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第1章
彩光の光 カルロside
しおりを挟む空一帯が隙間なく分厚い雲に覆われ雨が今にも降り出しそうだった。
カルロは王城での用事を済ませ、とある領地の山のふもとを目指して馬を走らせていた。共について来た護衛であるスピアは呆れた様に声をかける。
「そんな急がなくても、大丈夫ですよ。」
「城下町を見て回るくらいかと思ったら、領地をこえる手前までの遠出だぞ。あの女、アリスティナの身体の弱さを知っていて何を考えているんだ。」
「心配なら殿下もついて行けば良かったじゃないですか。」
「俺は忙しいんだよ!思いつきに付き合ってられるか!」
「そんな事言って最近まで授業サボってたくせに…。」
馬上で言い争いをしてから暫く後、山のふもとにある何の変哲もない村についた。
報告では、この村を目的地に出立したらしいが、何かの間違いな気もしてきた。
此処は領土の境目に位置している首都から離れた田舎だ。それなりに作物が育っているので滞りなく税を納めている所ではあるので、農作物がほどよく育っている様子は見受けられるがそれだけだ。
アリスティナが見物して楽しいところなど無いだろうと予想していた通りだった。
(あの女、やっぱ何かを企んでたか?)
瑠璃の花びらが舞う中で、木々の木漏れ日をその身に受けながら目を逸らす事なく見据えてきた黄金の瞳は、1つの邪念も感じさせなかったが…。
「殿下!此処に馬車がありました!」
スピアの声がした方に足を進めると、護衛につけた兵士が1人馬車の前で待機していたのでスピアが質問しているところだった。スピアの「テリア様達は何処に行ったのか?」との問いかけに、兵士は恐縮しながらも山を指差して答える。
「や、山の道のりが険しいので馬車では行けないから此処で待機している様にと…。」
「山?」
それは
兵士の指差した先を仰ぎ見た瞬間のことだった。
「ー・あれは、何だ?」
山の先端を中心にまとわりつく分厚い雲の隙間から、それでも溢れ出さずにはいられないと言うように。
大気が震え太陽光がプリズムを反射し、輪郭のはっきりした厚みのある塊状の雲の隙間から光が漏れ、その光の筋が明るく広がって見えた。
それはまるで幻想的に天から与えられた光芒の光。
降り注ぐ彩光の美しさに、ただ天を仰いだ。
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