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ヴァンパイアは、1人の男を始祖とする起源を持つ。その男が、契約を交わしヴァンパイアにした女との間に産まれた子たちがそれぞれに分岐して、今のヴァンパイアの社会を作っている。ヴァンパイアの社会は人間の世界と紙一重で、人間の貴族の中にも何人かヴァンパイアが混ざっていたりする。そんなヴァンパイアの社会には王の血筋――始祖の第1子の血を継ぐもののことだ――があり、それがラフェスキア家だ。そして、シリルやシリルの父、弟に流れている血こそがそれだった。長命ゆえに子のできにくいヴァンパイアにとって、始祖の血筋が今でも受け継がれていることはとても重要な意味を持っていた。その血筋は何よりも尊ばれるものであり、それ故に、果たさなければならない責務もあった。それは、王として君臨し、ヴァンパイアたちを纏めあげることだった。そしてシリルの父母であるフランツとカーミラが、責務を譲った、とはつまり。
「ということは、今の王は……」
既に混乱しそうになりながら、エリザベートが導き出したのは。
「そうだ。俺の弟だ」
「シリルは、王兄殿下……なんですね」
「ああ、昔はな」
「昔……?」
シリルの、意味ありげな口ぶりが気になった。
「そうだ。昔は王太子だったけれど、俺は廃嫡されているからな」
廃嫡。意外にも重い事実を、シリルはさらりと言ってのけた。
「私はそこまでしなくても、って思ったのよ。でも、シリルがどうしてもって自分から言うから……」
カーミラは未だ納得のいっていないような様子だった。
「でも、なんで……」
その経緯を聞いてもいいものなのかを考えあぐねながら、エリザベートは問うた。
「リジーも知っての通り、俺は青い目を持って生まれた。でも、王は黒髪赤目じゃないと赦されないんだ。吸血鬼界の王の血筋として産まれてきたのに、赤の色彩を持たない異端として、直接ではないけれど周りから腫れ物扱いを受けていた」
だから、自ら望んで廃嫡され、人間の世界に紛れることにしたんだ。そう、シリルは言う。
「でも、王の血筋が庶民として子を増やすのを、周りは良しとしなかったわ。だから、ヴァンパイアの血筋であり、子の居ないブラッドリー家の跡継ぎとしてシリルが迎え入れられたの。人間の世界で、ヴァンパイアの血筋は、ブラッドリー家が一番濃いかしら。あとは王家も少しだけれど混ざっているわね」
カーミラが、続けて説明する。
「王家……」
「だから、王族は少し寿命が長いんじゃないかしら」
たしかに、この国の王族は皆、平均寿命よりもあと10から20年は長く生きている。一連の説明を聞き、エリザベートは納得した。これらの理由があるから王家は、より濃いヴァンパイアの血を持つブラッドリー家に、迂闊に手出しできなかったのだ。ヴァンパイアの社会構造について聞いているようで、人間の貴族社会の裏側まで知れたエリザベートは、パズルのピースが次々と嵌っていくような感覚がした。
「あの頃……たしか100年ほど前だったかしら。シリルが産まれてから一時期、私の不貞を疑われたこともあったわね。シリルだって、フランツの子なのに酷いわよね」
どこか悔しそうなカーミラは、あまりにも若すぎる見た目ではあったけれど、シリルの母親だと確信させる何かがあった。
「ということは、今の王は……」
既に混乱しそうになりながら、エリザベートが導き出したのは。
「そうだ。俺の弟だ」
「シリルは、王兄殿下……なんですね」
「ああ、昔はな」
「昔……?」
シリルの、意味ありげな口ぶりが気になった。
「そうだ。昔は王太子だったけれど、俺は廃嫡されているからな」
廃嫡。意外にも重い事実を、シリルはさらりと言ってのけた。
「私はそこまでしなくても、って思ったのよ。でも、シリルがどうしてもって自分から言うから……」
カーミラは未だ納得のいっていないような様子だった。
「でも、なんで……」
その経緯を聞いてもいいものなのかを考えあぐねながら、エリザベートは問うた。
「リジーも知っての通り、俺は青い目を持って生まれた。でも、王は黒髪赤目じゃないと赦されないんだ。吸血鬼界の王の血筋として産まれてきたのに、赤の色彩を持たない異端として、直接ではないけれど周りから腫れ物扱いを受けていた」
だから、自ら望んで廃嫡され、人間の世界に紛れることにしたんだ。そう、シリルは言う。
「でも、王の血筋が庶民として子を増やすのを、周りは良しとしなかったわ。だから、ヴァンパイアの血筋であり、子の居ないブラッドリー家の跡継ぎとしてシリルが迎え入れられたの。人間の世界で、ヴァンパイアの血筋は、ブラッドリー家が一番濃いかしら。あとは王家も少しだけれど混ざっているわね」
カーミラが、続けて説明する。
「王家……」
「だから、王族は少し寿命が長いんじゃないかしら」
たしかに、この国の王族は皆、平均寿命よりもあと10から20年は長く生きている。一連の説明を聞き、エリザベートは納得した。これらの理由があるから王家は、より濃いヴァンパイアの血を持つブラッドリー家に、迂闊に手出しできなかったのだ。ヴァンパイアの社会構造について聞いているようで、人間の貴族社会の裏側まで知れたエリザベートは、パズルのピースが次々と嵌っていくような感覚がした。
「あの頃……たしか100年ほど前だったかしら。シリルが産まれてから一時期、私の不貞を疑われたこともあったわね。シリルだって、フランツの子なのに酷いわよね」
どこか悔しそうなカーミラは、あまりにも若すぎる見た目ではあったけれど、シリルの母親だと確信させる何かがあった。
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