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第五章
ロクサーヌたちの卒業式 1
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マドレーヌがグランサニュー家に来て半年がたった。
冬が明け春となる。次の7の月にはレアとロクサーヌは卒業する。ネイサンはアランと一緒に遊んでいたせいで卒業に足る単位をとれていなかった。が、ネイサンはめげていなかった。できた時間でロクサーヌとの結婚パーティのための衣装を作るという。これにはレアもセイラ妃、マドレーヌ、エマが巻き込まれている。薄いクリーム色、光沢があるので金色に近い色に見える、のドレスに同じ色の糸でネイサンとセイラ妃が刺繍をしている。
レアとマドレーヌはヴェールにバラ色の薔薇のつぼみを刺しきらきらとした虹色がかったガラスのビーズを縫い留めている。
「ネイサンの意外な才能ね」
レアは本気で驚いていた。ドレスのデザインから刺繍のデザイン、すべてネイサンが手がけている。
「まぁ、材料からなにからなにまでで今年分の、最後の歳費3/4飛んだけど」
ネイサンが笑っている。
「ちょっとお小遣い足りるの?」
「んー、使うのは昼食くらいだし十分だと思う」
笑いながらネイサンはこそっとつぶやく。
「兄上から毎月お小遣いもらってるし」
「それはみんなもらってるわよ?毎月銀貨3枚分」
「毎週、冒険者として辺境の魔の森で狩りをしてるからって兄上が」
マドレーヌはおしゃべりに参加する余裕もない。レアのほうは学園の授業でやっている分、一日の長があった。マドレーヌはエマに『裁縫、刺繍を覚えておけば騎士服の応急手当だって自分でできるわよ?』と言われて以前より真面目に取り組むようになっていた。
「来週の卒業式のエスコートはどうするの?やっぱジュスト?」
ネイサンの問いかけにレアは首を横に振る。
「ジュストも婚約者決まったし、私と同学年の侯爵令嬢だからそちらを優先してもらったの。私はアル兄様の復帰の表明もかねて、アル兄様がエスコート」
アルは今、公爵邸でエスコートの特訓を受けている。細かい作法のブラッシュアップをしているのだ。
「マドレーヌはどうするの?」
マドレーヌはやっと顔を上げる。
「私の学年は騎士科の実習で会場の警備です。皆さまをお守りする手助けですね。実際のところは来客の案内や迷子案内が主な仕事ですけど」
くすりとマドレーヌが笑う。騎士科の学生は中等部の1年から全員、卒業式の警備や案内に着くのだ。来賓の出迎えは中等部の生徒の役目で馬車止めで馬車を受け取り、御者に身分に応じて適切な場所を指示をするのが仕事である。
そんなはなしをしているとアルが疲れた顔で降りてきた。エマが指示し、お茶の用意がテラスに設えられる。
「疲れた」
かなり濃い目の珈琲をアルは所望した。
「珈琲の香りで目を覚ましてもうひと踏ん張り」
「こっちはこつこつやるしかないから」
ネイサンが答える。アルは頷く。
「根気がいるよな、それ」
レアが言う。
「そうだけど、ロクサーヌを綺麗に飾るなんてとても嬉しいことだもの。そういえばアルノー夫人は?」
レアの問いにネイサンが答える。
「うちの義母上のドレスの刺繍にかかりきりですよ。ソフィア妃とお揃いらしいですから大忙し。そのうえでベルティエ公爵の上着に義母上のと意匠をそろえた刺繍をするそうです」
マドレーヌはその刺繍漬けの生活を思いぞっとした。そんなマドレーヌをアルはじっと見守っている。その様子を見てレアはやきもきしているが何も言わない。エマに『口出しはだめよ?東の方の格言では馬にけられるらしいわよ?』と言われている。
「お兄様は今回は私と色を合わせてよ?」
マルハきょとんとした顔をする。
「制服じゃないのか?」
「おーにーさーま?私言いましたよね、今回の卒業パーティのファーストダンス、ネイサンとロクサーヌ、私とお兄様の二組で踊るって」
アルは初耳だという顔になって自分の妹を見ていた。
冬が明け春となる。次の7の月にはレアとロクサーヌは卒業する。ネイサンはアランと一緒に遊んでいたせいで卒業に足る単位をとれていなかった。が、ネイサンはめげていなかった。できた時間でロクサーヌとの結婚パーティのための衣装を作るという。これにはレアもセイラ妃、マドレーヌ、エマが巻き込まれている。薄いクリーム色、光沢があるので金色に近い色に見える、のドレスに同じ色の糸でネイサンとセイラ妃が刺繍をしている。
レアとマドレーヌはヴェールにバラ色の薔薇のつぼみを刺しきらきらとした虹色がかったガラスのビーズを縫い留めている。
「ネイサンの意外な才能ね」
レアは本気で驚いていた。ドレスのデザインから刺繍のデザイン、すべてネイサンが手がけている。
「まぁ、材料からなにからなにまでで今年分の、最後の歳費3/4飛んだけど」
ネイサンが笑っている。
「ちょっとお小遣い足りるの?」
「んー、使うのは昼食くらいだし十分だと思う」
笑いながらネイサンはこそっとつぶやく。
「兄上から毎月お小遣いもらってるし」
「それはみんなもらってるわよ?毎月銀貨3枚分」
「毎週、冒険者として辺境の魔の森で狩りをしてるからって兄上が」
マドレーヌはおしゃべりに参加する余裕もない。レアのほうは学園の授業でやっている分、一日の長があった。マドレーヌはエマに『裁縫、刺繍を覚えておけば騎士服の応急手当だって自分でできるわよ?』と言われて以前より真面目に取り組むようになっていた。
「来週の卒業式のエスコートはどうするの?やっぱジュスト?」
ネイサンの問いかけにレアは首を横に振る。
「ジュストも婚約者決まったし、私と同学年の侯爵令嬢だからそちらを優先してもらったの。私はアル兄様の復帰の表明もかねて、アル兄様がエスコート」
アルは今、公爵邸でエスコートの特訓を受けている。細かい作法のブラッシュアップをしているのだ。
「マドレーヌはどうするの?」
マドレーヌはやっと顔を上げる。
「私の学年は騎士科の実習で会場の警備です。皆さまをお守りする手助けですね。実際のところは来客の案内や迷子案内が主な仕事ですけど」
くすりとマドレーヌが笑う。騎士科の学生は中等部の1年から全員、卒業式の警備や案内に着くのだ。来賓の出迎えは中等部の生徒の役目で馬車止めで馬車を受け取り、御者に身分に応じて適切な場所を指示をするのが仕事である。
そんなはなしをしているとアルが疲れた顔で降りてきた。エマが指示し、お茶の用意がテラスに設えられる。
「疲れた」
かなり濃い目の珈琲をアルは所望した。
「珈琲の香りで目を覚ましてもうひと踏ん張り」
「こっちはこつこつやるしかないから」
ネイサンが答える。アルは頷く。
「根気がいるよな、それ」
レアが言う。
「そうだけど、ロクサーヌを綺麗に飾るなんてとても嬉しいことだもの。そういえばアルノー夫人は?」
レアの問いにネイサンが答える。
「うちの義母上のドレスの刺繍にかかりきりですよ。ソフィア妃とお揃いらしいですから大忙し。そのうえでベルティエ公爵の上着に義母上のと意匠をそろえた刺繍をするそうです」
マドレーヌはその刺繍漬けの生活を思いぞっとした。そんなマドレーヌをアルはじっと見守っている。その様子を見てレアはやきもきしているが何も言わない。エマに『口出しはだめよ?東の方の格言では馬にけられるらしいわよ?』と言われている。
「お兄様は今回は私と色を合わせてよ?」
マルハきょとんとした顔をする。
「制服じゃないのか?」
「おーにーさーま?私言いましたよね、今回の卒業パーティのファーストダンス、ネイサンとロクサーヌ、私とお兄様の二組で踊るって」
アルは初耳だという顔になって自分の妹を見ていた。
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