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第五章

グランジエ領の日々 4

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 「マリアンヌ嬢、体調はどうかな?」

エリクがベッドで横になっているマリアンヌに声をかける。部屋の扉を開けて、入口あたりにクロードが立っている。
 エリクはマリアンヌと話すときはマリアンヌに自白の術をかけていた。最初の5日は。7日立った今は術は使わずにどんな言葉がマリアンヌから出るか、を聞いている。
 マリアンヌは他人に媚びることで他人から大事にされる事を学んでしまってそれが癖になっているようだった。男性相手には兄弟に対しても少しうるんだ感じの瞳で下から見上げる感じでお願いをする。これは癖なのかとエリクはクロードに尋ねたらクロードは同意した。

「フロランには通用しないけどね。俺はちょっと負けるなぁ。……一番負けるのはマドレーヌで、あいつが一番マリアンヌを甘やかしてた」

クロード曰く、マリアンヌにとってマドレーヌは王子様なんだと。仲の良さを見せびらかすためにかつての同級生が行くようなカフェに都度都度マドレーヌと連れ立って王都へ出かけていたと。

「マリアンヌ嬢はギルドのシステムを使えたのですか?」

エリクが驚いて尋ねるとクロードは薄く笑って首を横に振った。

「マドレーヌが装置に3回分の魔力を入れて使わせてもらってたよ。俺だと二人で通れないしフロランは連れて行かないから。たいていマドレーヌが連れて行ってた」

「二人通るのに3回分?」

エリクが不思議そうにだ。

「ああ、1回分はお代のうちだよ。もちろん普通にお金で利用料も払ったうえでな」

クロード、フロラン、マドレーヌは魔の森で狩りをしているから既定の小遣いしかもらっていないマリアンヌよりは資金が潤沢だったので王都での支払いはマドレーヌ持ちだったらしい。

「俺は二人のケーキ代で月にいくらか渡すようにしてた。マリアンヌにかかる小物代はマドレーヌ自身で出してたのとオヤジかジーちゃんからの援助は受けてた。……おふくろは『マドレーヌが出して当たり前でしょ。自分のお金あるんだから』って俺とばーちゃんには言ってた。オヤジたちには言ったことないと思う」

クロードは母親にマドレーヌを嫌いなのかって訊いた事があるという。答えは『あの子が私たちに興味ないのよ』と言われたと。15,6まではそんなものかと思っていたが少年期を過ぎると母親がおかしいと思うことも増えてきたとクロードが言う。

「マドレーヌがマリアンヌの費用を持つことは当たり前で、マリアンヌがマドレーヌになにか買ってあげるとその代金は母が家計から出すんだ。……マリアンヌに臨時の小遣いって言って。マリアンヌは気が付いてるのかどうか……」

「意外と君は見てたんだね」

エリクの言葉にふっとクロードは笑う。

「でも魅了にはあてらてちょっとおかしくなってましたが」

「封印が解けたのは封印をした神官がなくなったから、なんだけどね」

エリクはクロードに説明する。

「死ぬ少し前に還俗してて。……で事故、馬車にひき逃げされたんだよね」

一緒に暮らしていたという若い女も家にいなかったらしい。近所の人間も一緒に暮らしていた女性の顔を覚えてなくて色々うやむやになってしまったらしい。

「タイミング的にはアレンとマリアンヌをくっつけるための工作、だろうね」

「アレンは悪い奴とも思えなかったよ。マリアンヌを大事にしてくれそうな男だと思ってた」

エリクはじっとクロードを見た。

「アレンに自分の代わりをしてほしかった?」

クロードは一瞬躊躇したが、頷き肯定した。
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