4 / 9
第一章 開店準備
三話 新たな出会い
しおりを挟む
「という事だワン」
「凄ーいカルちゃん。カルちゃんは物知りさんなんだね。今からカルちゃん先生と呼ばせて頂きます」
「照れるワン」
カルちゃんは自分の頭を、モフモフの前足で恥ずかしそうにポリポリとかく。
私は、ふぅーっと感嘆の息を漏らす。カルチャンの説明は簡潔でとても解りやすかった。
■私は異世界から、このダンジョンに転生してきた異世界人であるという事。
■ダンジョンというのは、カルちゃん達の暮らす世界でランダムに生成される洞窟の事。ダンジョンによって階層や広さ、難易度が異なり、洞窟内にはお宝やモンスターが存在していて、それを目当てに冒険者が集まるらしい。
■冒険者というのはこの世界での職業の事。戦士に魔法使い、盗賊に僧侶に商人等のメジャーなジョブから、派生して出来たダンジョン案内人、モフモフ愛好家等のメジャーじゃないジョブを加えると100近くのジョブが存在するらしい。
■転生者にはスキルという特別な力が備わっているらしい。
■今私が倒れていた場所はセーフポイントというモンスターが存在しないエリアで、行商人が冒険者向けに回復アイテムや武器、食料等を販売している事もあるそうだ。
「リコお姉しゃんにはどんなスキルが備わっているか楽しみワンね」
とカルちゃんの目が輝く。
(どうしよう、そんなに大したスキルじゃなかったら……)
私は苦笑いで誤魔化す。ちなみにカルちゃんもスキルが使えるんだそうだ。
『匂い消し』という自分の匂いを消して、モンスターに気配を感じ取られない様にするスキルと『獣鼻』というダンジョンにあるワナの位置と種類を、匂いで識別できるスキルを所有しているらしい。
カルちゃんは元々、主人とダンジョンに同行し『匂い消し』のスキルで気配を消してダンジョン内を主人より先に探索し、モンスターの位置を把握し『獣鼻』を駆使してワナの位置や種類を事前に知り、その知り得た情報を主人に伝えるという、非常に重要な任務を担っていたそうだ。
それを聞いて、私は益々自信を失くす。こんな小さな子でもそんな凄い事をやってのけるんだから驚きだ。
「リコお姉しゃんはここにいれば安心だワン。僕はご主人様を探してくるワン」
カルちゃんはタタタっとダンジョンの奥へと駆けていってしまった。突如訪れた虚無に背筋がゾクっとする。
安全とは言っても、女の子がこんな所に一人でいていいのだろうか。
急に一人になって心細くなる。
すると、遠くの方からかすかな足音が聞こえてくる。鮮明ではなかった靴底のこすれる音が、少しずつ鮮明な音に変わりこちらに近づいてくる。
私は恐ろしくて靴音のする方向を向けずに固まってしまう。
「あっれー、君ソロの冒険者……ではなさそうだね」
その声に恐る恐る振り向く。
目の前には眼鏡をかけた同じ年ぐらいの男の子が、布に包んだ大きな荷物を背負い、品定めする様に私を見ていた。
「……あの、初めまして、こ、こんにちは」
「こんにちはー」
挙動不審な様子の私に対して、男の子は人懐こそうな笑顔で、気さくに挨拶してくれた。
(……悪い人ではなさそう)
私は内心安堵の息を漏らす。
「僕はパッド」
「あ、私はリコって言います」
恐る恐る頭を下げる。礼儀正しいんだね、とパッドが笑う。
「君ジョブは何? 見た所冒険者に見えないけど……」
「その、まだ何の職業にもついてないんです、どうやらその……」
どこまで話したらいいのか解らなくて、しどろもどろな答えになってしまう。
悪い人ではなさそうだけど、信用していいのかも解らない。私が黙っていると見かねた様子で
「もしかして、転生者さん?」
「そ、そうです……」
別に後ろめたい事なんてないのに、何故か後ろめたい気分になってしまう。
「うっわー、珍しい。高難易度ダンジョンの中階層にいきなり転移って、それかなりの無理ゲーだよ。生きてるだけで奇跡だよ」
パッドにそう言われ誇らしいような、恥ずかしいような不思議な気持ちになる。
(そもそも私、かなりの苦境を生き抜いていたから、生きる力はあるのかも)
と、何故か気持ちが前向きになる。
それに……。
「カルちゃんがいてくれたんです、多分もうすぐ戻ってきてくれると思います」
カルちゃんとの出会いは、大切なお守りを手に入れたような気分だった。私はカルちゃんの事を思って、思わず笑顔になる。
でも今頃ご主人様と再会出来て、もしかしたら、戻ってくる事はないのかもしれない……。そう思うと、再び心細い気持ちになる。
しょんぼりとしている私を見かねたのか、パッドがおどけた声で
「カルちゃんって言うのは、君の彼氏?」
と、尋ねてきた。
私は困った顔で首を振る。もしカルちゃんみたいな彼氏がいたら大歓迎だけど、カルちゃんには大好きなご主人様がいる。
駆け足で会いにいくぐらい、大切なご主人様が……。
「魔獣さんなんです、何とかウルフと何とかベアっていうハーフの」
「魔獣?」
パッドが訝しむような表情で黙る。
しばらくの空白の後、パッドは言いずらそうな顔で切り出した。
「……転移してきたばかりだから、この世界の事を詳しく知らなくて当然だと思うんだけど、魔獣はとっくの昔に絶滅したよ」
「凄ーいカルちゃん。カルちゃんは物知りさんなんだね。今からカルちゃん先生と呼ばせて頂きます」
「照れるワン」
カルちゃんは自分の頭を、モフモフの前足で恥ずかしそうにポリポリとかく。
私は、ふぅーっと感嘆の息を漏らす。カルチャンの説明は簡潔でとても解りやすかった。
■私は異世界から、このダンジョンに転生してきた異世界人であるという事。
■ダンジョンというのは、カルちゃん達の暮らす世界でランダムに生成される洞窟の事。ダンジョンによって階層や広さ、難易度が異なり、洞窟内にはお宝やモンスターが存在していて、それを目当てに冒険者が集まるらしい。
■冒険者というのはこの世界での職業の事。戦士に魔法使い、盗賊に僧侶に商人等のメジャーなジョブから、派生して出来たダンジョン案内人、モフモフ愛好家等のメジャーじゃないジョブを加えると100近くのジョブが存在するらしい。
■転生者にはスキルという特別な力が備わっているらしい。
■今私が倒れていた場所はセーフポイントというモンスターが存在しないエリアで、行商人が冒険者向けに回復アイテムや武器、食料等を販売している事もあるそうだ。
「リコお姉しゃんにはどんなスキルが備わっているか楽しみワンね」
とカルちゃんの目が輝く。
(どうしよう、そんなに大したスキルじゃなかったら……)
私は苦笑いで誤魔化す。ちなみにカルちゃんもスキルが使えるんだそうだ。
『匂い消し』という自分の匂いを消して、モンスターに気配を感じ取られない様にするスキルと『獣鼻』というダンジョンにあるワナの位置と種類を、匂いで識別できるスキルを所有しているらしい。
カルちゃんは元々、主人とダンジョンに同行し『匂い消し』のスキルで気配を消してダンジョン内を主人より先に探索し、モンスターの位置を把握し『獣鼻』を駆使してワナの位置や種類を事前に知り、その知り得た情報を主人に伝えるという、非常に重要な任務を担っていたそうだ。
それを聞いて、私は益々自信を失くす。こんな小さな子でもそんな凄い事をやってのけるんだから驚きだ。
「リコお姉しゃんはここにいれば安心だワン。僕はご主人様を探してくるワン」
カルちゃんはタタタっとダンジョンの奥へと駆けていってしまった。突如訪れた虚無に背筋がゾクっとする。
安全とは言っても、女の子がこんな所に一人でいていいのだろうか。
急に一人になって心細くなる。
すると、遠くの方からかすかな足音が聞こえてくる。鮮明ではなかった靴底のこすれる音が、少しずつ鮮明な音に変わりこちらに近づいてくる。
私は恐ろしくて靴音のする方向を向けずに固まってしまう。
「あっれー、君ソロの冒険者……ではなさそうだね」
その声に恐る恐る振り向く。
目の前には眼鏡をかけた同じ年ぐらいの男の子が、布に包んだ大きな荷物を背負い、品定めする様に私を見ていた。
「……あの、初めまして、こ、こんにちは」
「こんにちはー」
挙動不審な様子の私に対して、男の子は人懐こそうな笑顔で、気さくに挨拶してくれた。
(……悪い人ではなさそう)
私は内心安堵の息を漏らす。
「僕はパッド」
「あ、私はリコって言います」
恐る恐る頭を下げる。礼儀正しいんだね、とパッドが笑う。
「君ジョブは何? 見た所冒険者に見えないけど……」
「その、まだ何の職業にもついてないんです、どうやらその……」
どこまで話したらいいのか解らなくて、しどろもどろな答えになってしまう。
悪い人ではなさそうだけど、信用していいのかも解らない。私が黙っていると見かねた様子で
「もしかして、転生者さん?」
「そ、そうです……」
別に後ろめたい事なんてないのに、何故か後ろめたい気分になってしまう。
「うっわー、珍しい。高難易度ダンジョンの中階層にいきなり転移って、それかなりの無理ゲーだよ。生きてるだけで奇跡だよ」
パッドにそう言われ誇らしいような、恥ずかしいような不思議な気持ちになる。
(そもそも私、かなりの苦境を生き抜いていたから、生きる力はあるのかも)
と、何故か気持ちが前向きになる。
それに……。
「カルちゃんがいてくれたんです、多分もうすぐ戻ってきてくれると思います」
カルちゃんとの出会いは、大切なお守りを手に入れたような気分だった。私はカルちゃんの事を思って、思わず笑顔になる。
でも今頃ご主人様と再会出来て、もしかしたら、戻ってくる事はないのかもしれない……。そう思うと、再び心細い気持ちになる。
しょんぼりとしている私を見かねたのか、パッドがおどけた声で
「カルちゃんって言うのは、君の彼氏?」
と、尋ねてきた。
私は困った顔で首を振る。もしカルちゃんみたいな彼氏がいたら大歓迎だけど、カルちゃんには大好きなご主人様がいる。
駆け足で会いにいくぐらい、大切なご主人様が……。
「魔獣さんなんです、何とかウルフと何とかベアっていうハーフの」
「魔獣?」
パッドが訝しむような表情で黙る。
しばらくの空白の後、パッドは言いずらそうな顔で切り出した。
「……転移してきたばかりだから、この世界の事を詳しく知らなくて当然だと思うんだけど、魔獣はとっくの昔に絶滅したよ」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる