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第1章

聖女の祠3アリスティナside

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 死ぬ時は外で、誰の目にも触れずに死にたいと思った願いに嘘はなかったけど、それも半分無理だろうと思っていた。
  私の足は生まれて直ぐに瀕死の状態になったときから動かなくなった。腕の力も弱かった私は移動するとき誰かに車椅子を引いてもらわなくてはならなかった。
 
 気晴らしにお城を散策したいと使用人に頼んでみるも人の心の機微を察知しやすい私には気晴らしにもならなかった。
 私への悪意があったのは勿論、動かすことは使用人達にとってリスクもあった。獣人だけど私は王族。万一使用人の不手際により何かあれば責任を追求される。少し過剰に動くだけでも直ぐ熱を出す私は皆にとって爆弾のようなもの。

 貴族の子供達と会った時もそうだった。カルロお兄様の手前皆私にそれなりの口上を述べて挨拶をした後は〝姫様は身体が弱いので遊びに誘うと失礼〟と言った認識で何に誘われる事もなかった。元々獣人姫の対応など嫌だと思われていたところにそれらしい断り理由が転がっていたから使ったのだろうと思う。


 だから王宮の中で自然と私は息を潜めた。
 出来うる限り動かないように、求めないように。
 
 こんな私は本を読んで主人公になりきって色んなところに行く想像をしていた。全部物語だけのもの。私がこの主人公のように心躍る経験を積む事なんか、この先ありはしないのだとずっと思っていた。

 

 だけど、目の前のこの人は私を外に連れ出してくれたばかりか、こう言うのだ。

「ねぇ、アリスティナ姫一緒に冒険してみようよ。」

 テリア様は、私の為に聖水を作れるようになりたいと言ってくれた。それだって嬉しかった。

 本当は私が自分で聖水を求めるべきで、試練を受けてチャレンジすると言うべきなのだろう。
 だけど、獣人の私は聖なる力は欠片もないし歩けない。力も弱い。チャレンジした所で結果は目に見えている。

 テリア様は噂によると聖女の勉強での評価が高く、異世界の聖女には敵わないだろうが聖なる力の素質が高いと言われている。

 だから私が行くより聖水を作れる可能性はあった。だけど、数百年前の聖女が人柱になった様に危険が伴う可能性も高い。

 だから、止めたのに。止めなくちゃいけないのに。

「祠の中って何があるのか気にならない?一緒に見てみようよ!」

 必死に私を説得しようとしているテリア様。貴方は私のこの手足が見えて居ないのでしょうか…。
  
 「一緒に…。」

  私が誰かに誘われる。誰かと一緒に経験する。それは私にとって奇跡と等しく考えていたのに。

 私が首を縦に振ったら、彼女はその奇跡をあっさり叶えてくれるのがわかった。

 我慢すべき。私を外に連れ出してくれて、充分ワクワクして楽しかった。

 だけど聖水をこの先も手に入れられるなら、私はこの奇跡を見せてくれるだろう人ともっと一緒にいられる。
 私なんかを支えにしているカルロお兄様の幸せを見届ける事が出来る。

 そして、それを自分の手で掴もうとする努力をして良いと言ってくれている。それも一緒に頑張ると言ってくれている。

 止めるべきだと、わかってる。
 これ以上迷惑かけたくない。私自身の事なのに私はきっと一緒に行っても役にはたたない。
 
 〝もう帰りましょう。〟
 〝今日は一日楽しかったです〟

 
 

「私も…一緒に行きます。祠の中に。」

   だけど 気付けば私はそう答えていた。
 

 
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