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14,初めての友達
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翌日はとても天気がよかったので、勉強が一区切りつくと庭に咲き誇る花の香りを嗅いで癒やされていた。
公爵家の庭園の一部は小さな森のようだ。
王都にありながらもこんな広大な敷地を持っている公爵邸すごい。
この花、とてもいい香り。精油にしたらどんな香りがするのかしら。今嗅いでいる花は先日山岳地帯から摘んできた花で蘭の一種である。
あぁ癒やされる。ずっと嗅いでいたいわ。
そんなことを思いながら一人癒やしの時間過ごしていると人の話し声が近づいてくる。
「エリィ!こんなところにいたんだね。」
そう声をかけてきたのはクリスお兄様だった。
とその後ろに一人の見知らぬ少年。
私と同じくらいかしら?
まだ子供なのに美形だわ。赤髪に意志の強そうな黒い瞳。少し吊り目のその子はポカンとしてこちらを見ている。
「クリスお兄様!」
「何してたの?」
「ちょっと花を愛でていましたの。」
「エリィはかわいいね。一緒にお茶をしない?」
家族はなにかにつけて可愛いと言ってくれるが、もう挨拶みたいなものなのでスルーしている。
「ええ、もちろん。」
「エリィ、こっちは昨日話していたカイルだよ。一緒に騎士団の稽古をしてるんだ。カイル、この天使は妹のエリィだよ。本当にかわいいでしょ?でもいつもは天使だと思ってたけど、今日は花の妖精みたいだよ!」
昨日話していたのはこのことだったのか、と瞬時に理解しカイル様に挨拶をする。
「カイル様、はじめまして。
エリナリーゼ・リフレインです。宜しくお願いいたします。」
と先日完璧と褒められたカーテシーを笑顔で披露する。
「カイル・ロナスターです。よろしく。」
この世界で初めての友達との出会いだった。
◆
(カイル目線)
侯爵家の次男である俺は、騎士団に入るべく幼い頃から騎士科のある王立学園へ通っている。
公爵家のクリスとは年も近いので幼い頃から仲が良く、クリスの父が団長をしている騎士団では一緒に稽古をすることもある。
立場の同じ二人は普段から行動を共にすることも多かった。
そんな中、先日騎士団長に呼び出された。
何かと思っていたら休日に稽古をつけてやる、と屋敷へ招待してくれたのだ。
リフレイン公爵家へ招待されるなんて、とても光栄な事だ。
しかも騎士団長直々に稽古をつけてもらえるなんて滅多にない有難い機会である。
気を引き締めながら騎士団長の屋敷に向かう。
屋敷に到着すると、すでに団長とクリスは訓練場で稽古をつけているようだった。
団長が親ってずるいな。俺ももっと稽古したい。
そう思いながら合流する。
「リフレイン団長!本日はお招きいただきありがとうございます!」
「おぉよく来たな」
挨拶をすると、やたらと上機嫌な団長に出迎えられた。
団長は男の俺でさえ惚れ惚れするような美形だが、いつも無表情で厳しい稽古をつける、今まで笑った顔なんて見たことがなかったので驚きを隠せない。
「いえ、休日に団長に稽古つけていただけるなんて光栄です!今日はよろしくお願いします!!」
「じゃあ早速始めようか。」
「はいっ!!」
そんな上機嫌の団長にみっちり一時間程稽古をつけてもらった後、クリスがお茶でもしないかと誘ってくる。
「そういえば、クリスとゆっくりお茶なんかしたことなかったな。」
「確かに、まぁ男同士だとそんなことはしないだろ」
そんな話をしながら、森?の方へ向かっている。
(森だろ?ここ。なぜこっちに来たんだ?)
少し不審に思い、
「リフレイン家には森があるのか?」
と聞いてみる。
「ははっ、本当森みたいだよね」
なんだろう、クリスの意図が全く読めない。
「こんなところでお茶するのか?」
「いや、まさか!ちょっと人を探しに来たんだよ」
ここまで来た理由はわかったが、こんなところまで態々誰を探しているんだ?
少し歩いたところでクリスが誰かに話しかける。
「エリィ!こんなところにいたんだね。」
そう言うクリスの声はとても嬉しそうだ。基本的にクリスも団長同様いつも無表情である。俺でさえ笑った顔なんて滅多に見たことがない。
(そんな声初めて聞いたぞ?)
そう思いつつ、声を掛けた方を見てみると、花の匂いを嗅いでいる少女がいた。ウェーブがかった絹糸のような金髪の少女の肌は陶器のように白く、薄いピンクのふわふわしたワンピースを着たその姿はまるで花の妖精のようだった。
同じ人種とは思えないほど美しく整っている。
自分も美形と言われているがその比ではない程、圧倒的な存在感だった。
「クリスお兄様!」
と発した声は鈴が鳴るような声だった。
「何してたの?」
「ちょっと花を愛でていましたの。」
(花を愛でていたって!花の妖精なのか?!)
「エリィはかわいいね。一緒にお茶をしない?」
「ええ、もちろん。」
「エリィ、こちらは昨日話していたカイルだよ。一緒に騎士団の稽古をしてるんだ。今日は父上に稽古をつけてもらっていたんだよ。
カイル、この天使は妹のエリィだよ。本当に可愛いでしょ?
エリィ、いつもは天使だと思ってたけど、今日は花の妖精みたいだよ!」
(いやほんとに。お世辞でも何でもなく俺もそう思う。)
「カイル様、はじめまして。エリナリーゼ・リフレインです。宜しくお願いいたします。」
花のような笑顔で見事な挨拶をされた。
(やばい、可愛すぎる。)
「カイル・ロナスターです。よろしく。」
俺はこう言うのが精一杯だった。
公爵家の庭園の一部は小さな森のようだ。
王都にありながらもこんな広大な敷地を持っている公爵邸すごい。
この花、とてもいい香り。精油にしたらどんな香りがするのかしら。今嗅いでいる花は先日山岳地帯から摘んできた花で蘭の一種である。
あぁ癒やされる。ずっと嗅いでいたいわ。
そんなことを思いながら一人癒やしの時間過ごしていると人の話し声が近づいてくる。
「エリィ!こんなところにいたんだね。」
そう声をかけてきたのはクリスお兄様だった。
とその後ろに一人の見知らぬ少年。
私と同じくらいかしら?
まだ子供なのに美形だわ。赤髪に意志の強そうな黒い瞳。少し吊り目のその子はポカンとしてこちらを見ている。
「クリスお兄様!」
「何してたの?」
「ちょっと花を愛でていましたの。」
「エリィはかわいいね。一緒にお茶をしない?」
家族はなにかにつけて可愛いと言ってくれるが、もう挨拶みたいなものなのでスルーしている。
「ええ、もちろん。」
「エリィ、こっちは昨日話していたカイルだよ。一緒に騎士団の稽古をしてるんだ。カイル、この天使は妹のエリィだよ。本当にかわいいでしょ?でもいつもは天使だと思ってたけど、今日は花の妖精みたいだよ!」
昨日話していたのはこのことだったのか、と瞬時に理解しカイル様に挨拶をする。
「カイル様、はじめまして。
エリナリーゼ・リフレインです。宜しくお願いいたします。」
と先日完璧と褒められたカーテシーを笑顔で披露する。
「カイル・ロナスターです。よろしく。」
この世界で初めての友達との出会いだった。
◆
(カイル目線)
侯爵家の次男である俺は、騎士団に入るべく幼い頃から騎士科のある王立学園へ通っている。
公爵家のクリスとは年も近いので幼い頃から仲が良く、クリスの父が団長をしている騎士団では一緒に稽古をすることもある。
立場の同じ二人は普段から行動を共にすることも多かった。
そんな中、先日騎士団長に呼び出された。
何かと思っていたら休日に稽古をつけてやる、と屋敷へ招待してくれたのだ。
リフレイン公爵家へ招待されるなんて、とても光栄な事だ。
しかも騎士団長直々に稽古をつけてもらえるなんて滅多にない有難い機会である。
気を引き締めながら騎士団長の屋敷に向かう。
屋敷に到着すると、すでに団長とクリスは訓練場で稽古をつけているようだった。
団長が親ってずるいな。俺ももっと稽古したい。
そう思いながら合流する。
「リフレイン団長!本日はお招きいただきありがとうございます!」
「おぉよく来たな」
挨拶をすると、やたらと上機嫌な団長に出迎えられた。
団長は男の俺でさえ惚れ惚れするような美形だが、いつも無表情で厳しい稽古をつける、今まで笑った顔なんて見たことがなかったので驚きを隠せない。
「いえ、休日に団長に稽古つけていただけるなんて光栄です!今日はよろしくお願いします!!」
「じゃあ早速始めようか。」
「はいっ!!」
そんな上機嫌の団長にみっちり一時間程稽古をつけてもらった後、クリスがお茶でもしないかと誘ってくる。
「そういえば、クリスとゆっくりお茶なんかしたことなかったな。」
「確かに、まぁ男同士だとそんなことはしないだろ」
そんな話をしながら、森?の方へ向かっている。
(森だろ?ここ。なぜこっちに来たんだ?)
少し不審に思い、
「リフレイン家には森があるのか?」
と聞いてみる。
「ははっ、本当森みたいだよね」
なんだろう、クリスの意図が全く読めない。
「こんなところでお茶するのか?」
「いや、まさか!ちょっと人を探しに来たんだよ」
ここまで来た理由はわかったが、こんなところまで態々誰を探しているんだ?
少し歩いたところでクリスが誰かに話しかける。
「エリィ!こんなところにいたんだね。」
そう言うクリスの声はとても嬉しそうだ。基本的にクリスも団長同様いつも無表情である。俺でさえ笑った顔なんて滅多に見たことがない。
(そんな声初めて聞いたぞ?)
そう思いつつ、声を掛けた方を見てみると、花の匂いを嗅いでいる少女がいた。ウェーブがかった絹糸のような金髪の少女の肌は陶器のように白く、薄いピンクのふわふわしたワンピースを着たその姿はまるで花の妖精のようだった。
同じ人種とは思えないほど美しく整っている。
自分も美形と言われているがその比ではない程、圧倒的な存在感だった。
「クリスお兄様!」
と発した声は鈴が鳴るような声だった。
「何してたの?」
「ちょっと花を愛でていましたの。」
(花を愛でていたって!花の妖精なのか?!)
「エリィはかわいいね。一緒にお茶をしない?」
「ええ、もちろん。」
「エリィ、こちらは昨日話していたカイルだよ。一緒に騎士団の稽古をしてるんだ。今日は父上に稽古をつけてもらっていたんだよ。
カイル、この天使は妹のエリィだよ。本当に可愛いでしょ?
エリィ、いつもは天使だと思ってたけど、今日は花の妖精みたいだよ!」
(いやほんとに。お世辞でも何でもなく俺もそう思う。)
「カイル様、はじめまして。エリナリーゼ・リフレインです。宜しくお願いいたします。」
花のような笑顔で見事な挨拶をされた。
(やばい、可愛すぎる。)
「カイル・ロナスターです。よろしく。」
俺はこう言うのが精一杯だった。
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