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三男が公爵家を継いだわけ
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「父上はサラに自分の立場を説明しないのですか?」
執務室でポールが父親に尋ねる。
「そうだな……。ポールには話しておこうか」
今回の婚約解消はエリスの希望である、と。理由は第六王子殿下は成人後は子爵になるが、ヴィクトリアを子爵夫人というのはもったいない、と。それと第六王子殿下ならおおらかなのでサラのやらかしも受け入れてくれるだろう、なので第六王子殿下をサラに、と。
「サラは我が家の養子ですらないですよね?エリスさんの連れ子だけど我が家の籍に入ってない。サラはそれを」
「知ってる。エリスが言い聞かせている」
ポールの言葉にかぶせ気味にサヴェージが答える。
「本人は公爵令嬢と名乗ってますが?」
「……困ったものだ」
王宮でその話が出てサヴェージは正妃様からかなりきつく叱られたのだ。家の為にならない、と。その時に第六王子に対するバックアップとサラとの婚姻の契約を取り付けてきたのだ。
正妃様からは
『庭番との間に子供を作れないようにしておきなさい。本人が周りにバレていると気が付いてるか知りませんが、影から報告が上がってます』
と注意を受けた。
『娼婦顔負けに仕込まれてるらしいから、契約を破ればそく娼館に送ります。貴男も友人との約束にこだわるならそのくらい注意しておくべきでしたね』
正妃様はサヴェージをあざけるように言った。
サヴェージはエリスと話し合った。庭番の事はエリスは黙っていたが12歳の頃からエリスとサラはやりあっていて、エリスは小さな声で言った。
「あの子には不妊の薬を飲ませました。あの子には子供はできません。……ええ。貴方と夫のパーティにいた錬金術師のエドに相談して」
サヴェージは懐かしい名前にぐらり、となる。
サヴェージは若いころ冒険者だった。兄が二人いたし、継ぐものがない貴族の3男としては妥当な進路でもあった。その時の相棒、短剣使いのスティーヴンがエリスの夫である。二人は身分を越えて親友となる。そんな時一人で森に入って夕食用の小物を狩っていたスティーヴンが大熊にやられてひん死で戻ってきたらしい。冒険者ギルドから早馬でその頃家を継いでいたサヴェージに連絡が来たのだ。
妻を亡くしてすぐの頃だったな、とサヴェージは思う。実の所、とても愛し合った夫婦ではなかった。長兄の元妻で身ごもっていたので実家にいたから流行病で死んだ長兄や次兄に巻き込まれずに済んだのだ。サヴェージの父親も領地にいたので大丈夫だった。妻が実家にいるので調子に乗って娼館に通い長兄と次兄は流行病をもらったそうだ。
兄達の葬式に帰宅した冒険者サヴェージはそのままバイユ公爵となった。ポールを産んだ妻とは戦友のような仲になった。一気に二人の息子を失ったサヴェージの父親は気落ちし、使い物にならない。領地経営のノウハウは執事のセドリックが助けてくれたし家の中の事は妻がなんとか頑張ってくれた。そして一月だけの蜜月を持ちヴィクトリアが生まれたのだ。ポールもヴィクトリアも異父兄弟である事は幼いころから知っていた。
妻が亡くなり、子供をどう育てるか悩んでいる時に親友の大けがだった。サヴェージは親友の元にかけつけたがもう持たないのは見ただけでわかった。血を失い過ぎていたのだ。
「……すまん、エリスとサラの事を」
「もう喋らなくていい。よくわかってる」
「すまんな。……もう、体中が冷たいんだ」
サヴェージは幼子を抱いたエリスに目をむける。
「手を……」
エリスは頷いて親友の手を握る。サラも神妙な顔で父親と母親の手に手を添えている。サヴェージは夫婦と親子を邪魔しないようにそっとその場を離れた。
執務室でポールが父親に尋ねる。
「そうだな……。ポールには話しておこうか」
今回の婚約解消はエリスの希望である、と。理由は第六王子殿下は成人後は子爵になるが、ヴィクトリアを子爵夫人というのはもったいない、と。それと第六王子殿下ならおおらかなのでサラのやらかしも受け入れてくれるだろう、なので第六王子殿下をサラに、と。
「サラは我が家の養子ですらないですよね?エリスさんの連れ子だけど我が家の籍に入ってない。サラはそれを」
「知ってる。エリスが言い聞かせている」
ポールの言葉にかぶせ気味にサヴェージが答える。
「本人は公爵令嬢と名乗ってますが?」
「……困ったものだ」
王宮でその話が出てサヴェージは正妃様からかなりきつく叱られたのだ。家の為にならない、と。その時に第六王子に対するバックアップとサラとの婚姻の契約を取り付けてきたのだ。
正妃様からは
『庭番との間に子供を作れないようにしておきなさい。本人が周りにバレていると気が付いてるか知りませんが、影から報告が上がってます』
と注意を受けた。
『娼婦顔負けに仕込まれてるらしいから、契約を破ればそく娼館に送ります。貴男も友人との約束にこだわるならそのくらい注意しておくべきでしたね』
正妃様はサヴェージをあざけるように言った。
サヴェージはエリスと話し合った。庭番の事はエリスは黙っていたが12歳の頃からエリスとサラはやりあっていて、エリスは小さな声で言った。
「あの子には不妊の薬を飲ませました。あの子には子供はできません。……ええ。貴方と夫のパーティにいた錬金術師のエドに相談して」
サヴェージは懐かしい名前にぐらり、となる。
サヴェージは若いころ冒険者だった。兄が二人いたし、継ぐものがない貴族の3男としては妥当な進路でもあった。その時の相棒、短剣使いのスティーヴンがエリスの夫である。二人は身分を越えて親友となる。そんな時一人で森に入って夕食用の小物を狩っていたスティーヴンが大熊にやられてひん死で戻ってきたらしい。冒険者ギルドから早馬でその頃家を継いでいたサヴェージに連絡が来たのだ。
妻を亡くしてすぐの頃だったな、とサヴェージは思う。実の所、とても愛し合った夫婦ではなかった。長兄の元妻で身ごもっていたので実家にいたから流行病で死んだ長兄や次兄に巻き込まれずに済んだのだ。サヴェージの父親も領地にいたので大丈夫だった。妻が実家にいるので調子に乗って娼館に通い長兄と次兄は流行病をもらったそうだ。
兄達の葬式に帰宅した冒険者サヴェージはそのままバイユ公爵となった。ポールを産んだ妻とは戦友のような仲になった。一気に二人の息子を失ったサヴェージの父親は気落ちし、使い物にならない。領地経営のノウハウは執事のセドリックが助けてくれたし家の中の事は妻がなんとか頑張ってくれた。そして一月だけの蜜月を持ちヴィクトリアが生まれたのだ。ポールもヴィクトリアも異父兄弟である事は幼いころから知っていた。
妻が亡くなり、子供をどう育てるか悩んでいる時に親友の大けがだった。サヴェージは親友の元にかけつけたがもう持たないのは見ただけでわかった。血を失い過ぎていたのだ。
「……すまん、エリスとサラの事を」
「もう喋らなくていい。よくわかってる」
「すまんな。……もう、体中が冷たいんだ」
サヴェージは幼子を抱いたエリスに目をむける。
「手を……」
エリスは頷いて親友の手を握る。サラも神妙な顔で父親と母親の手に手を添えている。サヴェージは夫婦と親子を邪魔しないようにそっとその場を離れた。
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