人工子宮

木森木林(きもりきりん)

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第3章

第2話(保存していた精子と卵子の利用)

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1週後にマッチング誓約書を提出した二人は、既に恋に陥っていた。抱擁や接吻だけでなく、もっと互いに触れたいと思う。どちらからと言うことなく二人でラブホに向かった。



遠夢は桜空のブラウスを脱がせ、ブラジャーを外す。少し上向いた形の良い乳房に触れる。桃色の乳首と乳輪が白い肌から浮き立ってみえる。遠夢の口唇が乳首に当たる。小さな乳首は勃起し、白い肌が紅潮している。桜空の耳元に遠夢の息が当たる。耳に接吻する遠夢に抗し切れず、桜空は遠夢のズボンのベルトを緩め、チャックを外し、ズボンを脱がせた。そのままベッドに押し倒しペニスを掴み出す。

桜空の口唇が遠夢のペニスを咥えた。勃起したペニスは包皮から亀頭を脱出させようと緊張し切っている。ペニスを咥えたまま、桜空はペニスの根幹を手で掴み、上下に包皮を動かした。亀頭が脱出した。遠夢は痛みと恍惚感で顔を歪めている。遠夢のペニスは桜空の口紅で真っ赤になっていた。いや少し出血していたのだった。遠夢のペニスは だった。しばらくの圧迫で出血は直ぐに止まった。

二人は望妊治療センターを訪れた。遠夢は精液検査をしてみたが、18歳で凍結保存した時より結果は不良になっていた。それでも、『凍結してある精子だけで数回にわたって顕微授精は可能』ということであった。桜空も改めて排卵誘発剤を使って卵巣刺激してみたが、卵胞発育を確認できなかった。

妊孕性温存センターで凍結保存されていた二人の精子と卵子が望妊治療センターに移送される。卵子を凍結保存するとき、卵子を包む顆粒膜細胞層を取り除いているので、男性の精子所見に関わらず顕微授精が必要になる。

18歳のときに凍結保存していた遠夢の精子と桜空の卵子が望妊治療センターで融解された。20年という時間経過で、二人はトキを積み重ねていたが、配偶子はトキを停止していた。復帰しないことも1~3%あると聞いていたが、桜空の10個の卵子は全て凍結前の状態に戻っていた。



二人は培養室の見学に行った。 が整然と並んでいる部屋に人影はない。5台ある「の中には、それぞれ2台の顕微鏡が設置されている。顕微鏡には、さらに色々な器具が取り付けられているものもある。数㎝の動きをミクロ単位の動きに変え卵子細胞質内に精子を注入する顕微授精のための装置だ。」

「培養室の天井からは、温度や湿度が管理され、微細なフィルターを通されたクリーンなエアが吹き出されている。このエアは、床に開けられた小さな多くの穴に吸い込まれる。この培養室が最も高い陽圧で、この部屋から採卵移植室や培養準備室へとエアが流れるように設計されている。」

見学通路の反対側の培養準備室から、エアーシャワー室を通って二人の胚培養士が入ってきた。帽子を被り、マスクを付け、手術着を着ている。装置による介助が行われるようになっているが、いまでも顕微授精に使用する精子は最終的にヒトの目で選ばれる。胚培養士が顕微鏡を覗き始めた。桜空の10個の卵子に、それぞれ遠夢の1つの精子が細い穿で顕微授精された。


【脚注】
不完全包茎:亀頭の先が完全には露出しておらず包皮に包まれている状態。性交や射精が可能であれば特に問題はない。射精や性交ができない完全包茎では、簡単な手術が勧められる

培養器:卵子や受精卵が入った培養液のシャーレを入れて、一定の温度や酸素/二酸化炭素/窒素の気相に保つための装置

クリーンベンチ:クリーン度の高い部屋内でも、さらにクリーン度を上げるための箱型の装置。箱上部分からフィルターを通したエアが作業エリアに噴出される

穿刺用ガラスピペット:細いガラスの先端を更に細く尖らせた精子を卵子細胞質に注入する管。この反対側は先が尖っていないホールド用ガラスピペットで卵子を固定する
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