
少しでも面白いと思ってくださった方は、いいねいただけると嬉しいです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる