シュガーポットに食べかけの子守唄

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8章

2 救世主

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2.
ミズキは大人になるにつれて物静かな性格へと変化していった。小学校6年生になると、特別支援学級にはあの男の子の姿はなかった。担任に聞いたところ、彼はいつの間にか転校してしまったらしい。
ミズキが彼に会いに行けなくなったのは、自分がどうあがいても同じクラスになれないという絶望感もあったのだろうが、もしかすると憧れを抱いてしまった自分への罪悪感もあったのかもしれない。
あなたみたいになりたい。その羨望の言葉が相手を傷つけると大人たちは言った。でも、それを知る前からミズキは何度も彼に賞賛の言葉を送ってしまっていた。それが彼女の心を苛めたのではないのかと思えたのだ。
奇行をやめた彼女は、より絵に傾倒していく。卓球こそ一応まだ通ってはいたが、6年生にもなると学校と提携しているジュニアスポーツクラブには姉は通えない年になっていて、一人になったミズキはよく卓球をサボるようになっていた。卓球をやっている彼女はあまり楽しくなさそうなので、そうなっても仕方のないような気がした。
今までモデルもいない空想にだけ頼った絵を描いていたミズキも、漫画を読める年頃になって、漫画のお気に入りキャラクターを絵に起こす頻度が上がってきた。頻繁に絵で金賞を取るだけあって、小学生にしては絵が上手いように見えたし、彼女自身も別に絵を描く行為を恥じるべきものと感じていなかったのだろう。休み時間の多くは昔と変わらず絵を描いて過ごしていた。
彼女の絵は金賞を取ると、市内や会館に飾られることはあったが、学校に張り出されたりはしない。そのせいか、彼女の絵の知名度は案外低く、誰も彼女の絵に興味を持っている様子はない。
これが僕の中学校だったなら間違いなく上のヒエラルキーに属しただろうに、学校が変わるだけでやはり価値観は大きく異なるもののようだ。なんだか勿体ないな。僕は溜息を吐いた。
「あっ、これシャーマンテイオーのチャオじゃん!」
不意に絵を描いていたミズキの前でクラスの男の子が足を止めた。シャーマンテイオーは僕も読んでいたことがある漫画だが、当時は高校生から小学校まで幅広い人気を誇っていた。このクラスの男の子も例に漏れず、知っていたのだろう。
自分の絵について突然声を掛けられたミズキは驚いて顔を上げるが、男の子は彼女の絵を突然取り上げて、大きな声を上げる。
「うわ、へたくそ!似てねー!」
あまりに大きな声にクラスメイトたちが振り返る。彼の友達らしき人間たちを中心に何人かが集まり、ミズキの絵を指さして笑った。
「本当だ!へったくそー!」
「似てねー!ウケる!」
ミズキはその言葉を聞いて、怒りや恥ずかしさで顔を真っ赤にする。目にじわじわと涙を溜め込み、彼女は席から立ち上がる。そのまま男の子の手から絵を奪い返し、走ってクラスの外へと逃げだした。
「ちゃんとキャラクターが誰なのか伝わってるくせに、下手とかよく言えたな…」
僕はモニターを前に腕を組み、鼻で溜息を吐いた。
こうして絵を描いているだけの人間につっかかる人間は一定層いると思うが、本当に下手だったら何を描いているのかすら分からないものだろう。男の子は漫画名からキャラクター名まで言い当てた。それはちゃんと彼女の技術で、何を描いているのか伝わっている証拠だ。
人のことを見下して嘲る人間の気持ちは分かりたくもないし、なりたくもないが、彼もきっと何か鬱屈としたものを抱えていたのだろう。ミズキが受けた仕打ちはとばっちり以外の何ものでもなかった。
目から溢れる涙を拭いながら、ミズキはクラスから逃げたその足のまま、保健室へと駆け込んだ。涙はかろうじて止まっていたが、目を赤くした彼女に保健室の先生は首を傾げた。
「どうしたの?」
彼女の言葉にミズキは首を横に振る。
「頭が痛い…」
顔を見れば泣いていたことくらい分かりそうなものだが、保健室の先生はミズキの仮病をすんなりと受け入れ、そのまま彼女をベッドに寝かせた。
「たかが絵を笑われたくらいで、仮病まで使って。守ってくれる大人がいて良かったな」
ソファに座り直したルイスが言う。相変わらず上から目線だ。
「人を下にしか見ていないお前には分からないよ」
突然、悪意を向けられた時の対処方法なんて分からなくて当たり前だ。それも、ミズキは今までの奇行を繰り広げながらもイジメらしいイジメは受けて来なかった。彼女にとって初めての実害ある悪意となるだろう。
「君も絵を笑われたことがあるだろう。絵を取り上げられて、黒板の前でノートを広げられて、下手くそだから笑えとあからさまな悪意を向けられたことがある」
「あるよ。僕だって泣きそうだったさ」
「君は言い返したし、保健室には逃げ込まなかった」
どんなに言葉をいなしてもう食い下がってくるルイスがうっとおしい。僕は肩を竦める。
「僕にだって当時はプライドがあったんだ。男らしくありたかったんだよ」
悪意を向けられた時にどう対処するかなんて、それはもう価値観と方向性の問題だけだ。逃げることは悪いことではないし、守ってくれる人に癒されるなら、今の彼女を癒してあげて欲しかった。
「僕の場合は、僕の絵を笑ったやつが1年後には立場が逆転して、嘲笑の対象になっていた。性格が悪いってね。笑ったのはその子だけだったし、因果応報だって最後に笑ったのは僕だ。ミズキには敵が多すぎた」
僕の中学校は絵でヒエラルキーが決まったが、上に属して大勢を貶めたらさすがに人格を疑われる。因果応報を体現した出来事をこの目で見れたことは、僕にとってささやかな成功体験だっただろう。
しかし、ミズキにはそれがない。成功体験にならない。ただの失敗体験だ。
ミズキが保健室で一時間ほど休んで、クラスメイトたちが帰ったのを見計らってコソコソと荷物を教室に取りに帰り、そのまま忍びのように家へと帰っていく。家へ帰ったミズキをいつも明るい母親が笑顔で迎え入れた。
「おかえり!瑞希、前に提出したあなたの絵、市のコンクールで金賞取ったそうよ!」
「そうなんだ…」
まるで興味を失ったように、彼女は母親に適当な返事をしながら子供部屋のある二階へと上がっていく。母親は不思議そうに階段を覗き込み、瑞希の背中を見つめる。
「ただいまー!お母さん!今日の楽器のテスト、先生に褒められたー!」
まるで空気を読んだかのように、すれ違い様に姉が帰宅する。ミズキに向けていた視線を母親は姉へと向け、手を叩いて喜んだ。
「凄いじゃない!あの先生は厳しいのに!杏は凄いわねえ!」
二階に上がるミズキの後ろでは、姉と母親が話す賑やかな声がする。それを背中に受けているミズキはどんな気持ちだったのだろう。
「ここからまた変わり映えしない人生が続くから飛ばすとしよう」
ソファに足を伸ばして、ルイスはいつの間にか出していたサイドテーブルに置いていたリモコンを手に取る。
「お前、いつもそうやって人の人生を見ているのか?」
倍速で流れていくミズキのモニターを見ながら尋ねると、ルイスはコーラをストローで吸い上げる。
「ああ、これしかないからね」
そう言う彼はどこまでも退屈そうで、とことんミズキに興味がないようだった。
何となくここまで来ると、ルイスが考えていることも分かる。彼は僕を味方に回したいのだ。一緒にミズキを嘲って、嫌って、自分の楽しい気持ちを共有したいのだろう。
彼の人生は、恐らく本当にこうして誰かの人生を覗き見るくらいしか娯楽がない。それだけ不自由な身体に生まれてしまった。そこに関して、本当に煽るつもりではなく同情に値する。
だけど、これだけの力があったなら、もっと他にも別の楽しみが彼にも作れたはずだ。それをやらなかったのはルイス自身。誰も持ちえないような才能を持ちながら、それを腐らせているようで勿体ないと思う。
才能があるからって幸せになれるわけではない。それを体現してしまっていることに、彼は気付いているのだろうか。
中学時代のミズキは幼少期に比べて随分と僕が知っている姿に近づいていた。ぼんやりと空想に耽ったり、数少ない友達とは談笑をしたり、本を読んだりする。引っ込み思案で大人しくて、奇行にも走らない普通の女の子。強烈な個性と価値観をその小さな身体にしまいこんで、彼女は繰り返される毎日のルーティーンをこなし続けていた。
変わったことと言えば、彼女が絵を描くことを恥じるようになったことだ。小学校で笑われた傷が癒えなかったのだろう。それでも、彼女は自室に一人でいる時だけ絵を描く。誰にも見せないように、見つからないように、扉を閉め切って密やかに描いていた。
絵を恥じるようになった彼女は家族にすら絵を見せなくなったので、彼女が母親に褒められる機会も減った。そもそも、姉という一般的な価値観を持つライバルを前に、誰も持ちえないような感性を持ち合わせるミズキは褒められる機会があまりに少なかった。誰も持っていないものを共有するのは難しい。誰も分からないのだから。
大好きな絵を封じて、特別支援学級に入るという夢も失った彼女は明らかに暇を持て余していた。ぼんやりと遠くを眺めている時間が多い。僕はぼんやりすることが苦手なので、その遠くを見ているだけの彼女が何を考えているのか、正直全く想像が付かない。
絵の代わりに買ってきたテレビゲームに熱を上げてみたりするものの、ゲームには終わりがある。本も漫画もいずれ終わる。終わると決まって彼女はベッドの上でぼんやりと遠くを見ていた。
彼女の部屋は夜になると、ベッドの傍の窓から綺麗に月が見える。まるで絵本のイラストになりそうなほどに綺麗なその場所で、眠れないとミズキはずっと月を眺める。それはどことなく、鳥かごから出られない鳥の姿を連想させた。
一方で姉は高校に入り、吹奏楽部に所属したことで忙しそうに毎日をこなしている。大変そうだが、笑顔を絶やさない彼女は僕の目からも輝いていて、毎日の時間の使い道に悩んでいるミズキとは対照的な暮らしをしている。それがミズキにとっても居心地が悪いと感じられるのか、ミズキは姉をあまり視界に入れないようにしているように見えた。
一つ屋根の下、ミズキと姉は同じ生活をしているはずなのに、母親と姉が話す回数と、ミズキが母親と話す回数はどんどんと差を付けていく。姉が家に帰って母親と談笑している間、ミズキはすぐに部屋に戻ってしまう。
4人家族なのに、3人家族のようだ。リビングでは家族たちが団欒していて、ミズキは一人暮らしをしている感覚に近い。別に誰からもないがしろにされていないはずなのに、ミズキの居場所は日に日に狭くなって、彼女の口数は減っていった。
「何不自由ない生活なのに、なんでこんな暮らしをするんだか」
倍速で送られるミズキの人生を見ながら、ルイスが言う。
「何不自由あるだろ」
僕は架空の生き物しか兄弟はいなかった。架空なのだから、顔を合わせなくていい。自分の頭から消せばいい。だけど、実態となればそうもいかない。
隣に自分と全く違う感性を持つ兄弟がいて、兄弟と親だけが分かり合える価値観を持っていたら、どうあがいても会話には入れなくなっていく。たとえそこに、愛があったとしてもだ。
ミズキは家族から愛されているだろう。ただ一つ、難点を挙げるならば相性が悪いように思える。彼女の変わった感性を褒めてあげられる人はいない。クリエイターや芸術家で考えれば、それこそ最強の武器にさえなり得るそれを、誰も伸ばしてくれないのだ。
憧れてはいけない。口に出してはいけない。絵は恥ずかしいこと。誰にも見せられない。そうなったら、彼女の自由はどこにあるんだろうか。幼少期に自由でのびのびとしていた、彼女の長所を全て潰してしまっているような気がした。
「アリスは良い親に恵まれたって、羨ましいって思わないのかジャバウォック」
「あんまり思わないかな」
ルイスの問いかけに、僕は肩を竦めた。
「僕もミズキの立場だったら不自由する。不自由に優劣を付ける気はないよ」
見ているだけでミズキが姉にコンプレックスを抱いているのは分かる。僕が母親に抱いていた、憎しみで出来上がったコンプレックスとはまた違うもの。ミズキと姉は仲が悪いわけではないのだ。姉はむしろ、ミズキを可愛がっている。
憎み切れない相手にコンプレックスを抱くのは疲れるだろう。自分が間違っているんじゃないかと、別の意味で迷う。自己嫌悪にもなる。じわじわとミズキを蝕んでいくのだろう。
僕の話をルイスはあまり面白くなさそうに聞いていたが、一定のところまで映像を飛ばすと、再び再生ボタンを押す。
「ここからがアリスの高校時代だ」
映像に映し出されたのはブレザーを着たミズキ。彼女の前に一人の男性が立っている。中性的な顔立ちをした彼はスラッとした長身で、手足が長く、骨ばった身体をしていた。その面影はどことなく帽子屋の元の姿を彷彿とさせる。
ミズキは教室の席で座ったまま、戦慄したように硬直していた。その手元には教科書とノート。しかし、その下に挟まれた紙には何かのキャラクターが描かれていた。
「日向さんって絵を描く人だったんだ。上手だね」
優し気に微笑む彼はとても綺麗な人だった。それでもミズキは警戒心が解けないのか、絵を隠そうと震える手で教科書やノートでその紙を隠そうとする。それでも、彼はミズキの手を止めて、教科書を横にずらす。
「上手なんだから、隠す必要ないじゃん。他に描いてないの?」
「あっ、えっ、あっ…」
まるで目の前で母親を食べられた小鹿のように青い顔でガタガタに震えるミズキを見て、彼は不思議そうに首を傾げたが、何かを思いついたようにミズキの手を離した。
「わかった、俺の絵も見せるからそれで交換ってことにしようよ。いい?」
ミズキはどうしたらいいのか分からないのか返答をしない。ガタガタと震えながら、下を向いて縮こまる。しかし、彼はミズキの返答も待たずに自分の肩に下げた鞄から絵のファイルを取り出す。
ミズキの机の上に厚めのファイルがドサッと置かれる。それを見て、困惑したミズキに彼は歯を見せて爽やかに笑った。
「ほら、どれでも見せるから、日向さんの絵も見せてよ」
ミズキは視線をファイルと彼の顔の間で行ったり来たりさせるが、恐る恐るファイルの中から一枚だけ紙を引き抜く。引き抜かれたその絵は印刷されたデジタル画で、線が細くて独特な絵柄のキャラクターが描かれている。どれも高校の頃の僕の絵より上手い。
ミズキが彼の絵を見ている間に、彼もちゃっかりとミズキが描いていた絵の紙を手に取っている。しげしげとそれを眺めてから、彼は思いついたように笑った。
「やっぱ上手いじゃん。ねえ、美術部入ってくれない?」
突然の勧誘にミズキは元から丸くなっていた目をますます丸くする。脳の処理速度が追いついていないことが顔に書いてあった。ミズキはほとんど声を発していないのに、彼は話を続ける。
「うちの美術部、人数少なすぎて廃部寸前なんだよね。だから、日向さんみたいな絵が上手い子に入ってもらえるとすげー助かる。どう?」
「どうって…」
完全に萎縮してしまっているミズキはまた下を向いて視線を泳がせている。普通なら押しすぎたのではと心配しそうなものだが、彼は負けない。
「今日の放課後に見学に来てよ!俺は2年の富樫敬之。待ってるから、お願いね」
嵐のようにそう言うと彼はファイルの束を回収する。
「交換だから、この絵貰っていい?新しい絵も楽しみにしてるから」
ファイルの回収と同時に敬之はミズキの絵をそのまま持って行く。ミズキは何か言いたげに口を開けたり閉めたりするが、彼はどんどんと遠ざかっていく。
「のりピー先輩だ!何しに来てたんですかー?」
「呼び名ダッサ!後輩の中から美術部入ってくれそうな子をスカウトに来てただけだよ」
クラスメイトに呼び止められた敬之は笑いながら答えると、すぐに教室を出て行ってしまった。本当にスカウトに来ていただけなのだろう。
ミズキの手に残されたのは敬之の絵だ。彼女が本当に絵を交換したかったかはさておき、彼女はそれを眺めて考え込む。一方的に取り付けられた約束は、今日の放課後だ。
彼が去ったとほぼ同時に予鈴が鳴る。彼女は貰った敬之の絵をファイルに入れ、大事そうに机の中にしまった。
そのままミズキは授業を終え、身支度をする。教科書を鞄の中にしまおうとすると、休み時間に貰った敬之の絵がミズキの目を捉える。彼女は少し迷うようにそれを眺めてから、鞄にしまって教室を出た。
向かう先は、敬之が言っていた美術部だ。各々が部活動に向かう生徒たちにまざり、ミズキは足音を殺して廊下を歩く。人とすれ違うたびに壁に避けて道を空け、誰とも身体が触れ合わないように慎重に進んだ3階の一番北の部屋。その扉の脇の壁に背中を預けて、敬之がミズキを待っていた。
「おっ、来た来た」
彼はひらひらとミズキに手を振る。ミズキはそれに対してどうリアクションをするべきなのか迷ったように視線を泳がせたが、ペコリと頭を下げた。
「何もない部室だけど、くつろいでって。今日はブルータスのデッサンをしてたんだ」
ブルータスと言えば、美術室に一個は置いてある石膏像の名前だ。そんな名前を美術部員でもないミズキが知っているわけもなく、彼女は首を傾げながら部室へと招かれた。
部室の中には一組の男女。廃部寸前と言うだけあって敬之を含めて3人しかいない。黙々とデッサンを続ける二人とは裏腹に、敬之は饒舌な舌で話を続けた。
「うちの学校って美術に興味ある人が極端に少ないんだよね。派手な催しもないし、目立つ部活でもないけど、人数が少ないおかげで自室みたいにくつろげると思うよ。3人以上での活動記録がないと廃部だから、実質4人いないと休みが出ると終わりなんだ」
そう言って、彼は部屋の隅に固められたキャンバススタンドを手に取って、ミズキの前へと持ってくる。
「どこで描きたい?正面?側面?あおり?ふかん?」
「あっ、えっと…」
明らかに見学のつもりで来ていた様子のミズキに敬之は容赦なくキャンバスの位置を尋ねる。ブルータスは正面に人気が集中しているのか、すでに遠近で先客がいる。
敬之の話し方はなかなかの押しの強い。すっかり引っ込み思案に育ってしまったミズキが断れるわけもなく、彼女は掠れた声を絞り出す。
「じゃあ…側面描きます…」
「おっけー」
敬之は軽快な返事を返すと、ミズキの指定通りにブルータスの横顔が見えるあたりにキャンバススタンドを置く。どうしたいいのか分からずに棒立ちするミズキに対して、彼はてきぱきとスツールを運び、画用紙と水張されていないキャンバスを手に戻ってくる。
「水張は分かる?画用紙に水を張って伸ばして、端っこをキャンバスに貼り付けるの。キャンバスの細かい位置調整は自分でどうぞ。粘着テープあるから、次回からここが自分の席って分かるようにテープで床にマークつけていいよ」
相変わらずミズキは何も話していないのに、彼はよく喋る。小学校でミズキが友達になっていた男の子とは真逆のような存在だった。
ミズキは表情を変えないが、明らかにうろたえていた。もじもじと手をいじり、下を向く彼女は小さく首を横に振った。
「み、水張、知りません…」
「おっけー、じゃあ教えるね」
敬之はフットワークの軽い人だった。ミズキが返事をしなくても、目を見なくても、彼はスラスラとデッサン前の手順を説明する。そこらへんの教師より説明は丁寧だし、何より彼の巧みな話術は人を惹きつけるものがあった。
ミズキがようやく画用紙の張られたキャンバスを作り上げると、彼は自分の持ち場に戻る…と、思いきやキャンバススタンドをミズキのすぐ隣へと持って来る。わざわざ人が少ないブルータスの側面をミズキは選んだのに、彼は結構な至近距離に座った。
慣れた手つきで彼は自分のキャンバスも水張を終えると、スタンドにそれを立てて鉛筆を削りだした。
「いやー日向さんが来てくれて本当に良かった!結構スカウトに行ったんだけど、みんな部活に入ってる子ばっかりでさ。後輩から日向って名前の帰宅部の子がいるって聞いたから行ってみたんだけど、会いに行って正解だった」
別の学年なのに何故ミズキの名前を知っているのかと思ったが、どうやら敬之はスカウトする後輩の一人としてすでに彼女をピックアップしていたようだ。よく喋る彼の隣でミズキは一応、鉛筆を手には持つものの、相変わらず人前で絵を描くことに抵抗があるのかキャンバスは真っ白のままだ。
もう入部が勝手に決まってしまっているような空気。人数はミズキを含めても休みが2人出たら廃部に王手という状況だ。断るにもかなり断りづらいし、入部したらしたで休みはなかなか取れなさそうだ。
敬之はそんなこともつゆ知らず、自分のキャンバスに鉛筆を走らせる。熱心にキャンバスに向かう敬之の綺麗な横顔をしばらく横目でミズキは見ていたが、観念したように彼女も絵を描き始めた。
しばらく静かに鉛筆が画用紙を擦る音しか聞こえない時間が続く。ミズキがブルータスの輪郭の位置を定めたあたりになって、変化は訪れる。
敬之が咳をし始める。ケホケホと口元を押さえながら小さく咳き込んでいたが、次第にその頻度が上がってくる。ミズキはその様子が気になってか、何も言わなかったが横目で見ていた。
敬之が鉛筆を置き、傍に置いていた鞄を開く。その鞄の中から出てきたのは、青と銀色をしたL字型の物体。喘息の吸引器だった。
彼は銀色の部分を口にくわえて息を吸い込みながら、青ボタンを親指で押し込む。コシュッという聞きなれない音と共に薬が排出され、それが彼の喉を通過するのが喉ぼとけの位置が上下するので分かった。
ミズキはその様子を見つめる。彼を見つめるその目はどこか、幼少期に似ていた。
「あ、ごめんね。うるさかった?喘息持ちなんだ」
ミズキの視線に気付いて、敬之が困ったように笑った。それにミズキは我に返ったように首を横に振った。
「あっ、いえ、大丈夫でしたか?」
「うん、酷い発作とかではないから、これくらいなら薬吸えば収まるよ。ありがとうね」
柔らかく微笑む彼は窓から差し込む夕日に照らされて、絵になりそうだった。その様子を捉えたミズキの目には、希望のような光が差し込んでいるように見えた。
「心理学的に話術に長け、共感性が乏しい人間ほど学校ではカーストが上がりやすいと証明されていることをジャバウォックは知っているかい?」
気付くとソファにあぐらをかいて座っていたルイスが言う。彼の手元には心理学の本。何でも生み出せる彼の所持品は、もしかすると夢を共有している誰かの知識なのかもしれない。
「君は私に共感性がないと言った。つまり、この富樫敬之という男がどういう実態なのか、薄々分かるだろう?」
ギザギザの歯を見せて彼はキシキシと歯を鳴らす。
「いわゆる、私と同族の人間だ」
ルイスと同族と聞くと、もはや嫌な予感しかしない。
話し上手、容姿端麗。恐らくだが、ミズキの美的感覚で言えば、病弱もステータスだろう。ミズキが彼を気にしだすまでそう時間はかからず、彼女は足げく美術室へと通うようになっていった。
敬之は随分と人気があるようだったが、何故か女の影はない。その上、ミズキには随分とご執心のようで、彼の方から休み時間を縫ってまでミズキに会いにくる場面すらある。
彼がどうしてここまで彼女に執着するのか、僕にはすぐには理解できなかった。ミズキは無口だし、僕と出会って話した時よりも一層表情が動かない。絵は確かに上手で方はあったが、絵が描けて話し上手な女性なら探せば他にもいるだろう。
「日向さんは本当に絵が上手いね。見つけてくるアングルにもセンスがあるし、デッサンだけど個性を感じる」
「いや、そんなことは…見て写してるだけですし…」
部員たちがすでにはけてしまった部室に残って、敬之がキャンバスに描かれたミズキの絵を見て褒める。人からあまり褒められる機会がなかったミズキはもじもじと視線を泳がせてはいたが、恐らく満更でもないのだろう。前のように逃げようとすることはなく、部活終了後だと言うのに、わざわざ敬之個人がやっている品評会のような何かに付き合っている。
かく言う敬之はさすが学年を一つ重ねているだけあって、ミズキよりもさらに上手い。繊細なタッチで描かれるそれは、同じデッサンでも儚さがある。
「富樫さんの方がもっと上手だと思います」
「そんなことない!日向さんには敵わないよ」
人の良さそうな笑みで彼は顔の前で手を振ると、自分のキャンバスを持ち上げて、作品棚へとしまっていく。それに続くようにミズキもキャンバスを棚にしまうと、敬之はふと思いついたように彼女の顔を見た。
「そうだ、この後もし暇だったら、俺んち来ない?」
高校生で、一個上の学年の男性から自宅へのお誘いだ。一瞬の沈黙が訪れ、敬之は慌てて両手を振ってフォローを入れる。
「あ!家に親がちゃんといるから!変な意味じゃなくて、一緒にもっと絵を見せあったりしたいし…あ、そう!俺、マジック出来るんだよ!見てかない?」
しばらくの沈黙を経てからミズキの警戒心が少し解けたのか、彼女の目がじわじわと大きくなる。興味に溢れたその目で彼女は小さく頷いた。
「…見たいです」
「よし、決まり!一緒に帰ろう!」
そう言うと、彼はミズキの手を取る。急に握られたその手にミズキは身体を強張らせたが、それでも離そうとしない彼の手をそのままに歩き出した。
随分と人が減った夕暮れ、敬之がミズキの手を繋いで歩いていることに気付く人はいない。いくら敬之が人気者だろうと、一部の界隈の話。彼らのことを知っている人たちとすれ違うことはなかったようだ。
ミズキと敬之は電車に乗り、敬之の家まで辿りつく。敬之の家はミズキの家とは逆方向に位置するようで、彼女は見慣れない駅や道を物珍しそうに見ながら歩いていた。
敬之の家は生垣に囲まれた年季の入った大きな日本家屋だった。外門をくぐり、小さな庭を抜けて彼は横スライドの扉を開く。
「ただいまー」
「あら、おかえり!今日は早かったのね」
玄関にチラと顔をのぞかせた母親はちょうどさっき帰ってきたところだったのか、まだスーツを着ている。そんな彼女はすぐに敬之の背後にいるミズキに気付いて目を丸くした。
「やだ、彼女?」
「後輩!ちょっと一緒に遊ぼうって」
「そうなの」
敬之の母親から送られる視線にミズキは慌てて頭を下げる。すると、彼女は少しだけ笑って手をひらひらと振った。
「なんのお構いも出来ないけど、ごゆっくりどうぞー」
「あ、ありがとうございます…」
敬之の母親の声はハキハキとしていて、よく通る声をした敬之の血筋を感じさせる。いかにもキャリアウーマンという雰囲気が漂う彼女に、ミズキはやや萎縮したようだったが、敬之が二階の自室に上がるのに続いて小動物のように小走りでついて行った。
敬之が自室の扉を開く。家の中はリフォームされたことがあるのか、家の外から見える古き良き日本家屋のイメージとは違い、妙に西洋感があった。まだ汚れのすくない白い壁と明るいフローリングが広がる敬之の部屋は男性にしてはかなり整頓が行き届いていて、綺麗に片付けられていた。
「家、逆方向なのに来てくれてありがとね。適当に座って。椅子でもベッドでもいいよ」
敬之は勉強机のすぐ下の鞄を放ると、ブレザーの上だけ脱ぐ。そのまま何かを探しているのか、彼は本棚の前に屈んだ。本棚の下に丁寧に並べられた縦置きの箱を漁る彼の隣で、ミズキは手持無沙汰に周囲を見回し、遠慮がちに浅くベッドに腰かけた。
「お邪魔します…」
「そんなかしこまらなくていいのに!」
敬之は箱の中身を手に、デスクチェアに座る。彼の手元にあるのはトランプだ。それらをトランプであることを証明するように箱の中から取り出して、ミズキに広げて見せる。
その中のジョーカーを二枚、彼はトランプが入っている山札から引っ張りだす。ジョーカーには可愛らしくデフォルメされた白兎の絵が描かれている。
「ここまで来てもらったんだし、さっそくこの兎さんトランプでマジックをお披露目しようかな!今日は兎さんは使わないけどね」
そう言って彼はせっかく取り出した兎のジョーカーだけを箱にしまい、残ったカードだけを手元に残す。緊張でガチガチになっているミズキも、興味はあるのか彼の手元を熱心に見つめている。
「じゃあ、兎さんがいないこの山札から一枚引くと…」
そう言ってカードをめくった彼の手元には、先ほど箱にしまったはずの兎のジョーカーが出てくる。驚いて何度も瞬きをするミズキに、敬之は苦笑いしながらそのカードを箱に戻した。
「いや、今日は兎さんは使わないんだよね。別のマジックをしようと思っているんだけどなあ…じゃあ、日向さんカード引いてみてもらっていい?」
そう言いながら、敬之は裏にしたトランプの山札を広げてミズキへと差し出す。それにミズキは手を伸ばし、迷うようにカードを選ぶ。山札の真ん中より少し左のあたりで彼女がカードを引く。引いたそのカードは兎のジョーカーだった。
すでに敬之のマジックは始まってるようだ。緊張で無表情だったミズキの顔に笑顔が浮かぶ。小さく吹き出す彼女の笑い声に敬之も笑いながら、ミズキからカードを受け取った。
「困ったな。箱にしまってもしまっても兎さんが出てきてしまう。ちょっと俺の枕の下にしまおうか」
そう言って彼はベッドに兎のジョーカーを置き、枕で上から蓋をした。
「じゃあ、気を取り直してマジックを始めようか」
そう言った彼のYシャツの胸ポケットにはいつの間にかカードがある。
「あれ、こんなところにカードが」
敬之は胸ポケットのカードを手に取る。彼がそれを表面にして見せると、そこにはまた兎のジョーカーがいた。ミズキはそれに頬を高揚させて拍手を送った。
高校生でこんな特技を持っている子供はそういない。彼が見せたそれは、ミズキの目には魔法のように映っただろう。ミズキが嬉しそうに笑っている。幼少期の時に特別支援学級の子供と遊んでいた時のように、彼女は無邪気に惜しみない拍手を送っていた。
「以上、どこまでもついてくる兎でした」
敬之はミズキの拍手を一身に受けながら、トランプを箱にしまった。
彼のマジックはミズキの警戒心を解くのに大きな役割を果たした。今までの中でも一番和やかな空気の中で彼らはマジックの話や、絵の話をした。ずっとミズキが自由に話せなかった話題が話せる相手がいて、彼女のことを目いっぱい褒めてくれる。器用で話し上手な先輩は、僕から見ても魅力的な人物だった。
彼らは夜が更けるまで趣味の話に花を咲かせ、夕飯時になってからミズキは彼の部屋の壁に掛けられた針時計を見て慌てて立ち上がった。
「あっ、いけない!帰らなきゃ」
彼女はスマートホンを取り出して、母親に今まで先輩の家で遊んでいた旨をメッセージにして打ち込んだ。敬之も彼女の様子を見て初めて時間を見たようで、すぐに席から立ち上がった。
「ごめん、遅くまで話し込んじゃって…良かったら送るよ。遅いから、夜は危ないでしょ」
「えっ、でも…」
「いいよいいよ、時間気付けなかった俺も悪いし」
脱いであったブレザーを羽織り、彼は自室の扉を開ける。何かと押しの強い敬之だが、こういう場面だと男前だ。ミズキも急いで立ち上がると、彼に続いて玄関へと出た。
「後輩送ってくる!」
「はーい、気を付けてねー」
玄関から敬之がリビングに声をかけると、先ほどの母親と同じ声がした。見送る気はないのか、彼女は声だけで返事を返した。
「お、お邪魔しました…」
おずおずとミズキも声をかけるが、そのか細い声が敬之の母親に伝わったかまでは分からない。
月が登った夜道、何も言わずに敬之がミズキの手を握る。彼の家に行く途中までは決して手を握り返そうとはしなかったミズキだが、この時ばかりはじわじわと手を握り返した。
手を繋いで駅まで向かう。あと少しで駅が見えるというところで、不意に敬之が立ち止まった。それにつられてミズキが立ち止まると、敬之はミズキの顔を見て柔らかく微笑んだ。
「ねえ、俺たち付き合わない?」
「えっ…」
突然の提案にミズキが硬直する。次第に彼女の顔が赤くなり、返答に困りつつも断り文句もすぐ出てこない。
敬之の口調は明らかにミズキが自分に対して好意を抱いていることを確信したものだった。自信があって、なおかつスマートなその告白は断られることを想定などしていない。ここまで来て、彼は全くミズキの手を離さないのだから。
「ダメかな?付き合ってる人いる?」
ミズキの顔を覗き込んで、敬之は悪戯に笑う。整った顔は月の下でも相変わらず絵のようだった。
「いや、そういうわけじゃ…」
「本当?良かった!これからもよろしくね」
口ごもるミズキに、敬之は勝手に交際を成立させる。かなり強引だ。強引ではあるが、確かにミズキの反応は満更でもないのは第三者の僕が見ていても分かる。彼の自信の源はそのミズキの反応から来ているのは間違いないだろう。
敬之は繋いでいた手を一度ほどいて、彼女の手の平に滑らせるように半回転させて指を絡めた。恋人同士がやるそれにミズキはただ顔を真っ赤にして下を向いていた。
「…良かったのか?」
僕はその様子を見ながら腕を組む。ルイスは隣で僕を見て笑っていた。
「面白くない?」
「いや、別に…ミズキが幸せならそれでいいけど」
まあ、ちょっと面白くない気持ちもある。面白くない気持ちもあるにはあるが…僕とミズキは付き合っているわけではない。僕がミズキを好きなだけであって、この記憶を見る限り、ミズキが現実に残してきた彼氏は彼のことだろう。僕がとやかく口を出す権利はない。
口を曲げて足踏みをしている僕をルイスは腹ばいになって眺めながら、コーラのストローを口に加えた。ズズズッと飲み物が底をつき、微量の液体が吸い込まれる音が響く。
「このまま終われば確かに少女漫画だろう。でも、現実はそう甘くない。君も知っているだろう。この世に奇跡も魔法もなければ、神もいない」
ミズキが見たどこまでもついてくる白兎の魔法が、彼女に幸せをもたらしてくれるものであれば良かった。でも、この記憶は全てミズキが忘れたがっていた記憶なのだ。
ミズキは新しく出来た恋人と手を繋いで駅へと向かい、改札口で彼と別れを告げた。
電車の中でまどろむ彼女はどことなく幸せそうな表情で目を閉じた。
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