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誓い
しおりを挟む月の輝く夜。エリザベートは、ブラッドリー家の大広間に入るドアの前に立った。ブラッドリー家の家紋である、蔦の絡んだ薔薇と黒鳥のモチーフが刻まれた重厚なドアは、傍から見たら何者も寄せ付けない雰囲気なのだろうけれど、エリザベートにとっては優しく迎え入れてくれるもののように見えた。
エリザベートが身を包んでいたのは、ウエディングドレスだった。これ以上何も混ぜることのできない、どこまでも黒いマーメイドラインのドレスは、膝の少し上辺りから大きく広がり、身長よりもはるかに長いトレーンが背後の床を埋めていた。
瞳を閉じて、ふう、と息を吐き再びドアに相見えると、それはゆっくりと開き、広間の様相を見せはじめる。
同時に、エリザベートはレッドカーペットで造られた道の上に立った。
大きなシャンデリアのクリスタルが、キャンドルの灯りを受けてたおやかに室内を照らし、ドレスのレースに編み込まれた銀糸がきらきらと輝く。
エリザベートが向かうその先、人間の教会を模して設置された祭壇の手前には、黒衣に身を包んだ彼がいる。月の無い夜のような艷めく黒髪に、輝くような赤い瞳が美しい。黒いヴェールによって、視界が靄がかっているのがひどくもどかしく思えた。
視線が合うとシリルは、優しく、そして愛おしげに笑いかけてくれた。彼の胸に、しっかりと抱きしめてもらいたい。愛おしい気持ちが溢れそうだった。
早く、シリルにヴェールを上げてもらおう。そして、明瞭になった視界で、永遠の誓いのキスをするのだ。
はやる気持ちを抑えながら、エリザベートはドレスの裾を翻し、一歩を踏み出した。
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