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第二章

守護者の元へ

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 グランサニュー公爵がそのルートを取ったのも守護者の指示であった。他のルートには正妃たちが手配した騎士が潜んでいたのだ。

 陛下が銀の樹の下で息があがっている横になった頃、騎士団ではちょっとした騒ぎがあった。

「殿下、後ろ失礼」

数少ない聖騎士の一人が剣を抜き後ろからジュスト殿下に切りかかったのだ。

「狼藉ものっ」

と従者から声がかかるかジュスト王子は毛ほどの傷ついていない。聖騎士はそのまま聖句を唱えジュスト王子の背中に聖水をかけた。

「このままセイラ妃の元へ」

「自分で歩いていく。……君も一緒に来てほしい」

騎士団の詰め所は側妃宮からほど近かった。途中、子爵や男爵の次男三男が多い第7騎士団の人員が持ち場でもなくうろうろしている。ジュスト王子の前は近衛第一部隊長が、後ろは先ほどの聖騎士と騎士団長が控えている。
 第7騎士団員はそんなメンバーに睨まれ俯いている。

「第7、団長はどこだ」

誰も答えず俯いている。

「団長、……一人とっ捕まえて置いた方が良さげですが側妃宮には……あれは入れません」

騎士団長の決断は早かった。

「俺が捕まえて……牢に入れておくか?」

「いえ、聖騎士用の祈りの部屋へ。聖騎士団長か副団長がいれば『見つけた』と私が言ったと伝えておいて下さい」

「わかった」

大柄な騎士団長はその辺でうろついていた第七騎士団員に声をかける。騎士団員が無言の抵抗をしたので騎士団長がそこにいた騎士団員二人を抱え上げた。ジュスト王子はぎょっとした顔になったが、従者が祖ッと耳打ちをした。

「騎士団長は男二人くらいは軽く抱えられる膂力をお持ちですよ」

そういうと従者は騎士団長に頷き、騎士団長も頷き返した。

「私の義兄なんです」

従者は兄弟の多い伯爵家の末っ子で姉が騎士団長に嫁いだとか。そんな話をしていると側妃宮についた。側妃宮について庭に入った途端聖騎士はあからさまにホッとした顔になった。
 ジュスト王子一行はそのまま銀の樹の根本に連れてこられた。ジュスト王子は一瞬ぼんやりひかる銀の人型を見た気がしたがすぐに気のせいだと思った。
 そこには既に陛下がおり、グランサニュー公爵夫妻がいて、セイラ妃とミシェル妃母親がいた。なんだこの勢ぞろいはとジュスト王子は思ったが陛下がいるので膝をつき頭を垂れた。

「良い、騎士も含めて気楽にしてくれ。ジュストは呪いは大丈夫だ」

陛下があまり体調のすぐれない顔色のまま皆に告げる。

「ジュスト、こちらに来てこれをお飲みなさい」

ミシェル妃がセイラ妃がいれてくれたハーブティを渡す。セイラ妃は皆にハーブティを飲ませる。聖騎士はことのほか感動していた。

 「何があったか話してくれるかな」

銀の樹に背中を預けたままグランサニュー公爵が言う。

「これから申し上げることは事実です」

聖騎士が先生の形をとった。

「黒い影が部屋の中を飛んでおり、切ろうとしていたのですが人に寄って行くのです。そしてジュスト殿下を見つけると一直線に飛んでいき取りつこうとしてるように見えたので影を切った次第です。その時には陛下が倒れらた事、陛下が部屋を出た途端正妃と聖女が会議場に乗り込んできたことを聖騎士団長に聞いた直後でした」

聖騎士はそこで一息ついていれたもらったお茶を飲む、そして報告をつづけた、

「聖騎士団長に言われて騎士団長を呼びに行った時の事でした」

聖騎士の言葉に同意するようい銀の樹の葉がゆれている。公爵と陛下は守護者から完全同意を知らされている。

「報告ありがとう。これから騎士団長と聖騎士団長に同じ報告をする、という事だね」

聖騎士は頷いた。
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