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ジェイクの覚え書き
⑤〈番外編─ジェイク・ド・クレロールの覚え書き その2〉
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あてがわれた宿舎へと戻ると、辺りが騒がしい。
どうやら何かあったらしい。
補佐がこっそり教えてくれた。
神殿本部の長官と呼ばれている、猊下の次に偉い方々が命じて、リドリアの神殿の関係者を殺害したという。
下働きや見習いの少年、下位の神官たちだ。
下働きはひとまとめに集め、祝い酒だと騙して毒を仕込み、見習いや下位の神官たちは睡眠薬入りの遅行性の毒で殺害された。
それを飲んだ人々は、全員苦しんで息が止まり、死んでいったらしい。
もちろん飲むことに抵抗した人々は、押さえつけられて敢えない最期を遂げたと言う。
私は何の罪も無い彼らの最後に、人知れず涙した。
ただリドリアに神籍があった、そこで働いていたと言うだけの人々だ。
外に出るな、殺られるぞ─と補佐が小声で耳打ちしてくる。
補佐が顎で外を示すと、光る2つの目。
どうやら、私たちは外部へこのことを伝えないように監視されているらしい。
朝まで閉じ込められるのだろう。
私は、震え上がった。
険しい顔をしていた私を補佐は声も無く手招きすると、ご自分の包みを解いてマント付きローブとズボンを取り出された。
そして、再び包みの中にまとめて私へと手渡した。
妙なことをするなと感じていると、しっかりと腕へ抱き抱えさせる。
そうして、急に声を荒げ始めたのだった。
ご丁寧に壁まで叩いて。
「ジェイク! 腹が減ったぞ! 喉が渇いたっ! 何かないのかぁ!?」
私が補佐の下につくようになってから、このように声を荒げるのを一度も拝見したことがない。
腕力はあり、目線は常に鋭い方だが、心根は非常に穏やかな方だ。
珍しい言動に、私はうろたえて目を見開き、恐々と補佐に問いかけた。
「補佐、いったい何を⋯⋯? 水でしたら、ええとここに」
各部屋には、水差しが設置されている。
まさか、ここにまで毒は入っていないはずだが?
「ここは他国だろう、珍しいものが食べたい!
そうだ、リドリアの食べ物を持ってこいっ!!」
そんなことを言われても、下位の者や、下働きまでも殺されたのだ。
どうやって要望を叶えたらいいのだろう?
私があまりの迫力に混乱して震えていると、壁をどんどんと叩いたまま、そうっと私に耳打ちする。
「姫に知らせろ」と──そこで私は理解した。
こんな深夜に近い時間にワガママを仰るふりをして、私を姫さまのもとへと走らせる気なのだ。
私はとっさに、補佐の芝居に従うことにした。
「補佐、無理を仰っては困ります。ここは他国ですし⋯⋯」
私の声を遮って、耳をつんざくばかりの叫び声。
「うるさいっ! 行けと言ったら行けっ!」
恐らく外へも、補佐の怒鳴り声が聞こえていたに違いない。
ノックの音のすぐ後に、扉が開かれた。
「やっかましいなぁ、何を騒いでいるんだ?」
出てきた男は、下働き風に見えるが恐らく神殿本部の息のかかった者なのだろう。
「補佐が······こんな夜中にリドリアの食べ物が欲しいと。どうしたらよいのですか、お助け下さい」
私は喉を鳴らして唾を飲み込むと、扉を開けた人に、泣きまねをして縋りつく。
情けないが補佐の態度があまりに恐ろしく、実は半分は本気の涙であった。
補佐の鋭い睨みに、男は私に同情したのであろう。
包みを持った私を、神殿の外まで付き添ってくれた。
王宮の厨房まで行ってくるように、帰ったら神殿の入り口でボルガの使いと言えば部屋まで無事に帰れるようにしておくと言ってくれた。
やはり男は神殿本部の人間だったらしく、厨房の場所はその辺の王宮の使用人を捕まえて聞くようにと言い残して去っていった。
さあ、ここからが本番だ!
もちろん、厨房なんて行くわけがない。
私は、大きく息を吸い込んだ。
どうやら何かあったらしい。
補佐がこっそり教えてくれた。
神殿本部の長官と呼ばれている、猊下の次に偉い方々が命じて、リドリアの神殿の関係者を殺害したという。
下働きや見習いの少年、下位の神官たちだ。
下働きはひとまとめに集め、祝い酒だと騙して毒を仕込み、見習いや下位の神官たちは睡眠薬入りの遅行性の毒で殺害された。
それを飲んだ人々は、全員苦しんで息が止まり、死んでいったらしい。
もちろん飲むことに抵抗した人々は、押さえつけられて敢えない最期を遂げたと言う。
私は何の罪も無い彼らの最後に、人知れず涙した。
ただリドリアに神籍があった、そこで働いていたと言うだけの人々だ。
外に出るな、殺られるぞ─と補佐が小声で耳打ちしてくる。
補佐が顎で外を示すと、光る2つの目。
どうやら、私たちは外部へこのことを伝えないように監視されているらしい。
朝まで閉じ込められるのだろう。
私は、震え上がった。
険しい顔をしていた私を補佐は声も無く手招きすると、ご自分の包みを解いてマント付きローブとズボンを取り出された。
そして、再び包みの中にまとめて私へと手渡した。
妙なことをするなと感じていると、しっかりと腕へ抱き抱えさせる。
そうして、急に声を荒げ始めたのだった。
ご丁寧に壁まで叩いて。
「ジェイク! 腹が減ったぞ! 喉が渇いたっ! 何かないのかぁ!?」
私が補佐の下につくようになってから、このように声を荒げるのを一度も拝見したことがない。
腕力はあり、目線は常に鋭い方だが、心根は非常に穏やかな方だ。
珍しい言動に、私はうろたえて目を見開き、恐々と補佐に問いかけた。
「補佐、いったい何を⋯⋯? 水でしたら、ええとここに」
各部屋には、水差しが設置されている。
まさか、ここにまで毒は入っていないはずだが?
「ここは他国だろう、珍しいものが食べたい!
そうだ、リドリアの食べ物を持ってこいっ!!」
そんなことを言われても、下位の者や、下働きまでも殺されたのだ。
どうやって要望を叶えたらいいのだろう?
私があまりの迫力に混乱して震えていると、壁をどんどんと叩いたまま、そうっと私に耳打ちする。
「姫に知らせろ」と──そこで私は理解した。
こんな深夜に近い時間にワガママを仰るふりをして、私を姫さまのもとへと走らせる気なのだ。
私はとっさに、補佐の芝居に従うことにした。
「補佐、無理を仰っては困ります。ここは他国ですし⋯⋯」
私の声を遮って、耳をつんざくばかりの叫び声。
「うるさいっ! 行けと言ったら行けっ!」
恐らく外へも、補佐の怒鳴り声が聞こえていたに違いない。
ノックの音のすぐ後に、扉が開かれた。
「やっかましいなぁ、何を騒いでいるんだ?」
出てきた男は、下働き風に見えるが恐らく神殿本部の息のかかった者なのだろう。
「補佐が······こんな夜中にリドリアの食べ物が欲しいと。どうしたらよいのですか、お助け下さい」
私は喉を鳴らして唾を飲み込むと、扉を開けた人に、泣きまねをして縋りつく。
情けないが補佐の態度があまりに恐ろしく、実は半分は本気の涙であった。
補佐の鋭い睨みに、男は私に同情したのであろう。
包みを持った私を、神殿の外まで付き添ってくれた。
王宮の厨房まで行ってくるように、帰ったら神殿の入り口でボルガの使いと言えば部屋まで無事に帰れるようにしておくと言ってくれた。
やはり男は神殿本部の人間だったらしく、厨房の場所はその辺の王宮の使用人を捕まえて聞くようにと言い残して去っていった。
さあ、ここからが本番だ!
もちろん、厨房なんて行くわけがない。
私は、大きく息を吸い込んだ。
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