「史上まれにみる美少女の日常」

綾羽 ミカ

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第6話 莉菜子、ナンパ男にキレる巻

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「ねえ、君めっちゃ可愛いね! どこ行くの?」

「うわ、またかよ……」

鹿取莉菜子は、溜息混じりに振り向いた。

時刻は夕方6時過ぎ。繁華街の駅前は、仕事帰りのサラリーマンと買い物客でごった返している。そんな中、莉菜子は何の気なしに歩いていただけだったのに、またもや男に声をかけられた。

茶髪の男、20代前半、ストリート系の服装。チャラついた笑顔を浮かべながら、スマホを片手に近づいてくる。

「てか、LINEやってる? 交換しない?」

(うっざ……)

莉菜子は内心舌打ちした。

ナンパされるのは日常茶飯事だった。普通の女子なら、「可愛いって言われた♡」とか「モテる証拠!」なんて喜ぶかもしれない。でも、莉菜子にとってはただの 邪魔 でしかない。

こっちは単にスーパーに行くだけなのに、毎回こんな風に声をかけられる。そのたびに適当にあしらうのも面倒くさい。

「ごめん、急いでるから」

「えー、そんな冷たくしないでよ! ちょっとだけ話そ?」

「いや、無理だから」

そう言って歩き出そうとした瞬間、男が腕を掴んできた。

「おいおい、そんな怖い顔しないでさ~」

莉菜子の中で、何かがプツンと切れた。

「はぁ?」

彼女は男の手を振り払い、睨みつけた。

「なに、さっきからしつこいんだけど?」

「いやいや、ちょっとくらいいいじゃん?」

「よくねーよ」

バチンッ!!!

男のスマホが地面に落ちた。

莉菜子は思いっきり男の腕を叩き、その衝撃でスマホが滑り落ちたのだ。

「お、おい! なにすんだよ!」

「それこっちのセリフな。勝手に触んないでくれる?」

男は一瞬キレそうになったが、莉菜子の目を見て怯んだ。

(……またか)

莉菜子は、こういう時の男の反応を知っていた。

最初は 「可愛いからナンパしよ」 みたいな軽いノリ。
でも、いざ反撃されると、急に怖気づく。

(チョロすぎんだろ)

男はスマホを拾い、少し離れたところからブツブツ文句を言いながら去っていった。

そのまま何事もなかったように、莉菜子はスーパーへ向かった。

しかし――

「ちょっと、さっきのやつ何?」

後ろから別の声がした。

(はぁ? まだ続くの?)

振り返ると、今度は別の男が立っていた。

年齢は30代くらい、黒いジャケットを羽織ったスーツ姿。さっきの茶髪のチャラ男よりはまともに見えるが、その目つきが怪しい。

「今の奴、ナンパ?」

「そうだけど?」

「へぇ、大変だねぇ。てか君、ほんとに可愛いね」

(……うわ、またか)

莉菜子は一瞬で悟った。

こいつもナンパだ。

「俺はさっきの奴とは違うから、安心していいよ?」

「は?」

「いや、君みたいな子が一人で歩いてたら危ないでしょ? さっきのナンパ男とか、本気で怖かったんじゃない?」

「……いや、別に」

「まぁまぁ、俺が奢るからさ、ちょっとお茶でも――」

「は?」

莉菜子は、スーツ男を真顔で見つめた。

「いやいや、お前何なの?」

「え?」

「さっきのナンパ男と同じじゃん。『俺は違う』とか言ってるけど、やってること 同じ だから」

スーツ男の顔が少し引きつる。

「え、いや、俺は別にナンパじゃなくて――」

「じゃあ何? おっさんが女子高生に急に話しかけて、奢るからお茶行こうって言うのがナンパじゃなかったら何なの?」

「……」

「正義の味方? 私を守るつもり? きっしょ」

スーツ男は一瞬で顔を真っ赤にした。

「な、なんだよ、お前性格悪っ!」

「は? ナンパしてる時点でクソなのに、性格良い女が対応してくれると思ってんの? 甘すぎ」

莉菜子の言葉が完全に刺さったのか、スーツ男は何か言いたそうに口を開いたが、結局何も言えずに去っていった。

莉菜子は心の中で 「また勝ってしまった」 とつぶやいた。

スーパーに入り、半額シールの貼られた弁当を手に取る。

「……はぁ、ほんとウザ」

日常がこれではたまったものじゃない。

「美少女」って、得なのか損なのか、わからなくなる時がある。

(ま、結局こういうやつらって、見た目でしか人を見てないんだよね)

莉菜子は適当に弁当をカゴに入れ、レジへ向かった。

その日、ナンパを撃退した数――3人。

また自己ベストを更新してしまった。
【続く】
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