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閑話
④〈番外編─インタビュー ザークとルーシェ〉
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(この話は、ザーク18歳。
ルーシェ317歳当時の話である。
物語が最初に起こってから、2年後くらいの設定)
ザークのところへ記者がやってくる。
以下、基本はザーク(ザ)。
記者(記)。ルーシェ(ル)
記:「ザークさん、ルーシェさんとの馴れ初めを教えてください」
ザ:「あぁ? 姫さんのところへ弓の稽古へ行っててさぁ。
可愛いし、いいっていうから付き合ってる」
記:「ちなみに317歳で、『元森の乙女』ですが、その辺はどう思われます?」
清楚で美しく、働き者で性格も良いルーシェ。
王宮をはじめ国内外の男性陣の評判は良かったが、その年齢と彼女の過去に戸惑う男は多かった。
贈り物をする男は多かったが、手を出そうとする勇気あるものは、聞いたことが無かったのだ。
ザ:「えっ、そんな年だった?
別にいいじゃん。かわいいんだし、細かいことは気にすんなよ。母ちゃんみたいだし、甘えられるぜぇ?」
記:「え、ええっと。どんな会話をされてるんですか?」
ザ:「会話? フツーだぜぇ? 戦場の話とか、弓の手入れも手伝ってくれるしさぁ?」
記:「⋯⋯⋯⋯」
記者は、その後ルーシェの自宅へ。
子孫の家を出たルーシェは、小さな家を借りて一人暮らしをしている。
たまたま非番ということで、インタビューに応じてくれた。
記:「ルーシェさん、ザークさんのどこが好きなんですか?」
ル:「うちの弟みたいで、世話が焼けて」
記:「⋯⋯⋯⋯⋯」
インタビューの最中に、頬を染めるルーシェ。
記者の妙な表情に気がついたのだろう。
説明するかのように、言葉を続ける。
ル:「まぁ、ニーナ様と殿下のような大人の関係ではありません。
でも、私と彼はそれでいいんです」
そのうち、ザークが2人の元へとやってきた。
ザ:「あ、ルーシェ。今いいのか?」
ル:「ええ、記者さんがいらしてるんです。少し、お待たせしますよ」
ザ:「ああ、いいぜぇ」
待つ間、ザークは庭にある弓場で弓を引いている。
わざわざ作ったのだろう、趣味のよい庭でそれだけが浮いた存在だ。
それを見ながら、ルーシェと記者は語り合う。
記:「最近、彼が丸くなったと思ったら、こんなわけだったんですね?」
ル:「私は、皆とかなり違います。
だから、人並みの幸せなんて絶対に無理だと思っていました。
付き合って欲しいといわれた時、彼はあの通りの評判だから、正直迷ったんです。
でも、彼は私を17歳に戻してくれる素晴らしい恋人なんです」
語りながら、ルーシェの頬が幸福そうに染まっていく。
彼女の時は『森の乙女』として、300年間止まっていたのだ。
ただし、肉体年齢は17歳である。
記:「失礼ですが、貴女にはもっといい人がいるのでは?」
記者が少しイジワルな問いかけをしたが、それにルーシェは首を横に振った。
彼女にしては、珍しく、くだけた口調だ。
ル:「いいえ。彼ね、意外と大人なのよ」
そう言って、笑うルーシェ。
記:「じゃあ、弟ではないですよね?」
記者の問いかけには応じず、ルーシェは話を続ける。
ル:「彼って、子供っぽいでしょう? 無くした時間と家族を思い出させてくれる、最高の恋人なの。
ねぇ、もういいかしら? 最近、私も彼に習って弓の稽古をしているのよ?」
誇らしげな表情に、記者は突っ込みを入れる。
記:「へぇー。姫さまよりはもちろん、手加減をするんですよね?」
記者は『もちろん』の所に語気を強めて問いかける。
彼女自身も『多少』の所を心なしか強めて、笑いながら答えを返した。
ル:「そうね、多少ね?」
ルーシェは、頬を染めると最高の笑顔で笑った。
「失礼します」と礼をして、弓場へと近づいていく。
「ザーク、お待たせしました」
声をかけられたザークの顔が輝く。
「遅いぜぇ?」
少し怒ったような、嬉しさのにじみ出る声音。
2人の視線が絡まり、お互いの口元が人知れず緩む。
その後、2人で記者そっちのけで弓の練習をしているので、再び声をかけずに、彼はそっと屋敷を後にする。
本人の言とは違い、かなり大人の関係だなぁと記者は内心感じていた。
さて、このインタビューから、さらに2年後。
ルーシェは、ルーシェ・ド・イリェス・レ・クーンとなった。
ルーシェ、319歳。ザーク21歳。
レ・クーンの使用人たちは主たちの密やかな交際を知っていたから、とうとうルーシェが主の嫁になることを非常に喜んだ。
名門貴族である大レ・クーンの家も先代様並みに。
いや、それ以上になると、この年取った花嫁を大歓迎した。
何しろ、礼儀作法は約300年前の仕込みである。それに、才色兼備。
評判は高かったからだ。
引っ掛かるのは年齢と貴族位だったが、主との交際中にルーシェの人となりを徐々に知っていった使用人たち。
婚儀の際にそれを気にする者は、レ・クーンの家には誰一人いなかった。
誰かしらともなく目頭を潤ませていたが、一番喜んでいたのは執事だった。
婚儀の最中、一番頬から涙が伝っていたのも、執事だった。
感情を出すことのない彼にしては、かなり珍しい反応だ。
それくらい、嬉しかったのだろう。
そんなルーシェを選んだザークを、『やはり先代様の見込んだ養子』だと、執事を始め使用人たちは、ようやくザークを当主として認めたのだった。
事実、ザークは婚儀を挙げてから丸くなったし、落ち着いた大人の男性として成長してきた。
それでも子供っぽい所は、ルーシェが上手く手綱を取っているらしい。
結局、ルーシェは男児3人の母となり、ザークはニーナと陛下の王子たちのお守り役となったのだった。
《作者後書き》
婚儀の後の、正式名称は、ルーシェ・ド・イリェス・レ・クーン。
通称レ・クーン夫人。
幸せになって良かったですね?
ちなみに、肉体年齢と本当の年は違います。
生まれた年から数えますから、ルーシェは失礼な表現ですが、「年取った花嫁」と言うことになります。
まぁ、中身は19歳ですけど。
ルーシェ317歳当時の話である。
物語が最初に起こってから、2年後くらいの設定)
ザークのところへ記者がやってくる。
以下、基本はザーク(ザ)。
記者(記)。ルーシェ(ル)
記:「ザークさん、ルーシェさんとの馴れ初めを教えてください」
ザ:「あぁ? 姫さんのところへ弓の稽古へ行っててさぁ。
可愛いし、いいっていうから付き合ってる」
記:「ちなみに317歳で、『元森の乙女』ですが、その辺はどう思われます?」
清楚で美しく、働き者で性格も良いルーシェ。
王宮をはじめ国内外の男性陣の評判は良かったが、その年齢と彼女の過去に戸惑う男は多かった。
贈り物をする男は多かったが、手を出そうとする勇気あるものは、聞いたことが無かったのだ。
ザ:「えっ、そんな年だった?
別にいいじゃん。かわいいんだし、細かいことは気にすんなよ。母ちゃんみたいだし、甘えられるぜぇ?」
記:「え、ええっと。どんな会話をされてるんですか?」
ザ:「会話? フツーだぜぇ? 戦場の話とか、弓の手入れも手伝ってくれるしさぁ?」
記:「⋯⋯⋯⋯」
記者は、その後ルーシェの自宅へ。
子孫の家を出たルーシェは、小さな家を借りて一人暮らしをしている。
たまたま非番ということで、インタビューに応じてくれた。
記:「ルーシェさん、ザークさんのどこが好きなんですか?」
ル:「うちの弟みたいで、世話が焼けて」
記:「⋯⋯⋯⋯⋯」
インタビューの最中に、頬を染めるルーシェ。
記者の妙な表情に気がついたのだろう。
説明するかのように、言葉を続ける。
ル:「まぁ、ニーナ様と殿下のような大人の関係ではありません。
でも、私と彼はそれでいいんです」
そのうち、ザークが2人の元へとやってきた。
ザ:「あ、ルーシェ。今いいのか?」
ル:「ええ、記者さんがいらしてるんです。少し、お待たせしますよ」
ザ:「ああ、いいぜぇ」
待つ間、ザークは庭にある弓場で弓を引いている。
わざわざ作ったのだろう、趣味のよい庭でそれだけが浮いた存在だ。
それを見ながら、ルーシェと記者は語り合う。
記:「最近、彼が丸くなったと思ったら、こんなわけだったんですね?」
ル:「私は、皆とかなり違います。
だから、人並みの幸せなんて絶対に無理だと思っていました。
付き合って欲しいといわれた時、彼はあの通りの評判だから、正直迷ったんです。
でも、彼は私を17歳に戻してくれる素晴らしい恋人なんです」
語りながら、ルーシェの頬が幸福そうに染まっていく。
彼女の時は『森の乙女』として、300年間止まっていたのだ。
ただし、肉体年齢は17歳である。
記:「失礼ですが、貴女にはもっといい人がいるのでは?」
記者が少しイジワルな問いかけをしたが、それにルーシェは首を横に振った。
彼女にしては、珍しく、くだけた口調だ。
ル:「いいえ。彼ね、意外と大人なのよ」
そう言って、笑うルーシェ。
記:「じゃあ、弟ではないですよね?」
記者の問いかけには応じず、ルーシェは話を続ける。
ル:「彼って、子供っぽいでしょう? 無くした時間と家族を思い出させてくれる、最高の恋人なの。
ねぇ、もういいかしら? 最近、私も彼に習って弓の稽古をしているのよ?」
誇らしげな表情に、記者は突っ込みを入れる。
記:「へぇー。姫さまよりはもちろん、手加減をするんですよね?」
記者は『もちろん』の所に語気を強めて問いかける。
彼女自身も『多少』の所を心なしか強めて、笑いながら答えを返した。
ル:「そうね、多少ね?」
ルーシェは、頬を染めると最高の笑顔で笑った。
「失礼します」と礼をして、弓場へと近づいていく。
「ザーク、お待たせしました」
声をかけられたザークの顔が輝く。
「遅いぜぇ?」
少し怒ったような、嬉しさのにじみ出る声音。
2人の視線が絡まり、お互いの口元が人知れず緩む。
その後、2人で記者そっちのけで弓の練習をしているので、再び声をかけずに、彼はそっと屋敷を後にする。
本人の言とは違い、かなり大人の関係だなぁと記者は内心感じていた。
さて、このインタビューから、さらに2年後。
ルーシェは、ルーシェ・ド・イリェス・レ・クーンとなった。
ルーシェ、319歳。ザーク21歳。
レ・クーンの使用人たちは主たちの密やかな交際を知っていたから、とうとうルーシェが主の嫁になることを非常に喜んだ。
名門貴族である大レ・クーンの家も先代様並みに。
いや、それ以上になると、この年取った花嫁を大歓迎した。
何しろ、礼儀作法は約300年前の仕込みである。それに、才色兼備。
評判は高かったからだ。
引っ掛かるのは年齢と貴族位だったが、主との交際中にルーシェの人となりを徐々に知っていった使用人たち。
婚儀の際にそれを気にする者は、レ・クーンの家には誰一人いなかった。
誰かしらともなく目頭を潤ませていたが、一番喜んでいたのは執事だった。
婚儀の最中、一番頬から涙が伝っていたのも、執事だった。
感情を出すことのない彼にしては、かなり珍しい反応だ。
それくらい、嬉しかったのだろう。
そんなルーシェを選んだザークを、『やはり先代様の見込んだ養子』だと、執事を始め使用人たちは、ようやくザークを当主として認めたのだった。
事実、ザークは婚儀を挙げてから丸くなったし、落ち着いた大人の男性として成長してきた。
それでも子供っぽい所は、ルーシェが上手く手綱を取っているらしい。
結局、ルーシェは男児3人の母となり、ザークはニーナと陛下の王子たちのお守り役となったのだった。
《作者後書き》
婚儀の後の、正式名称は、ルーシェ・ド・イリェス・レ・クーン。
通称レ・クーン夫人。
幸せになって良かったですね?
ちなみに、肉体年齢と本当の年は違います。
生まれた年から数えますから、ルーシェは失礼な表現ですが、「年取った花嫁」と言うことになります。
まぁ、中身は19歳ですけど。
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