銀色の年代記(クロニクル)~番外編 アルファポリス版 AI校正ver

安倍由里子

文字の大きさ
14 / 18
ジェイクの覚え書き

⑤〈番外編─ジェイク・ド・クレロールの覚え書き その2〉

しおりを挟む
あてがわれた宿舎へと戻ると、辺りが騒がしい。
どうやら何かあったらしい。
補佐がこっそり教えてくれた。

神殿本部プライアスの長官と呼ばれている、猊下の次に偉い方々が命じて、リドリアの神殿の関係者を殺害したという。
下働きや見習いの少年、下位の神官たちだ。

下働きはひとまとめに集め、祝い酒だとだまして毒を仕込み、見習いや下位の神官たちは睡眠薬入りの遅行性の毒で殺害された。

それを飲んだ人々は、全員苦しんで息が止まり、死んでいったらしい。
もちろん飲むことに抵抗した人々は、押さえつけられて敢えない最期を遂げたと言う。
私は何の罪も無い彼らの最後に、人知れず涙した。
ただリドリアに神籍があった、そこで働いていたと言うだけの人々だ。

外に出るな、られるぞ─と補佐が小声で耳打ちしてくる。
補佐があごで外を示すと、光る2つの目。
どうやら、私たちは外部へこのことを伝えないように監視されているらしい。
朝まで閉じ込められるのだろう。
私は、震え上がった。

険しい顔をしていた私を補佐は声も無く手招きすると、ご自分の包みを解いてマント付きローブとズボンを取り出された。
そして、再び包みの中にまとめて私へと手渡した。
妙なことをするなと感じていると、しっかりと腕へ抱き抱えさせる。
そうして、急に声を荒げ始めたのだった。
ご丁寧に壁まで叩いて。

「ジェイク! 腹が減ったぞ! 喉が渇いたっ! 何かないのかぁ!?」
私が補佐の下につくようになってから、このように声を荒げるのを一度も拝見したことがない。
腕力はあり、目線は常に鋭い方だが、心根は非常に穏やかな方だ。
珍しい言動に、私はうろたえて目を見開き、恐々と補佐に問いかけた。

「補佐、いったい何を⋯⋯? 水でしたら、ええとここに」
各部屋には、水差しが設置されている。
まさか、ここにまで毒は入っていないはずだが?

「ここは他国だろう、珍しいものが食べたい!
そうだ、リドリアの食べ物を持ってこいっ!!」
そんなことを言われても、下位の者や、下働きまでも殺されたのだ。
どうやって要望を叶えたらいいのだろう?

私があまりの迫力に混乱して震えていると、壁をどんどんと叩いたまま、そうっと私に耳打ちする。
「姫に知らせろ」と──そこで私は理解した。
こんな深夜に近い時間にを仰るふりをして、私を姫さまのもとへと走らせる気なのだ。
私はとっさに、補佐の芝居に従うことにした。

「補佐、無理を仰っては困ります。ここは他国ですし⋯⋯」
私の声をさえぎって、耳をつんざくばかりの叫び声。

「うるさいっ! 行けと言ったら行けっ!」
恐らく外へも、補佐の怒鳴り声が聞こえていたに違いない。
ノックの音のすぐ後に、扉が開かれた。

「やっかましいなぁ、何を騒いでいるんだ?」
出てきた男は、下働き風に見えるが恐らく神殿本部プライアスの息のかかった者なのだろう。

「補佐が······こんな夜中にリドリアの食べ物が欲しいと。どうしたらよいのですか、お助け下さい」
私は喉を鳴らして唾を飲み込むと、扉を開けた人に、泣きまねをしてすがりつく。

情けないが補佐の態度があまりに恐ろしく、実は半分は本気の涙であった。

補佐の鋭い睨みに、男は私に同情したのであろう。
包みを持った私を、神殿の外まで付き添ってくれた。
王宮の厨房まで行ってくるように、帰ったら神殿の入り口でボルガの使いと言えば部屋まで無事に帰れるようにしておくと言ってくれた。
やはり男は神殿本部プライアスの人間だったらしく、厨房の場所はその辺の王宮の使用人を捕まえて聞くようにと言い残して去っていった。

さあ、ここからが本番だ!
もちろん、厨房なんて行くわけがない。

私は、大きく息を吸い込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...