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29.優しい姉妹
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僕は、ぷんぷん顔のエリーさんにこれまでの経緯を詳しく説明した。
もちろんAOLのことは話せないので、フェルに説明したような感じでだ。
リリスのことは、「別行動を取っていた仲間でこの街で合流した」ということにした。
「そう……そんな事があったんだね」
「はい、ご心配お掛けしました。それで、リリスとフェルのギルド登録試験って出来ますかね?」
「それはたぶん問題ないと思うけど、ギルマスに確認しておくから明日でもいいかな?」
「わかりました。では、また明日――」
僕が別れの挨拶をしようとすると、なんとエリーさんが突然抱き締めてきた――!
「――!? エ、エリーさん!?」
「ソーコちゃん、あんまり無理しちゃダメだよ? 冒険者には常に危険が付き纏ってるから感覚が麻痺しちゃうんだけどね、少しでも危ないと感じたらすぐに逃げて欲しいの。お願い」
エリーさんは優しい声で、語り掛けるように諭してくれた。
いい匂いもするし心臓はバクバクしてて落ち着かないけど、エリーさんが僕のことをほんとに心配してくれているのは伝わってくる。
僕からすれば大したことないことでも、他の人から見れば子供が無茶してるように見えるかもしれない。
あんまりエリーさんに心配掛けさせないようにしないとなぁ。
「……はい、わかりました。今度からは、エリーさんに心配掛け過ぎないように気を付けますね」
「うん、約束だよ?」
「はい、約束です」
そう約束すると、エリーさんは抱き締めてた腕を解いた。
「それじゃあ、また明日来てねっ!」
エリーさんは、いつものように明るい笑顔で手を振ってくれた。
ギルドを出て、今度は商人ギルドへ向かう。
もう、お昼過ぎかな……お腹も減ったしご飯を食べたいとこだけど、家の鍵を貰わないと今日寝るところにも困るしね。
それに、フェルにあんだけ言っといて宿に泊めるわけにもいかないし、早く受け取ってご飯を食べよう。
商人ギルドに到着、受付にアリーさんはと……いるね。
お、ちょうど接客が終わったし、順番待ちもなさそうだ。
「こんにちは、アリーさん」
「あら、ソーコさんにアンジェさん……と、初めてお会いする方もいらっしゃいますし、今日は大勢ですね」
リリスとフェルに会うのは初めてだし、いい機会だから紹介しておこう。
「紹介しますね。こっちがリリスで、この子はフェル。リリスは元々僕達の仲間で、この街で合流したんです。フェルは新しく加わった仲間です」
「あら、そうなんですか。アリーです、よろしくお願いしますね」
「アリーさんは、冒険者ギルドにいたエリーさんのお姉さんだよ」
「確かによく似てますわ。私は商人になれませんので、主様のお使い程度で会うこともあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いしますわ」
「フェルです! よろしくお願いしますっ」
2人の挨拶を聞いたアリーさんは「主様?」と不思議そうに首を傾げた。
「ああ、えっと……彼女はアンジェと同じような従者みたいなもんなんですよ」
「そう言えば、アンジェさんもずっとソーコさんのこと様付けしてましたね。えっと……ソーコさんって、もしかしてお貴族様だったりします?」
「え? いやいや! 全然そんなんじゃないですよ。ただ、過去に色々あって、ちょこっと従者がいるだけなんです」
サポーターという名の従者が十数人ほどだけどね。
「そう……なんですね。ソーコさんのお仲間でしたら、直接うちのギルド員でなくても、なにかお力になれることもあるかもしれません。お気軽にご相談くださいね」
さすがアリーさん。
商人ギルドは僕しか登録してないけど、何かあればうちの子達でも、彼女に相談すれば対応してくれそうだ。
「そういえば、エリーから聞いたんですけど、噂になってる古城の依頼を受けたんですか? 聞くところによると、かなり危険なようですけど……」
アリーさんが心配そうな顔を浮かべた。
でもアリーさんには申し訳ないけど、もうとっくに終わっちゃったんだよね、依頼。
「その依頼なら先ほど終わらせました。完了は手続きの関係でまだですけど。フェルはその依頼のときに一緒になった仲間で……これから新しい家で僕達と一緒に住むつもりなんです」
「え、そうなんですか? でも、なんでまた?」
とりあえず、僕はエリーさんに説明した時のように、順を追ってアリーさんに説明した。
「そんなことが……大変でしたね。エリーがそう言う気持ちもよくわかります。私も同じ気持ちです。ソーコさん達に何かあったら、私もエリーもとっても悲しくなっちゃいます――無理はしないでくださいね?」
「わかりました。くれぐれも無茶はしないように気を付けます」
アリーさんも優しいなあ。
その声色は、エリーさんのように優しさに包まれてた。
この姉妹は、そういうところもそっくりだ。
「それで、今日来たのは新しい家の鍵ですよね。これがそうです」
アリーさんから鍵を受け取る。
「掃除と修繕も昨日しっかりと終わらせましたので、今日から問題なく住めると思います。ほとんどの家具も備え付けされていますが、もし買い直したかったらこちらで紹介しますよ」
「ありがとうございます。そのときはお願いします」
商人ギルドを出て、僕達はそのまま市場へ向かった。
アンジェが料理を作るから食材が欲しいと言ったので、みんなで見に行くことにしたのだ。
料理スキルがあるから僕も作れるけど、アンジェとフェルがやりたそうだったので2人に任せることにした。
途中、親父さんの屋台で買い食いしたりしながら食材を買い込み、家に着いた頃にはもう日が落ち始めていた。
今からご飯を作り始めれば、もういい時間になりそうだ。
「うわあ……! 素敵なキッチンですね!」
フェルがキッチンを見て目を輝かせている。
たしかに現実世界ではあまり料理しない僕から見ても、大きくて立派なキッチンな気がする。
これだけ大きければ、2人で作業しても狭くなさそうだね。
「うふふ、私も『このキッチンなら美味しいものが作れそう』って言ったら、ソーコ様がこの家にしてくれたんです。さあフェル、今日はご馳走を作りましょう!」
「はいっ!」
2人がやる気になってくれるなら、ちょっと家賃が高くても、この家を選んで良かったな。
日がすっかり落ちた頃、テーブルには色々な料理が並べられ、なかなか豪勢な夕食となった。
食費も掛かっちゃうし、さすがに今後は普通の料理だけど、今日だけはおめでたいからと、僕がリクエストした。
「それじゃあ食べようか」
食前の挨拶を済ませ、目の前のお肉をガブリ。
「――っ!」
うんまっ!
ゲームでは食べることは出来なかった、所謂マンガ肉ってやつだけど、実際に食べてみるとめちゃくちゃ美味しい!
アンジェとフェルの料理の腕のおかげかな、並んでる料理全部が美味しい。
「2人とも、すっごく美味しいよ! こんなに美味しい料理が食べれるなら、この家にして大正解だったよ。これからもよろしく頼むね」
「喜んでもらえて安心しました。これからも美味しい料理を作れるよう頑張ります!」
「良かったです。フェルもアンジェさんの足を引っ張らないよう頑張りますっ」
「ええ、すっごく美味しかったわ。アンジェにこんな才能があったなんて驚きね。正直、私なんか足元にも及ばないわ。これからも2人にお願いしたいわ」
「……何か引っ掛かりますが、一応素直に受け取っておきましょう」
うんうん、2人に任せて大正解だね。
お昼を少ししか食べてないのもあるせいか、時折雑談をしながらも、手を休めることなく料理を口へ放り込んだ。
「ふぅ――さて、これからの話をしようか」
ある程度みんなが食べ終えたところで、僕は今後の方針について口を開いた。
もちろんAOLのことは話せないので、フェルに説明したような感じでだ。
リリスのことは、「別行動を取っていた仲間でこの街で合流した」ということにした。
「そう……そんな事があったんだね」
「はい、ご心配お掛けしました。それで、リリスとフェルのギルド登録試験って出来ますかね?」
「それはたぶん問題ないと思うけど、ギルマスに確認しておくから明日でもいいかな?」
「わかりました。では、また明日――」
僕が別れの挨拶をしようとすると、なんとエリーさんが突然抱き締めてきた――!
「――!? エ、エリーさん!?」
「ソーコちゃん、あんまり無理しちゃダメだよ? 冒険者には常に危険が付き纏ってるから感覚が麻痺しちゃうんだけどね、少しでも危ないと感じたらすぐに逃げて欲しいの。お願い」
エリーさんは優しい声で、語り掛けるように諭してくれた。
いい匂いもするし心臓はバクバクしてて落ち着かないけど、エリーさんが僕のことをほんとに心配してくれているのは伝わってくる。
僕からすれば大したことないことでも、他の人から見れば子供が無茶してるように見えるかもしれない。
あんまりエリーさんに心配掛けさせないようにしないとなぁ。
「……はい、わかりました。今度からは、エリーさんに心配掛け過ぎないように気を付けますね」
「うん、約束だよ?」
「はい、約束です」
そう約束すると、エリーさんは抱き締めてた腕を解いた。
「それじゃあ、また明日来てねっ!」
エリーさんは、いつものように明るい笑顔で手を振ってくれた。
ギルドを出て、今度は商人ギルドへ向かう。
もう、お昼過ぎかな……お腹も減ったしご飯を食べたいとこだけど、家の鍵を貰わないと今日寝るところにも困るしね。
それに、フェルにあんだけ言っといて宿に泊めるわけにもいかないし、早く受け取ってご飯を食べよう。
商人ギルドに到着、受付にアリーさんはと……いるね。
お、ちょうど接客が終わったし、順番待ちもなさそうだ。
「こんにちは、アリーさん」
「あら、ソーコさんにアンジェさん……と、初めてお会いする方もいらっしゃいますし、今日は大勢ですね」
リリスとフェルに会うのは初めてだし、いい機会だから紹介しておこう。
「紹介しますね。こっちがリリスで、この子はフェル。リリスは元々僕達の仲間で、この街で合流したんです。フェルは新しく加わった仲間です」
「あら、そうなんですか。アリーです、よろしくお願いしますね」
「アリーさんは、冒険者ギルドにいたエリーさんのお姉さんだよ」
「確かによく似てますわ。私は商人になれませんので、主様のお使い程度で会うこともあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いしますわ」
「フェルです! よろしくお願いしますっ」
2人の挨拶を聞いたアリーさんは「主様?」と不思議そうに首を傾げた。
「ああ、えっと……彼女はアンジェと同じような従者みたいなもんなんですよ」
「そう言えば、アンジェさんもずっとソーコさんのこと様付けしてましたね。えっと……ソーコさんって、もしかしてお貴族様だったりします?」
「え? いやいや! 全然そんなんじゃないですよ。ただ、過去に色々あって、ちょこっと従者がいるだけなんです」
サポーターという名の従者が十数人ほどだけどね。
「そう……なんですね。ソーコさんのお仲間でしたら、直接うちのギルド員でなくても、なにかお力になれることもあるかもしれません。お気軽にご相談くださいね」
さすがアリーさん。
商人ギルドは僕しか登録してないけど、何かあればうちの子達でも、彼女に相談すれば対応してくれそうだ。
「そういえば、エリーから聞いたんですけど、噂になってる古城の依頼を受けたんですか? 聞くところによると、かなり危険なようですけど……」
アリーさんが心配そうな顔を浮かべた。
でもアリーさんには申し訳ないけど、もうとっくに終わっちゃったんだよね、依頼。
「その依頼なら先ほど終わらせました。完了は手続きの関係でまだですけど。フェルはその依頼のときに一緒になった仲間で……これから新しい家で僕達と一緒に住むつもりなんです」
「え、そうなんですか? でも、なんでまた?」
とりあえず、僕はエリーさんに説明した時のように、順を追ってアリーさんに説明した。
「そんなことが……大変でしたね。エリーがそう言う気持ちもよくわかります。私も同じ気持ちです。ソーコさん達に何かあったら、私もエリーもとっても悲しくなっちゃいます――無理はしないでくださいね?」
「わかりました。くれぐれも無茶はしないように気を付けます」
アリーさんも優しいなあ。
その声色は、エリーさんのように優しさに包まれてた。
この姉妹は、そういうところもそっくりだ。
「それで、今日来たのは新しい家の鍵ですよね。これがそうです」
アリーさんから鍵を受け取る。
「掃除と修繕も昨日しっかりと終わらせましたので、今日から問題なく住めると思います。ほとんどの家具も備え付けされていますが、もし買い直したかったらこちらで紹介しますよ」
「ありがとうございます。そのときはお願いします」
商人ギルドを出て、僕達はそのまま市場へ向かった。
アンジェが料理を作るから食材が欲しいと言ったので、みんなで見に行くことにしたのだ。
料理スキルがあるから僕も作れるけど、アンジェとフェルがやりたそうだったので2人に任せることにした。
途中、親父さんの屋台で買い食いしたりしながら食材を買い込み、家に着いた頃にはもう日が落ち始めていた。
今からご飯を作り始めれば、もういい時間になりそうだ。
「うわあ……! 素敵なキッチンですね!」
フェルがキッチンを見て目を輝かせている。
たしかに現実世界ではあまり料理しない僕から見ても、大きくて立派なキッチンな気がする。
これだけ大きければ、2人で作業しても狭くなさそうだね。
「うふふ、私も『このキッチンなら美味しいものが作れそう』って言ったら、ソーコ様がこの家にしてくれたんです。さあフェル、今日はご馳走を作りましょう!」
「はいっ!」
2人がやる気になってくれるなら、ちょっと家賃が高くても、この家を選んで良かったな。
日がすっかり落ちた頃、テーブルには色々な料理が並べられ、なかなか豪勢な夕食となった。
食費も掛かっちゃうし、さすがに今後は普通の料理だけど、今日だけはおめでたいからと、僕がリクエストした。
「それじゃあ食べようか」
食前の挨拶を済ませ、目の前のお肉をガブリ。
「――っ!」
うんまっ!
ゲームでは食べることは出来なかった、所謂マンガ肉ってやつだけど、実際に食べてみるとめちゃくちゃ美味しい!
アンジェとフェルの料理の腕のおかげかな、並んでる料理全部が美味しい。
「2人とも、すっごく美味しいよ! こんなに美味しい料理が食べれるなら、この家にして大正解だったよ。これからもよろしく頼むね」
「喜んでもらえて安心しました。これからも美味しい料理を作れるよう頑張ります!」
「良かったです。フェルもアンジェさんの足を引っ張らないよう頑張りますっ」
「ええ、すっごく美味しかったわ。アンジェにこんな才能があったなんて驚きね。正直、私なんか足元にも及ばないわ。これからも2人にお願いしたいわ」
「……何か引っ掛かりますが、一応素直に受け取っておきましょう」
うんうん、2人に任せて大正解だね。
お昼を少ししか食べてないのもあるせいか、時折雑談をしながらも、手を休めることなく料理を口へ放り込んだ。
「ふぅ――さて、これからの話をしようか」
ある程度みんなが食べ終えたところで、僕は今後の方針について口を開いた。
応援ありがとうございます!
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