38 / 57
玖賀の存在
陰陽寮で正一との再会
しおりを挟む
「正一くん! もう平気そうだね」
藤は正一に手を振った。獅堂がなかなかに力を奮っていたから心配をしていた。
「あ、陰陽師のおにいちゃん」
正一が藤に近づく。正一の妹も後ろについてきていた。
「おそったりして、ごめんなさい」
正一はペコリと頭を下げる。鉈を振り回していた時と違う表情を見せた。
「あ、ううん。身体はもう大丈夫なのかい?」
藤は正一の態度に戸惑う。今は普通の子どもに見えた。初めて会った時と随分印象が変わる。
「まあ、センチネルは陰陽師がいれば大人しいから」
ニコリ、と深浦は笑った。
「そんな単純なものなんですか」
正直言って何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。それほど、態度の代わり映えが大きい。
「何かにずっとイライラしてたけど、ここにいたら頭は痛くならないし妹も楽しそうだから平気」
正一は嬉しそうに笑った。
「政府はエリート……家同士の繋がりがなければセンチネルを迎えいれない。あそこはしがらみが多いんだ。獅堂はバカだから陰陽師を襲わないけど、他の政府センチネルには気をつけた方がいい」
「深浦さん、獅堂のこと詳しいんですね」
藤に図星を突かれたのか、深浦は目を大きく開けた。珍しく深浦が感情を表に出す。
「ふん、センチネルがいるところに現れるから遭遇率が高いだけだ」
動揺したのは一瞬だけで、すぐにまたいつも通りの深浦に戻ってしまった。
「もしかして、それ鬼か?」
正一は人間化した玖賀をジロジロと見た。
「私がなんだ?」
玖賀は見下すように睨みつける。正一はビックリしたようで藤の後ろに隠れた。
「玖賀、大人げないぞ」
藤は正一の肩を抱き寄せた。それを見た玖賀は不機嫌になる。
「その数珠……付けてて平気なのか?」
正一は玖賀が付けている煉獄の数珠を指差した。
「これか? ああ、平気だ」
玖賀は腕を軽く上げる。勾玉が入った数珠がジャラリ、と鳴った。
「嘘だろ……? 鬼だから地獄に落ちないのか」
正一は藤の隊服を握りしめたまま、煉獄の数珠を見ている。数珠が怖いようだ。
「地獄……」
藤は正一の言葉が離れなかった。センチネルは昏睡状態に陥った時、精神的な世界を彷徨うらしい。
玖賀は昏睡状態でもみじ神社に眠っていた。その間、ずっと地獄を見ていたのか。
「ふん、んなわけあるか。元々の器が違うだけだ」
興味なさそうに、玖賀は答えた。
――知りたい。
藤の中で好奇心が大きくなる。なぜ、玖賀は鬼になったのか。センチネルとは何者なのか。
「にいちゃん」
不意に椿が呼んだ。
「……ん? どうした椿」
藤は振り返り、椿を見る。
「いや、どこか遠くに行きそうな気がして……」
椿は不安げに藤の隊服を掴んだ。
「なに言ってんだよ、椿。俺はここにいるじゃないか」
藤は不思議そうに首を傾げる。そうか、襲われた相手が目の前にいるんだ。椿は不安なんだろう。
慈悲の心で藤が椿を抱きしめようとすれば、思いっきり殴られた。
藤は正一に手を振った。獅堂がなかなかに力を奮っていたから心配をしていた。
「あ、陰陽師のおにいちゃん」
正一が藤に近づく。正一の妹も後ろについてきていた。
「おそったりして、ごめんなさい」
正一はペコリと頭を下げる。鉈を振り回していた時と違う表情を見せた。
「あ、ううん。身体はもう大丈夫なのかい?」
藤は正一の態度に戸惑う。今は普通の子どもに見えた。初めて会った時と随分印象が変わる。
「まあ、センチネルは陰陽師がいれば大人しいから」
ニコリ、と深浦は笑った。
「そんな単純なものなんですか」
正直言って何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。それほど、態度の代わり映えが大きい。
「何かにずっとイライラしてたけど、ここにいたら頭は痛くならないし妹も楽しそうだから平気」
正一は嬉しそうに笑った。
「政府はエリート……家同士の繋がりがなければセンチネルを迎えいれない。あそこはしがらみが多いんだ。獅堂はバカだから陰陽師を襲わないけど、他の政府センチネルには気をつけた方がいい」
「深浦さん、獅堂のこと詳しいんですね」
藤に図星を突かれたのか、深浦は目を大きく開けた。珍しく深浦が感情を表に出す。
「ふん、センチネルがいるところに現れるから遭遇率が高いだけだ」
動揺したのは一瞬だけで、すぐにまたいつも通りの深浦に戻ってしまった。
「もしかして、それ鬼か?」
正一は人間化した玖賀をジロジロと見た。
「私がなんだ?」
玖賀は見下すように睨みつける。正一はビックリしたようで藤の後ろに隠れた。
「玖賀、大人げないぞ」
藤は正一の肩を抱き寄せた。それを見た玖賀は不機嫌になる。
「その数珠……付けてて平気なのか?」
正一は玖賀が付けている煉獄の数珠を指差した。
「これか? ああ、平気だ」
玖賀は腕を軽く上げる。勾玉が入った数珠がジャラリ、と鳴った。
「嘘だろ……? 鬼だから地獄に落ちないのか」
正一は藤の隊服を握りしめたまま、煉獄の数珠を見ている。数珠が怖いようだ。
「地獄……」
藤は正一の言葉が離れなかった。センチネルは昏睡状態に陥った時、精神的な世界を彷徨うらしい。
玖賀は昏睡状態でもみじ神社に眠っていた。その間、ずっと地獄を見ていたのか。
「ふん、んなわけあるか。元々の器が違うだけだ」
興味なさそうに、玖賀は答えた。
――知りたい。
藤の中で好奇心が大きくなる。なぜ、玖賀は鬼になったのか。センチネルとは何者なのか。
「にいちゃん」
不意に椿が呼んだ。
「……ん? どうした椿」
藤は振り返り、椿を見る。
「いや、どこか遠くに行きそうな気がして……」
椿は不安げに藤の隊服を掴んだ。
「なに言ってんだよ、椿。俺はここにいるじゃないか」
藤は不思議そうに首を傾げる。そうか、襲われた相手が目の前にいるんだ。椿は不安なんだろう。
慈悲の心で藤が椿を抱きしめようとすれば、思いっきり殴られた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる