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第四章

結界の中の冒険者

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 真夜中のショーが始まった。小窓を覗く騎士達も薄笑いになって戻っていく。それは公爵達もだった。冒険者の方は慣れているのかこの辺りの獣が来ても顔色も変わらないのだが兵士は雪角が雪狼が結界をつつくたびに怯えている。またちょくちょく結界の周りを黒い靄っぽいものがいったり来たりしている。

「ふむ。じゃ侯爵」

「ん?」

「リーダーに話が聞けると思います?」

「どうだろうな。やってみるが。ウジェの方がいいのでは?」

「そうかなぁ。侯爵は寛大なふり、出来ますよね?」

「ふむ、物事にこだわらない方のたちではあるかな」

「じゃ、リーダーを任せます。ウジェはリーダー以外の知り合いから情報を」

「まずは白湯かの」

ドニが白湯を用意し始める。



 エリクは黒い布を被ると外の結界の中に転移し、10人ほどの冒険者達を連れてドームの中に入った。そしてドームの中央に設えてあるテーブルに冒険者を座らせる。

「手の縄をほどきますね。暴れないでくださいね」

エリクは最初に厳つい男の手首の縄を解いた。その男は好機と見たのかエリクを人質に取ろうと動いたのだが、動いた瞬間にウージェーヌの足先がその男の頭を左から右に薙ぎ払った。そして公爵がささっと魔道具の魔力と膂力を封じる腕輪と足環を着けて膝を荒縄で縛る。

「おっちゃん、意外と縛るの上手いね」

「うちの子供は悪ガキばっかでな。長男は特にな。長男と長女は縛って木に吊るしてたことあるな」

「こいつも吊るせる?」

ウージェーヌとグランサニュー公爵は呑気な会話をかわしている。

「で、ジョスよ」

北の侯爵が穏やかにリーダーに声をかける。

「何故お前はそっち側にいる?」

「……おやっさん、すんません。俺達は……」

「まず、何故隣国の軍隊に協力したのか教えてくれ」

リーダーが答える事をためらっているのでメンバーの一人が声を出した・

「リーダーたちは、奥方を抑えられてる。娘を抑えられたメンバーもいる。俺達はリーダーを助けたくて協力した。あいつらの上官がアルノー伯と取引があるらしく俺達はここへ案内させられた」

侯爵は頷いた。

「……女たちはもう、正気を保ってないと思う。アルノー伯が用意した媚薬の実験台に使われたみたいだ」

「でも見捨てられないだろう?」

侯爵の声が優しい。リーダーは唇を噛んでいた。

「国は関わってるか?」

リーダーは小さく首を横に振る。

「今回はより強力な薬が用意できたっていう取引で、軍人どもの上司は今」

「あ、向こうの国は建国祭の準備か」

「そうなんだ。で、腹心を使ってここでアルノー伯を待ってたんだが約束の期日を越えてもこない。今の時期は狩りの季節だから知り合いにでも捕まってるのかって奴らは考えて期日から今日で20日なんだが。あいつらはなにかやらかしたらしくて……国に帰りづらい状態らしくて」

こういう話をリーダーはぼそぼそ細切れに話した。冒険者のうち3人が元が聖水の白湯に苦味を感じたのでドニが三人を治療していた。

「おっちゃん。ここから帰ったら即陛下に知らせてくれ」

ウージェーヌは別の知人から聞いたリーダー達の家族に対する狼藉をグランサニュー公爵へつげた。エリクが気軽に言う。

「紙でまとめてくれたらちょっと自分が行ってくるけど?」
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