鬼のセンチネル

弓葉

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玖賀の存在

陰陽寮で正一との再会

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「正一くん! もう平気そうだね」

 藤は正一に手を振った。獅堂がなかなかに力を奮っていたから心配をしていた。

「あ、陰陽師のおにいちゃん」

 正一が藤に近づく。正一の妹も後ろについてきていた。

「おそったりして、ごめんなさい」

 正一はペコリと頭を下げる。鉈を振り回していた時と違う表情を見せた。

「あ、ううん。身体はもう大丈夫なのかい?」

 藤は正一の態度に戸惑う。今は普通の子どもに見えた。初めて会った時と随分印象が変わる。

「まあ、センチネルは陰陽師がいれば大人しいから」

 ニコリ、と深浦は笑った。

「そんな単純なものなんですか」

 正直言って何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。それほど、態度の代わり映えが大きい。

「何かにずっとイライラしてたけど、ここにいたら頭は痛くならないし妹も楽しそうだから平気」

 正一は嬉しそうに笑った。

「政府はエリート……家同士の繋がりがなければセンチネルを迎えいれない。あそこはしがらみが多いんだ。獅堂はバカだから陰陽師を襲わないけど、他の政府センチネルには気をつけた方がいい」

「深浦さん、獅堂のこと詳しいんですね」

 藤に図星を突かれたのか、深浦は目を大きく開けた。珍しく深浦が感情を表に出す。

「ふん、センチネルがいるところに現れるから遭遇率が高いだけだ」

 動揺したのは一瞬だけで、すぐにまたいつも通りの深浦に戻ってしまった。

「もしかして、それ鬼か?」

 正一は人間化した玖賀をジロジロと見た。

「私がなんだ?」

 玖賀は見下すように睨みつける。正一はビックリしたようで藤の後ろに隠れた。

「玖賀、大人げないぞ」

 藤は正一の肩を抱き寄せた。それを見た玖賀は不機嫌になる。

「その数珠……付けてて平気なのか?」

 正一は玖賀が付けている煉獄の数珠を指差した。

「これか? ああ、平気だ」

 玖賀は腕を軽く上げる。勾玉が入った数珠がジャラリ、と鳴った。

「嘘だろ……? 鬼だから地獄に落ちないのか」

 正一は藤の隊服を握りしめたまま、煉獄の数珠を見ている。数珠が怖いようだ。

「地獄……」

 藤は正一の言葉が離れなかった。センチネルは昏睡状態に陥った時、精神的な世界を彷徨うらしい。

 玖賀は昏睡状態でもみじ神社に眠っていた。その間、ずっと地獄を見ていたのか。

「ふん、んなわけあるか。元々の器が違うだけだ」

 興味なさそうに、玖賀は答えた。

――知りたい。

 藤の中で好奇心が大きくなる。なぜ、玖賀は鬼になったのか。センチネルとは何者なのか。

「にいちゃん」

 不意に椿が呼んだ。

「……ん? どうした椿」

 藤は振り返り、椿を見る。

「いや、どこか遠くに行きそうな気がして……」

 椿は不安げに藤の隊服を掴んだ。

「なに言ってんだよ、椿。俺はここにいるじゃないか」

 藤は不思議そうに首を傾げる。そうか、襲われた相手が目の前にいるんだ。椿は不安なんだろう。

 慈悲の心で藤が椿を抱きしめようとすれば、思いっきり殴られた。

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