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選択の時偏

第2話

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叫んでもこの変態は、私を放そうとしないので仕方なく、動く足を駆使して、男の急所に蹴りを入れた。
さすがの変態も、その手を放し正気を取り戻したようだ。
気を取り直して私は男に質問をした。
「あなたは誰だ、どうして私をさらう?」
その言葉を聞いた男は、心底傷ついたというリアクションをして
「俺は止めたけど上のジジイどもが早くしろと急かすから下っ端連中が暴走したんだよ!」
必死にしゃべるので、
「意味が分からない最初から説明しろ」
私は言った。
男の話によると、この男はとある一族の当主の息子で、私はこの男の娘で、母が私に父親は死んだと聞かせたのは、父が母の怒りを買って、離婚同然に別居し、母の中で父は死んだものと思われているからだと。
私がさらわれた理由は、父の親であり私の祖父が危篤で危ないが、当主候補がいない状態だったので、息子の娘である私に白羽の矢を立てて、問答無用でさらわれたというわけらしかった。
そして私をさらった黒ずくめの男たちは、父親の一族に雇われた下っ端で、とりあえず連れてこいと指示され、問答無用で誘拐するようになってしまったそうだ。
はっきりいて最低だ。
私は普通に暮らしていたのに、誘拐まがいのことをされ、いきなりどっかの一族の当主になれと言われても、普通にできるわけがない。
しかし父の言い分はそれだけでは終わらず、なんと当主になる予定だったのは、父であったが父が嫌だと拒否したから、このような手にでたという。
巻き込まれたこちらからすれば、ふざけんなという理由を聞かされた。
母の怒りを買うの当然かもしれない。
だがこうなってしまった以上、父に文句を言っているままではいけないようだ。
一族としては是が非でも私に当主になってほしいようである。本当に勝手である。
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