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本編
子息も令嬢も動き始める。
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「ここが新しい職場か」
ラファイエット家の3男、4男、5男は宰相の執務室に連れてこられていた。各家の当主、嫡男、次男と夫人は国に帰ったら仕事があるだろうし、客として遇することはできるがそれ以外で働ける人員で希望があれば王宮かフーシェ侯爵の家で仕事がある、と伝えられる。また奥方で王宮で辛い人は暫くフーシェ女侯爵から療養に来ないかとお誘いがあった。
夫人たちは物見遊山がてらフーシェ家の領地に行ってしまった。令嬢の一部はセシルのいる王妃宮の女官見習いに入った。また、フーシェ女侯爵の家の手伝いに行った令嬢もいる。他の家の嫡男と次男以外の子供は己が手で稼ぐ事は本国でも普通にやっている事なので通常運転、であった。
冒険者登録をして冒険者になった子息令嬢もいた。こちらの国の冒険者ギルドは初期研修もしっかりやってくれるので冒険者を進路にしていた子息令嬢には至れり尽くせり、であった。
そして、ソフィーは。
「兄様、稽古をつけてください」
すぐ上の三男ジェラールの朝の鍛錬に顔をだした。これも子供の頃からの習慣だった。
「体は大丈夫なのか?」
「徐々に動けるように戻さないと……。あのアホのせいで休んでしまってたから」
足にぴったりしたスパッツと軽めのチュニックで練習用の木剣をもってソフィーはほほ笑んだ。ソフィーは本来ローランが想定しているような淑女ではなく、活発な女性であった。ローランたちのいた普通科と違い上級科にソフィーはいて、騎士科のコースに一部参加していたことなど全く知らなかったのだ。
「あのアホには私があれから与えられた痛みは全部体で味わってもらうので。鍛えなおさなきゃ」
「我が妹ながら……アレも厄介な事したなぁ」
「女を暴力で思い通りするならこちらも暴力で返すのみです。やるならやられるんですよ。……アレも聖女を騙った女もその父親も。皆痛い目に会うべきだと思いませんか」
すぐ上の兄、三男のジェラールは頷く。
「物理的にも痛い目に合わせたいね、俺も」
ジェラールは暫く考えていたが口を開いた。
「なぁ。ソフィー。体術も鍛えないか?どうせならソフィーの拳でアレのあばらを……」
ソフィーはにんまり笑う。黒猫みたいだなとジェラールは思った。
「そうですわね。己が手でやり遂げてこその復讐、いえ、ざまぁですわね」
愛らしくソフィーが笑う、ジェラールは首を傾げる。
「『ざまぁ』ってなんだ?」
「ジェラールお兄様、知らないの?学園で女生徒に流行りまくってたのに」
ジェラールは大型犬の子犬みたいにつぶらな汚れない瞳で妹を見返す。
「わかりました、薄いものをお届けしますので参考として一冊お読みください」
「えぇー」
抗議の声をあげたものの妹に甘いジェラールは参考図書を読んだのであった。
「これはなんだ」
ソフィーに渡された本をすぐに読めたらしいジェラールが本を握りしめ、怒りも新たにソフィーの部屋に入って来た。赤くなったり青くなったりジェラールの顔色は安定しない。
「学園の女生徒の間で流れてた自主流通本ですわ。私たちにはわからないように流れていて、私が見つけた時は女生徒の八割は読んでいたのではないかしら」
ソフィーは可愛らしく首を傾げる。
「主題は王太子と聖なる力の乙女の恋愛で、その悪役の令嬢はセシル様ですよね、どう見ても」
ジェラールは頷いた。
「こ、この……男三人のあの、その」
「多分、その三人はフレデリク兄様、ジェラール兄様、そしてラファイエット様だと思います」
ジェラールは本を握りしめしゃがみこみ、長い溜息をついた。
ラファイエット家の3男、4男、5男は宰相の執務室に連れてこられていた。各家の当主、嫡男、次男と夫人は国に帰ったら仕事があるだろうし、客として遇することはできるがそれ以外で働ける人員で希望があれば王宮かフーシェ侯爵の家で仕事がある、と伝えられる。また奥方で王宮で辛い人は暫くフーシェ女侯爵から療養に来ないかとお誘いがあった。
夫人たちは物見遊山がてらフーシェ家の領地に行ってしまった。令嬢の一部はセシルのいる王妃宮の女官見習いに入った。また、フーシェ女侯爵の家の手伝いに行った令嬢もいる。他の家の嫡男と次男以外の子供は己が手で稼ぐ事は本国でも普通にやっている事なので通常運転、であった。
冒険者登録をして冒険者になった子息令嬢もいた。こちらの国の冒険者ギルドは初期研修もしっかりやってくれるので冒険者を進路にしていた子息令嬢には至れり尽くせり、であった。
そして、ソフィーは。
「兄様、稽古をつけてください」
すぐ上の三男ジェラールの朝の鍛錬に顔をだした。これも子供の頃からの習慣だった。
「体は大丈夫なのか?」
「徐々に動けるように戻さないと……。あのアホのせいで休んでしまってたから」
足にぴったりしたスパッツと軽めのチュニックで練習用の木剣をもってソフィーはほほ笑んだ。ソフィーは本来ローランが想定しているような淑女ではなく、活発な女性であった。ローランたちのいた普通科と違い上級科にソフィーはいて、騎士科のコースに一部参加していたことなど全く知らなかったのだ。
「あのアホには私があれから与えられた痛みは全部体で味わってもらうので。鍛えなおさなきゃ」
「我が妹ながら……アレも厄介な事したなぁ」
「女を暴力で思い通りするならこちらも暴力で返すのみです。やるならやられるんですよ。……アレも聖女を騙った女もその父親も。皆痛い目に会うべきだと思いませんか」
すぐ上の兄、三男のジェラールは頷く。
「物理的にも痛い目に合わせたいね、俺も」
ジェラールは暫く考えていたが口を開いた。
「なぁ。ソフィー。体術も鍛えないか?どうせならソフィーの拳でアレのあばらを……」
ソフィーはにんまり笑う。黒猫みたいだなとジェラールは思った。
「そうですわね。己が手でやり遂げてこその復讐、いえ、ざまぁですわね」
愛らしくソフィーが笑う、ジェラールは首を傾げる。
「『ざまぁ』ってなんだ?」
「ジェラールお兄様、知らないの?学園で女生徒に流行りまくってたのに」
ジェラールは大型犬の子犬みたいにつぶらな汚れない瞳で妹を見返す。
「わかりました、薄いものをお届けしますので参考として一冊お読みください」
「えぇー」
抗議の声をあげたものの妹に甘いジェラールは参考図書を読んだのであった。
「これはなんだ」
ソフィーに渡された本をすぐに読めたらしいジェラールが本を握りしめ、怒りも新たにソフィーの部屋に入って来た。赤くなったり青くなったりジェラールの顔色は安定しない。
「学園の女生徒の間で流れてた自主流通本ですわ。私たちにはわからないように流れていて、私が見つけた時は女生徒の八割は読んでいたのではないかしら」
ソフィーは可愛らしく首を傾げる。
「主題は王太子と聖なる力の乙女の恋愛で、その悪役の令嬢はセシル様ですよね、どう見ても」
ジェラールは頷いた。
「こ、この……男三人のあの、その」
「多分、その三人はフレデリク兄様、ジェラール兄様、そしてラファイエット様だと思います」
ジェラールは本を握りしめしゃがみこみ、長い溜息をついた。
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