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第8話 莉菜子、乃木坂46のオーディションを受けようか迷う巻
しおりを挟む「……乃木坂46の新メンバーオーディション開催決定!」
莉菜子は、スマホ画面をスクロールしながら、ふと足を止めた。
駅のホームのベンチに座り、コンビニのアイスカフェラテを片手に持つ。画面に映るのは、乃木坂46の公式サイト。
(……乃木坂ねぇ)
莉菜子はため息をつきながら、じっと募集要項を読んだ。
『経験不問・歌やダンスが未経験でもOK!』
『全国どこからでも応募可能!』
『あなたの夢、叶えませんか?』
(……いや、これ、私受かったりしない?)
そんな考えが一瞬頭をよぎる。
「私って、アイドルになれるんじゃね?」
乃木坂のメンバーはみんな可愛い。でも、私のほうが可愛いんじゃね? と思うこともある。
だって、私は「史上まれにみる美少女」だから。
毎日ナンパされるし、スカウトもされるし、歩いているだけで男が振り返る。 そんな女が乃木坂に入ったら、無双じゃね?
莉菜子は、乃木坂のセンターが並んだ画像を眺めながら、心の中で比較してみた。
「……うん、普通にいけるわ」
オーディションに受かったら、華やかな芸能界。
貧乏な団地暮らしとはおさらばして、毎日豪華な衣装を着て、テレビに出て、雑誌の表紙を飾る。
「なんか、夢あるな……」
「でもさぁ……」
莉菜子はアイスカフェラテを一口飲んだ。
(いや、アイドルって大変じゃね?)
乃木坂のメンバーは可愛いけど、実際はハードなスケジュール。レッスン、握手会、テレビ出演、SNS対応……。
さらに、「清楚キャラ」 を求められる。
(……無理だわ)
莉菜子は、自分の性格をよく知っている。
「性格が悪い」のではない。
「性格が良くない」 のだ。
人の悪口は言わないけど、心の中では毒づく。
嫉妬しないふりをするけど、誰かがチヤホヤされているとムカつく。
怒らないふりをするけど、実はめっちゃ短気。
こんな奴がアイドルになって大丈夫なのか?
「それに、私、恋愛できなくなるじゃん」
乃木坂に入るってことは、恋愛禁止ルールがある。
正直、アイドルと付き合いたいと思う男は山ほどいるだろうし、芸能界に入れば、 金持ちのイケメン俳優とか、超ハイスペックな男と付き合える可能性もある。
でも、スキャンダルになったら即終了。
(いや、つまんなくね?)
美少女であることの最大のメリットは、男を選べること なのに、アイドルになったらそれが封じられる。
莉菜子はスマホ画面をスワイプしながら、少し考え込んだ。
(芸能界に入っても、結局は男と遊べないってことか……)
(うーん、それは微妙)
「でも、私がセンターになったらどうなる?」
莉菜子は、ふと想像した。
乃木坂のセンターに立ち、スポットライトを浴びる自分。
観客が名前を叫び、雑誌やテレビで「史上最高の美少女」と騒がれる。
たぶん、嫉妬もすごいだろう。
女からの 「調子に乗ってる」「性格悪そう」「絶対裏では腹黒い」 みたいな叩きは確実。
でも、それもまた「トップに立つ者の宿命」ってやつかもしれない。
「……まぁ、それくらいなら耐えられるか」
莉菜子はポツリと呟いた。
(だって、私は最初から嫌われるのに慣れてるし)
「……どうする?」
莉菜子はスマホの応募フォームを開いた。
名前、生年月日、身長、趣味、特技……。
(応募しちゃおうかな)
でも、本当に受かったらどうなる?
今の貧乏生活とは一気におさらばできる。
母親を見返すこともできる。
学校の同級生たちを驚かせることもできる。
(でも……)
莉菜子は、スマホを閉じた。
「……まぁ、いっか」
「結局、私は自由が好き」
乃木坂に入れば、確かに華やかな世界が待っている。
でも、莉菜子は 「人の指図を受けるのが嫌い」 だった。
アイドルになれば、会社やマネージャーに縛られる。
ファンの期待に応えなきゃいけない。
恋愛も制限される。
(うん、それ、絶対ストレス)
莉菜子は、アイスカフェラテを飲み干した。
「やっぱり、やめとこ」
アイドルより、もっと自由に美少女を利用できる道があるはず。
モデル? インフルエンサー? それとも もっとおいしい仕事?
莉菜子は立ち上がり、歩き出した。
「ま、私は乃木坂46には収まらないってことよね」
そう思いながら、スマホをポケットにしまった。
【続く】
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