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第14話 莉菜子 コムデギャルソンで4万円のシャツ購入 の巻
しおりを挟む「やっぱり、これよね……」
鹿取莉菜子は、銀座のコムデギャルソンの店舗で鏡の前に立ち、試着したシャツのシルエットを確認していた。
黒地に独特のカットが施されたそのデザイン。洗練されていて、ありきたりなファッションにはない鋭さがある。タグには「¥40,000」の文字。
「ふぅん……」
彼女は値札をチラッと見たものの、動揺はしない。普通の高校生なら「高すぎる!」と驚くところだろうが、莉菜子にとってはそれほどの問題ではなかった。
彼女の生活は決して裕福ではない。団地暮らし、母子家庭、ギリギリの生活。しかし、彼女は本物にこだわるタイプだった。ファッションだけは一流品を身につけたい。だからこそ、セカストやブックオフ、メルカリを駆使し、時には贅沢な一点物に投資する。
「買います」
彼女は迷いなく店員に伝えた。店員は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔で対応する。
「ありがとうございます。お包みいたしますね」
莉菜子はレジに向かう。財布の中には貯めてきたバイト代と、慎重に管理してきたお金が入っている。すべて計算済みだった。
「やっぱり、こういう服は特別なのよ」
彼女は包まれたシャツを手にしながら、満足げに歩き出した。
街には、彼女を振り返る男たちがいる。だが、彼女にとってそれは日常の光景にすぎない。莉菜子にとって、本当に重要なのは『自分がどんなものを身にまとうか』だった。
家に帰ると、団地の部屋のシンプルなインテリアが彼女を迎えた。決して豪華な部屋ではない。だが、クローゼットを開けると、中には彼女が厳選したハイブランドの服が並んでいる。
「ふふっ、また一つコレクションが増えたわ」
莉菜子はシャツを丁寧にハンガーにかける。そして、鏡の前に立ち、改めてそのデザインを見つめた。
「この服を着て、どこに行こうかしら?」
彼女の美貌はすでに完璧。しかし、完璧な美貌には、それに見合う装いが必要だった。ファッションは、莉菜子にとって単なる衣服ではなく、自分自身を演出するための武器なのだ。
翌日、学校にそのシャツを着ていくと、クラスメートが騒ぎ出した。
「え、それコムデギャルソン?」
「本物!? すごっ……!」
莉菜子は微笑んだ。だが、内心では冷ややかに思っていた。
(所詮、ブランドを知ってるだけで、自分では買えもしないくせに)
莉菜子は今日も完璧だった。外見も、着こなしも、全てが計算され尽くしている。
そして彼女は思った。
「次は、バッグを狙おうかしら?」
「最近は富裕層もユニクロを着ている」なんて話を聞くと、莉菜子は「バカなんじゃないだろうか」と思う。
「富裕層がそんなことしてたら経済が回らないじゃん」
彼女は小さくため息をついた。
確かに、ユニクロの服は実用的かもしれない。しかし、ユニクロなんて一昔前のブランドのデザインをパクったインチキ商品じゃないか。そんなものを富裕層が着まわしてどーすんだって話だ。
「私の尊敬する川久保玲さんは言いました、『いいものを作るには、お金と時間がかかる、だからコムデギャルソンの服は高いのよ』と」
ああ、素敵だわ。
莉菜子は鏡を見ながら、再び自分の姿を確認した。自分の美貌にふさわしいのは、妥協のない服だけ。彼女は決して安物には手を出さない。ファッションは、単なる装いではなく、生き方そのものなのだから。
「さて、次はどんな服を買おうかしら?」
莉菜子は満足げに微笑み、スマホを開いて次の買い物の計画を立て始めた。
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