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王子7歳
しおりを挟むすくすくと、健やかに成長した王子は今年で7歳となり、私は13歳になった。
この年代のこの年齢差は身長が全然違うので、気分は幼稚園の先生のノリで王子と一緒に遊んでいたように思う。
王子の名はクリス・ウェルナンシア
7歳の王子は小説の主人公だけあってとてつも無く顔が整っている。太陽の元に輝く金髪碧眼に白い肌。絵に描いたような天使だった。こんなのに懐かれて可愛く甘えられたら、メロメロにならない方がおかしいだろう。
大人になるまで、王子のお母さんの分も思いっきり愛でてあげる事にした。
だから、日中遊ぶ時も、夜眠る時も王子は私にべったりになってしまった。
「ねぇ、マーガレット、膝枕して。」
王子は膝枕されて本を読み聞かせて貰うのが大好きで、私は王子の柔らかい髪を撫でながら木陰で本を読んであげるのが日課になっていた。
「ねぇ、マーガレットギュってして?」
夜にはふと母親が恋しくなる事があるのか、ハグも良く求められる。
「ねぇマーガレット、キスして?」
「キスですか?」
「家族ではみんなするって聞いたんだ。」
(あれか、ほっぺたにちゅうする西洋の文化的なものね。日本人の記憶がある私としたら照れ臭いなぁ。)
「そうですね、うちも家族間でやりますよ。」
「マーガレットは僕のお嫁さんでしょ?
なら家族でしょう?」
「…そうですね。わかりました。」
身を屈めて膝をつくと、ほっぺたにキスをする。天使は無邪気に微笑んで、今度は自分もするから目を閉じてと言ってきた。
それが微笑ましくて、口元に笑みを浮かべて目を閉じたマーガレットの頬には、小さな手の感触がした。
そして、唇に〝ちゅっ〟と音を立てて柔らかい感触がしたので驚いて目を開く。
「王子、今のは…。」
「ん?」
天使のように眩しい満面の笑みを浮かべたクリスには、他意など無い。
(うーん、まぁ仕方ないか。まだ7歳だもんね。)
「こう言う時のキスは頬にするものなんですよ。
唇は、いつか現れる特別な人にだけ捧げるのです。」
そう言ったマーガレットに、クリスはキョトンとして言う。
「マーガレットは僕の特別な人だよ?
僕はマーガレットが好きだもの。」
「違うんですよ、王子。
私に向けるのとは別に、生涯唯一王子が心を捧げようと思える人です。」
「違うの?じゃあ、その人はいつ会えるの?」
「今は、難しいかもしれません。
そうですね…きっと王子がもっと大きくなったらわかりますよ。だから、大きくなるまでは無闇に唇へキスをしてはいけませんよ。」
「大きくってどのくらい?」
「王子が成人を迎える12歳くらいですかねぇ。」
(その頃ヒロインと出会う訳だし、わかるだろう。)
「そうなんだ、わかった。」
よしよしと頭を撫でてやると、頬を赤くして目を細める王子にキュンとした。
(何て可愛いのかしら…)
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