なんたか変な人が…

あくの

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前編 夫の愛人ですって?

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 「ミレーヌ・ラヴィエール伯爵夫人、私はあなたの夫の恋人です。さっさとアルセーヌ様と別れてください。妻とはもう他人だって。アルは私を愛してるの。あなたみたいなおばさんはもういらないって」

厚化粧で喚く、どう見ても10くらい上の女性は昼だというのに胸が半分以上見えて、かつスカートの裾は床を舐めるように引きずっている。ミレーヌはまるで夜の女みたいと思いながら見ている。

 ミレーヌは芳紀まさに18歳、豊かな金髪と青い目の女性であった。

「ミレーヌ・ラヴィエール伯爵夫人はおりません」

「貴女はアルセーヌ・ラヴィエール伯爵の奥方ですよね?」

「アルセーヌ・ラヴィエール伯爵もこの国にはおりません。ほかにラヴィエール伯爵がいらっしゃるなら申し訳ありませんが」

「アルとはここの寝室で何度も愛し合ったわ。薄いラヴェンダー色のシーツの上で何度もね」

ミレーヌは焦らない。

「貴女、お名前は」

「アンよ」

「アンさん…?」

ミレーヌの予想していた名前ではなかった。

「貴女、ワトー子爵領からいらした方よね?」

アンは鼻で笑う。

「私はそんな田舎者ではないの。ここ王都で暮らしてますの」

「アルセーヌに養われてるの?」

「はん、私は自立した職業夫人よ。自分の食い扶持くらい自分で稼いでます。貴女と違って」

ミレーヌは、たしかに自分は領民の税金で養われてますものね、と考える。

「とにかく、貴女は出ていくの。私が伯爵夫人になるの、わかった?」

ミレーヌは可愛らしく首を傾げる。

「伯爵夫人は無理ですわ。私、女性を娶る趣味はございませんし、まだ旦那様のいる身ですから、不倫をする気持ちございません」

「は?娶る?は?」

アンは話についていけてないようだった。ミレーヌは淡々と話す。

「アルセーヌとは17で結婚しました。その時点ではアルセーヌは伯爵代行、ではありました。私の18の誕生日、成人を迎えましたので晴れて女伯爵となりました。アルセーヌは私の配偶者、ではありますが伯爵ではありません。理解できますか?」

アンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になり呆然としている。

「あら、旦那様の馬車がついたようですね。こちらにお呼びしますわ」
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