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第2章
ミミルside②公爵令嬢消滅前
しおりを挟む数ヶ月の時が経った、悪役令嬢は相変わらず自分の役割を果たそうとしない。
本当に図太く、何を言われようともされようとも、全然怒らないもんだから、賢い私は気付いた。
彼女は私と同じく転生者で、己の運命を変えようとしているのだと。
周りの状況を見ていたら分かるけれど、此処は所詮ゲームの世界だからリディアも既に気付いているだろう。
世界の異物であるリディア以外全て、どんなにご機嫌取ろうともゲーム通りに進むのだと。
でも、そうなると私も少し心配だわ。万一異物のせいで王太子ルートに支障が出たら…実際ラブイベントが全然起きてないのも、異物のせいだったのね。
異物に気付いた頃、ゲーム通り私は王様に王宮へ呼ばれた。
これは実の親に対面するイベントなのだ。
部屋に通された私はこうして実の父、トラビア王と感動の再会をした。何でも私の母とは身分違いの赦されない恋をして、私の母は私を孕んだままセレイア国に逃げて来たのだとか。
父はずっと、母を探していたそうで、私の存在を探し当てたのは学園入学前らしい。
顎周りにダンディな髭があり、私と同じくトラビア王家特有の橙色の瞳。
トラビア王は私と感動の再会を果たし、こうなった経緯を語った後、私に質問してきた。
「…学園で何か困りごとは無いか?」
「いいえ、王太子殿下がいつも助けてくれます」
「王太子と仲が良いのか。
そう言う事ならば将来トラビア国とセレイア国の友好の証として2人の婚姻を考えても良いな!はっはっはっ」
「そんな、私は平民で…」
「そんなもの、学園で作法と学を身に付けたら、セレイア国の何処か貴族にでも養子にして貰えば良いのだ」
機嫌良さそうにしているトラビア王に、セレイア王は「妙案ですな」と頷いている。
私は戸惑うふりして言った。
「ですが、王太子には既に婚約者の方が…」
「政略結婚なのだから、何とでもなるだろう。そちらを側室にするとか。王族には良くある話だ。もしこれが叶えばセレイア王家は余の家族同然だ。なぁ、セレイア王よ」
話をふられたセレイア王は、笑顔で頷いた。
「そうですな、トラビア国王との強固な関係構築程優先されるものはありません」
「ですが…アルレシス公爵令嬢のリディア様は本気で王太子を愛しています。今でさえ嫉妬で…」
私はリディアが如何に酷い事をするのかを話をすると、セレイア王は青ざめた顔をして厳粛な態度で謝ってくれた。
トラビア王はきちんと無礼者を罰するように言付けて、その日は帰っていった。
凄く順調に断罪へ向けての話が進んでいる。王太子との婚約話も順風満帆だ。
まだ学園生活は始まって数ヶ月しか経っていないのだから焦る事は無かったのかも。
あまりにも手応えが肝心の王子からも悪役令嬢からも感じなかったから、焦っていたせいか展開が早いけれど。一先ず此処まで全く問題なくて良かったわ。
ーー今から卒業式が楽しみね。
これからセレイア王は悪役令嬢の行った虐めについて必死で捜査するだろう。
卒業式に悪役令嬢を庇おうとする者は1人もいなくなる。何故ならアルレシス公爵家は事前に王家から事情を説明され、あまりに酷い悪の所業に、娘であるリディアを勘当して縁を切るのだ。
そして娘の犯した罪を赦す贖罪の代わりに、王太子の妃になれるよう私を養女として引き取ってくれるのだ。
もう少しでアルレシス公爵とのご挨拶イベントがあるはずだ。ご挨拶という名の謝罪だけれど。
ーーぁあ、今から想像しただけでスカッとする!本当に正義のヒロインに生まれた私はラッキーだわ!
そう思いながら、私はこの世界でちゃんとヒロインをして過ごしていた。相変わらずの王太子との関係だったけれど、少し冷静に向き合えるようになってきた頃
いつも通り悪役令嬢の役割を与えてあげた直後に、この世界の異物は皆の前で消えて無くなった。
よっぽど悪役令嬢になるのが嫌だったんだろうと思う。気持ちはわかるけれど仕方ない事なのに我儘だと思い腹が立った。
王太子が私の事を好きになり味方するなんて初めからわかってただろうに。今更何を悲観したのか。
折角、卒業式の断罪イベントの準備は整いつつあったのに、全て台無しにされた気分だ。
ーーでもまぁ、あの子に沢山イライラしてたから跡形も無くなってスッキリもしたけど。これで王太子も手紙をいちいち書かなくて済むから良かったよね。
ちらりと王太子に視線を向けると、目の前で悪役令嬢の衣服にみっともなく縋り付いて「嘘だ、嘘だ」と繰り返している。それが何だか面白くない。
昔からの知り合いが急に消えたからと言ってショック受け過ぎじゃない?この王太子は誰にでも優しい設定は要らないよねほんと。
ーーうん、やっぱりあの子は自分の役割を理解してなかったから神様に消されたんだ。
なら、消えて正解だったのだ。役割を果たさなかったあの子が悪い。
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