出血令嬢はヴァンパイア公爵様に愛される

茉莉花 凛

文字の大きさ
33 / 36

3

しおりを挟む
ヴァンパイアは、1人の男を始祖とする起源を持つ。その男が、契約を交わしヴァンパイアにした女との間に産まれた子たちがそれぞれに分岐して、今のヴァンパイアの社会を作っている。ヴァンパイアの社会は人間の世界と紙一重で、人間の貴族の中にも何人かヴァンパイアが混ざっていたりする。そんなヴァンパイアの社会には王の血筋――始祖の第1子の血を継ぐもののことだ――があり、それがラフェスキア家だ。そして、シリルやシリルの父、弟に流れている血こそがそれだった。長命ゆえに子のできにくいヴァンパイアにとって、始祖の血筋が今でも受け継がれていることはとても重要な意味を持っていた。その血筋は何よりも尊ばれるものであり、それ故に、果たさなければならない責務もあった。それは、王として君臨し、ヴァンパイアたちを纏めあげることだった。そしてシリルの父母であるフランツとカーミラが、責務を譲った、とはつまり。

「ということは、今の王は……」
既に混乱しそうになりながら、エリザベートが導き出したのは。
「そうだ。俺の弟だ」
「シリルは、王兄殿下……なんですね」
「ああ、昔はな」
「昔……?」
シリルの、意味ありげな口ぶりが気になった。
「そうだ。昔は王太子だったけれど、俺は廃嫡されているからな」
廃嫡。意外にも重い事実を、シリルはさらりと言ってのけた。
「私はそこまでしなくても、って思ったのよ。でも、シリルがどうしてもって自分から言うから……」
カーミラは未だ納得のいっていないような様子だった。

「でも、なんで……」
その経緯を聞いてもいいものなのかを考えあぐねながら、エリザベートは問うた。
「リジーも知っての通り、俺は青い目を持って生まれた。でも、王は黒髪赤目じゃないと赦されないんだ。吸血鬼界の王の血筋として産まれてきたのに、赤の色彩を持たない異端として、直接ではないけれど周りから腫れ物扱いを受けていた」
だから、自ら望んで廃嫡され、人間の世界に紛れることにしたんだ。そう、シリルは言う。
「でも、王の血筋が庶民として子を増やすのを、周りは良しとしなかったわ。だから、ヴァンパイアの血筋であり、子の居ないブラッドリー家の跡継ぎとしてシリルが迎え入れられたの。人間の世界で、ヴァンパイアの血筋は、ブラッドリー家が一番濃いかしら。あとは王家も少しだけれど混ざっているわね」
カーミラが、続けて説明する。
「王家……」
「だから、王族は少し寿命が長いんじゃないかしら」
たしかに、この国の王族は皆、平均寿命よりもあと10から20年は長く生きている。一連の説明を聞き、エリザベートは納得した。これらの理由があるから王家は、より濃いヴァンパイアの血を持つブラッドリー家に、迂闊に手出しできなかったのだ。ヴァンパイアの社会構造について聞いているようで、人間の貴族社会の裏側まで知れたエリザベートは、パズルのピースが次々と嵌っていくような感覚がした。
「あの頃……たしか100年ほど前だったかしら。シリルが産まれてから一時期、私の不貞を疑われたこともあったわね。シリルだって、フランツの子なのに酷いわよね」
どこか悔しそうなカーミラは、あまりにも若すぎる見た目ではあったけれど、シリルの母親だと確信させる何かがあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...