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第11話 莉菜子 原宿のクレープを食べてそのコスパの悪さを嘆く の巻
しおりを挟む「ねえ、これマジで高すぎない?」
鹿取莉菜子は原宿の竹下通りに立ち、手にしたクレープを睨みつけていた。
色鮮やかなフルーツとたっぷりの生クリームが詰まったそれは、一見とても美味しそう。しかし、彼女の眉間には深い皺が寄っていた。
「だってさ、これ800円よ? 800円あったらスーパーでどれだけお菓子が買えると思ってんの?」
莉菜子は、クレープを持ったまま友人の千夏に訴えかける。千夏は困ったように笑いながら、「まあ、原宿価格ってやつじゃない?」と答えた。
「原宿価格? ふざけてるわよね」
莉菜子は不機嫌そうに一口クレープをかじった。確かに美味しい。生クリームは濃厚で、フルーツも新鮮だ。しかし、それでも彼女の怒りは収まらなかった。
「そもそも、原価いくらよ。小麦粉、卵、牛乳、砂糖、これらを混ぜて焼いただけの生地に、生クリームとフルーツをのせたら800円? バカバカしいにもほどがあるでしょ」
千夏は苦笑しながら、「でも、おしゃれな場所で食べるからこその価値ってあるじゃん?」とフォローする。
「それがいちばん意味不明なのよ!」
莉菜子はため息をついた。彼女は団地暮らしで、無駄な贅沢はしない主義だった。それなのに、こういう「インスタ映え」するものには高額な値段がつき、みんな何の疑問も持たずに買っていく。
「どうしてみんな、可愛くデコレーションされたら値段が跳ね上がることに疑問を持たないの? 味は変わらないのに」
莉菜子は周りを見渡した。制服姿の女子高生や観光客たちが、楽しそうにクレープを頬張っている。その光景を見て、彼女はますます腹が立ってきた。
「いや、別にいいのよ? 金持ちが好きで買ってるなら。でも、明らかに高校生のお小遣いで買うものじゃないじゃない」
千夏は少し考え込みながら、「まあ、特別な日とか、そういうのにはアリなんじゃない?」と控えめに反論した。
「特別な日ねぇ……。じゃあ聞くけど、このクレープを食べたからって、私の人生が変わる?」
「変わらないけど……楽しい気分にはなるよね?」
「その楽しい気分を800円で買うのがコスパ悪いって話よ!」
莉菜子は大げさに肩をすくめた。もちろん、友人とのおしゃべりや、原宿という場所の雰囲気を楽しむのは分かる。でも、彼女にとっては、ただの砂糖と小麦粉の塊にそんな大金を払うのは、理解に苦しむ行為だった。
「どうせなら、ちゃんとしたレストランでケーキセットでも頼んだほうがよくない?」
千夏は「あー、それは確かに」と頷いた。莉菜子は、勝ち誇ったように続ける。
「結局、こういうのって流行に乗せられてるだけなのよ。『原宿に行ったらクレープ食べなきゃ』みたいな風潮があるから、みんな疑問も持たずに買うの。でもね、冷静に考えたら、全然コスパよくないの」
莉菜子はクレープを食べ終え、包み紙をゴミ箱に投げ込んだ。
「……でも、まあ、美味しかったんだけどね」
千夏は思わず吹き出した。「じゃあいいじゃん!」
莉菜子はふっと笑いながら、「まあね」と小さく呟いた。
「でも、やっぱり次はもっとコスパのいいものを選ぶわ」
そんなことを言いながら、彼女は次に何を食べるかを考え始めていた。
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