聖女は断罪する

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85. 正体は?

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 「落ちこぼれ?」

ヴィヴィアンヌは頷く。

「老の所の影、優秀なんだよね。こんな風に足がつくってのがまずおかしい。し、こういう風に表に『わかるように』でてくるってのが、老のやり口とも思えない。陛下を落したのまでは老の工作だろうとは思うけど」

テオがそのあまり髭のないつるりとした顎を撫でる。テオの顔は十代の少年よりもつるりとした肌をしている。

「あとな、確証がまだなんだが、吸精鬼信仰をフィールズ老がしているんじゃないかって噂がある。……不老不死の為に」

エミールが何かを考えている。

「って事は、その昔毎月俺の血を持って行ってたのは」

「あんた……、今思い出したの?」

ヴィヴィアンヌが呆れた声を出す。

「最初の十年くらいそんなことあったけどいつの間にか言われなくなったからな」

エミールが肩を竦める。

「……テオ」

「ああ、それも調べさせる。そういう線で調べるとまた違った情報が来るだろう。今はそういう集会が老の家で開かれているかの調査中」

「ああ!」

ヴィヴィアンヌが何か思いついたようだ。

「ちょっと愛人捕まえてくるわ。エミール。温室横の家のあの黒い部屋借りるよ。あとは教会……いや、宮廷魔法師団の隠密班を借りよう。テオは先に部屋に入ってて。そして……魅了の力がっつり使ってもらうわ」

テオやエミールがなにかいう暇もなくヴィヴィアンヌは部屋を出た。

「あの状態のヴィヴィアンヌは人の話を聞かないから」

エミールの言葉にテオも頷いた。

「レイラの教育始める時も凄かったよ。病床のシルヴィと話し合って森の中に小屋建てるし。……ここはジークとアルフォンスに頼んで行くか」

ノックの音が聞こえる。

「はい」

テオが返事をするとセドリックの声がした。

「ジル様とチャド副教皇がお見えです」

「こちらにお通して下さい」

ややあってチャドとジルが部屋に入って来た。

「ヴィヴに頼まれた」

チャドが端的に述べる。

「テオ達はだれかの尋問に行くんだろ?急いでるらしくて取っ散らかってたけどここの護りを任されたのはわかる。ライン公爵、兄貴も来たがったど止めた」

「ありがたい。帰ってきたら話すよ」

そういうとテオとエミールは急いでエミールの館に転移した。

「ヴィヴィアンヌ、酷い事しなきゃいいけど」

チャドの呟きにジルは笑うしかなかった。すっ飛んだヴィヴィアンヌがろくなことをしないというか力技を使う事を一番知っているであろう人物がチャドだったからだ。

「何をやらかすのやら……」

チャドは遠い目で呟きジルは咳払いで笑いをごまかした。

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