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サヴェージが思っている事 2

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 それを阻止したのは長兄の妻であったマライアであった。マライアは婚約者だった子爵令嬢が焦っている理由を知っていた。父親の解らぬ子供を妊娠していたのだ。
 大きなお腹でマライアはサヴェージに言い切った。

「私はこの子の為に公爵家と侯爵家実家を守る義務があるので。貴方があの親子との縁を切らないと私が貴方を追い出します」

キツくて美しい義姉だった。
 その時には既に一度、サヴェージと元婚約者は床を共にしていた。

「うかつな方ね」

マライアは体内の子の魔力判定を神殿に頼んだ。結果、子爵令嬢の腹にいたのはサヴェージの魔力とは似ても似つかぬ魔力パターンを有する子供であった。そして神殿はどこの家の魔力パターンを持った子供か判ったらしく後日、そこそこ裕福な男爵家の5男に嫁いでいった。



 「私を奴らから救ってくれたのはマライアだった」

サヴェージにとっての事実を突きつけるがサイラスは静かな眼でサヴェージを見つめ返す。

「言いたいのはそれだけか?……近いうちにポールに家督を譲ったらどうだ?サヴェージが護らねばならんほどポールは弱くない。今なら憧れていた世界中を旅しながら生きていくことも可能だろう。儂が引退した時はそんな体力も残ってなかったしな。ポールはプロスペール殿下の後ろ盾もあるしな。お前の時のように無理はせずに済む」

サイラスの顔は父親の顔だった。

「お前が王都や仕事に縛られたくないのは……気が付いていたよ。サラの件もお前の手を離れた。エリスさんと一緒に行くもよし。なにか仕事をしてもらうのに雇ってもよし。好きにすればいい。体が動かなく無くなれば領地のこの家に戻ればいい。法的に書類は作っておく。……自由に、と育てていたお前に暫くとは言え公爵家を背負わせたのは悪かった。わしが不甲斐なかった。すまん」

サヴェージは深く溜息をつきながら答える。

「前向きに考えます。ポールも学校出たてでもう少し手を貸しますよ」

「わかった。ポールとよく話し合ってくれ」

サヴェージはすっきりした顔で出て行った。先ほどの父親からの『すまん』に気が済んだのだ。そして近々自由になろうと心に決めたのだ。もう、公爵の仮面をかぶらずにすむ、と。
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