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第四章

真夜中の雑談

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 「エリク神官長、これ以上の精霊の話は神殿の精霊と話してくれ、って」

フロランが自分の精霊の言葉を伝える。

「そうだね。ここでそう言う話をしても奴らに聴かれるのも、ね」

エリクは含みを持たせて答える。この遠征に来ている神殿騎士や聖騎士も一枚岩とは言い難いものがあるようだった。フロランは大あくびをする。

「……つかれた。体を貸すとどっと体力削られる」

「口を開けて」

エリクに言われてフロランは口を開ける。ぽいっと甘く凍った小さな果実が口にほおりこまれた。

「菜園の精霊が育ててるベリーだよ。滋養強壮にもってこいだ。明日の朝には魔力も気力も回復している。さぁ」

眠りの術をかけようとするエリクをフロランは制した。

「いや、大丈夫。寝床まで持つかどうかすらヤバイ」

「そうなったおとーさまが抱っこして連れてってやる」

ウージェーヌが嬉しそうに言う。フロランは酢を飲んだような顔になり早々に寝床へ引っ込んだ。

「そろそろ交代かね」

北の侯爵がいう。ドームの中の騎士や冒険者に割り当てているエリアの気配で呟く。前陛下のパーティと数人の貴族子弟がこちらのエリアにいて先に寝てもらっていたのだ。エリクはご丁寧に相手に深い睡眠の術をかけて話を聞こえなくしていた。アルは他国から来たグランサニュー公爵の知人の息子という設定で事情を知らない人間には身分を明かしていない。

「起こしましょうかね」

エリクは寝ている貴族達に目覚めの呪文をかける。フロランには呪文の影響がないように範囲に気をつけているようだ。アルはいままでそう言うことが感じ取れなかったが、エリクとドニに診てもらってから魔法がかかっている範囲や規模を徐々に理解できるようになってきていた。ただしエリクがするような魔法の解析や術を使う事は出来ない。力に知識が追い付いていないのだ。このドームにいる間はエリクにかけてもらっていた魔法感知遮断をする術は解いてもらっている。理由は万が一があった時に魔力を感知できる人間が多い方が有利だとエリクが判断したからだ。
 北の侯爵がドニとグランサニュー公爵の寝床に敷布を一枚余分に敷いた。

「じい様達は冷やしちゃならんしね」

ウージェーヌが笑う。

「さて交代」

マドレーヌたちの祖父が寝ていた場所、マドレーヌが寝るエリアの奥に寝る。フロランは手前で寝ている。マドレーヌの寝床は個人用テントであった。これはマドレーヌのマジックバッグに入れてあったものだった。寝床も一式自分で用意してあったし、雪狼の毛皮を数枚、北の侯爵のストックから貰っていた。マドレーヌは自分も寝ずの番をすると言ったが祖父と父と兄に強硬に反対された上に北の侯爵に『男同士気兼ねなくやりたいんでお嬢ちゃんは夜の時間は邪魔しないでおくれ』といわれて諦めた。そしてエリクが自分が起こすまで起きないように術をかけておいた。

 翌朝、エリクは大量の雪を持ち込ませ、雪を溶かし温かいお湯にする。それで顔や体をさっぱりとさせろと騎士達の元にも大きな甕を二つ用意し、渡す。

「マジックバッグに入れておくと便利ですね」

のほほんとエリクは言う。ウージェーヌとフロランには壺にいれて渡す。

「マドレーヌ嬢と三人で使ってくれ」

「わかった」

ウージェーヌはしっかり起きていた。少しぼんやりしているがフロランも眼を覚まし、朝の用意を始め出した。
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