探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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4.この際、探偵は誰でもいい

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 結局、安楽の提案で現場保全を最優先し、自分達の荷物だけを持って船に乗った蘭達。行きは随分と狭く感じた客室が、今は広く感じる。安楽が船酔いで死にかけていた時、まさか人がこれから何人も殺されるなんて、誰が思っただろうか。

 3日間の嵐が嘘だったかのごとく空は青空で、広がる青い海をかき分けながら船は進む。島で起きてしまったことに、誰が思いを馳せていたのであろう。帰りは静かだった。もっとも、船酔いでデッキに出たものが若干名。榎本が付き添ってくれているから大丈夫だろう。

「なんだか、とんでもないバカンスになっちゃったね」

 遥か遠くに見え始めた港を眺めつつ、誰に言うでもなく蘭が呟く。

「本当ね。まさか安楽君が本当に巻き込まれ体質だとはね。彼には申し訳ないけど、次から連れてこなくていいから」

 連れて来いと囃し立てた張本人である英梨が呟き、その片棒を担いだ菱田が強く頷く。

「色々と落ち着いたらさ、みんなで飲みにでもいかない? 大学同士もそんなに遠いわけじゃないし」

 会話に入ってきたのは真美子だった。香純も同意するように頷く。

「そうだね。色々と落ち着いたらね――」

 船が港につき、管理人さんに手伝ってもらって荷物をおろす。最後の最後で榎本にだき抱えられる形で安楽が船を降りた。

「なんだか色々とあったみたいで大変だったな。どうやら俺は現場に立ち合わないといけないみたいだから戻るよ。まぁ、その前に一緒に飯でもどうだい? もちろん、俺がご馳走するよ」

 事件に巻き込まれた一同を労わるような管理人の言葉に、安楽は顔面蒼白のまま「みんな、馳走になろう」と首を縦に振る。船酔い後で食べられるのだろうか。

「よし、それじゃ近くに美味いところがあるから案内するよ。ついて来てくれ」

 管理人はそう言うと歩き出す。それに続いて菱田、真美子、香純、英梨、蘭と続く。少し離れた最後尾に榎本と安楽。2人の会話が耳に入ってくる。

「――あれで良かったのか? 安楽君」

「あぁ、うまいこと欺けたと思うよ。こうして、無事に帰ってこられたわけだしね」

 安楽が答えると、榎本がさっと右手を差し出した。まるで握手を求めるかのごとく。しかし彼が求めていることは違った。

「バトンタッチだ。安楽君、ここからは君がやるべきだよ」

 榎本の手を勢い良く叩くと、安楽はこう呟いたのだった。

「あぁ、遠足ってのは――お家に帰るまでが遠足だからな!」

 ……なんか決め台詞としてはイマイチだし、すごくダサい。しかし船酔いで死にかけの安楽の瞳には、強い光が宿っていた。
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