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第二章

聖女、蠢く

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 公爵夫人は側妃宮の中庭に居た。銀の樹の本体の周りに癒しの魔石と11のダイヤモンドの原石を配置する。前神官長が作った癒しの魔石が高品質だったので他はダイヤの原石でいいと守護者が言ったのだ。

 癒しの効果はその石たちを配置しただけでセイラ妃にはわかるくらい高まっていた。

「今日はここで寝るわ」

公爵夫人は前回つかった自立式ハンモックを用意し、簡易テーブルを銀の樹の下に設置する。

「ここに陛下が座るようなティーテーブルを作って、午後にお茶をするといいわ。ゆっくりリラックスする方が癒しも通りやすいでしょ?」

誰に言うともなく公爵夫人が呟くと銀の樹はさわさわと同意するように葉を揺らす。




 「なんだか気持ちいですね」

ソフィア妃が一番下の姫を抱いてやってきた。この姫が陛下の子供の一番小さな子供で今3歳である。ミシェル妃ももう一人子供を作りたいと熱望している。ソフィア妃の産んだ二人の王子は成人後ソフィア妃の生家に跡取りとその補助として入る事になっている。

「この自立式のハンモックいいですね。側妃宮でも手に入れましょう」

ミシェル妃が乗り気である。

「複数置いた方がいいと思うわ」

公爵夫人が言う。

「王子殿下も姫さまたちも遊びたいでしょうし……、陛下が昼寝に来ると思うもの」

公爵夫人は笑っている。守護者も同意している。セイラ妃は何も言わずほほ笑んでいる。

「今日の夜は私が泊まります。この術の仕上げをしますから」

公爵夫人の言葉に11歳のソフィア妃の双子がねだる。

「ねぇ、僕らもマダムエマと一緒に外で寝たい」

「夜に外なんてわくわくするよ」

少年たちのわくわくにセイラ妃が声をだした。

「じゃぁ、テントを用意してもらいましょうね。貴方達は夕食からここで食べるといいわ。陛下お父様とお話があるからみんな夕食までに今日の分の宿題まで終わらせる事。遊びの時間を少し切り上げて皆、これからお部屋に戻ってお勉強できる?」

二人の少年は頷く。ミシェル妃の所の王子は騎士の所に向かい野営の備品を借りてくると騎士団の詰め所に向かった。ミシェル妃の息子は18歳でネイサンよりも半年ほど早い生まれの王子だった。

「これでよろしいですか?」

セイラ妃の囁きに銀の樹の葉がさやさやと揺れた。



 グランサニュー公爵に連れらるに近い形で陛下が側妃宮にやってきた。セイラ妃は陛下の状況に眉を顰めた。いつももより疲れているようだった。

「エマ」

公爵が夫人に声をかけると夫人が頷く。

「もう設置は終わってます」

「そうか」

陛下は公爵に支えられたまま、そこに設えていたハンモックに寝かせられた。

「セイラ妃、ハーブティを入れてもらえんかな。陛下も飲める、カモミールのお茶を」

セイラ妃が頷くと控えていた侍女が動いた。

 柔らかくハーブの匂いがし始めたころ陛下の息が落ち着いてきた。

「エクトル、どうだ?」

「すこし……落ち着きまし」

会議が終わってグランサニュー公爵が他の貴族に捕まっている時に陛下が急に苦しみだしたらしい。公爵の元には守護者の声がその瞬間に響いた。

『体の内が呪われかけてる』

と。守護者は早く陛下を自分の元へと伝えた。公爵は知らなかったが公爵が陛下をつれて出たすぐに正妃アグネスが聖女と共に先ほどまで陛下と貴族が会議を行っていた部屋に乗り込んで来たらしい。

「陛下に異変が」

とアグネスが叫んだ時には公爵は王族しか知らないとある部屋からの通路を使って側妃宮に陛下を連れて入った所であった。

「ちっ」

聖女が舌打ちしたのをベルティエ公爵は聞き逃さなかった。
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