【完結】狼の求愛は山に届く

ルコ

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契約精霊

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 その魔族は長年世界を放浪して来たという元冒険者で、かなり年配の男性だった。上位魔族でグレーの毛並みを持つ猫の契約精霊がいる。様々な場所を渡り歩き、最終的にこの山に定住したようだ。

その男が言うには、魔族ではなくドラゴン族に、伝説のドラゴンの姿をした精霊と契約している者がいるらしい。

その男が若い頃、放浪の末辿り着いたのは、遥か南に広がる海に浮かぶ小さな島。そこで出会った雄のドラゴン族が、猫科動物でない契約精霊を連れているのを見たそうだ。
蛇のように体が長いその精霊は、言い伝えで聞いた事がある「龍」と呼ばれる雨を降らせる伝説のドラゴンに似ていたとの事。

ちなみにドラゴン族は本当にドラゴンだ。あえてドラゴン以外に例えるなら、翼が生え体つきがしっかりとしたオオトカゲを、何万倍も強く美しくしたような姿をしており、象などの大型動物よりも大きい。人型にも姿を変える事が出来るが、ドラゴンの姿のままでいるのを好む者が多い。

そんなドラゴン族が、龍の姿をした契約精霊を連れていた。猫科動物以外の契約精霊が存在する事にもびっくりしたけど、ドラゴンがドラゴンを契約精霊としているなんて!と、興奮し、まだ若く好奇心の塊だったその男は、勇気を出してその雄ドラゴンに声をかけてみたそうだ・・・

 どうやらこの魔族の老人の若い頃は、かなり無鉄砲な男だったようだ。

ドラゴンはそんなに有効的な種族ではないはずだ。

魔族の街から少し離れた所にドラゴン族が住む谷がある。そこに住むドラゴン族と魔族は表立って対立はしていないものの、仲良くもない。気性が荒いドラゴン族からふっかけてくる、縄張り争いと称した小競り合いは、昔から日常的に起こっている。なので普通の魔族なら、こちらからドラゴン族に声をかけようとは思わない。

だが、その雄ドラゴンは気軽に答えてくれたという。お互いに一人で、周りが南の海という開放的な環境も幸いしたのかもしれない。

雄ドラゴンは、この南の海を超えた先の想像出来ないくらい遠くに、最南の島と呼ばれるドラゴン族が支配する島がある事。その王族には伝説のドラゴンの姿をした契約精霊がいるという事を教えてくれた。

しかもなんと、その雄ドラゴンも王族だという。伝説のドラゴンの精霊と契約しているのはほとんどが王族なんだそうだ。

猫科動物以外の契約精霊がいる事を初めて知ったと興奮する魔族の男に、雄ドラゴンはこう言ったらしい。

「コイツ(契約精霊の龍)が言うには、精霊界にはいくつかの世界があるんだと。伝説のドラゴンの精霊界、猫科動物の精霊界、後、犬科動物の精霊界だっけか?
それぞれ契約する種族が違うし、その種族が住む世界も違う。決して交わる事はないから、普通は精霊同士も認識していないらしいんだ。
だが、伝説のドラゴンの精霊は普通の精霊と比べて桁違いに長生きだからな。自分たちとは違う精霊が住む世界がある事を知ってたみたいだぜ?
おそらくオレの前にも、こっちの世界で猫科動物の精霊に会った事があるヤツがいたんだろうな。もしかしたら犬科動物の精霊にも会ったのかもしれない」

 ドラゴン王族が支配する最南の島は物理的に遠すぎて、魔族が住む場所とは別世界扱いなんだそうだ。だから、本来なら猫科動物の契約精霊を持つ魔族と、伝説のドラゴンの精霊を持つドラゴン族が会う事はない。

だが、この雄ドラゴンが規格外で魔族と出会う場所にまで来てしまった、と。そして魔族の男も、自力で辿り着くのが限界な場所にまでやって来た猛者だったようだ。

そして、昔にも同じようなドラゴンと魔族がいたって事か。

ドラゴン族の谷には契約精霊を持つドラゴンはいないからね。伝説のドラゴンの精霊が存在するなんて魔族は知らなかったはずだ。

 そしてその雄ドラゴンの話には、絶対に聞き逃せない僕が知りたかった情報があった。


「犬科動物の精霊が存在する」


そう、ここと違う世界に猫科動物の精霊ではなく、犬科動物の精霊と契約する種族が居るって事が分かったんだ。
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