【完結】年下王子のお嫁様 

マロン株式

文字の大きさ
10 / 56

王子とヒロインは出会いを果たす2

しおりを挟む
  
「会話しても良いですけど、絶対私を好きにならないでくださいね?」

「…ぁあ、うん。」

(やっぱり頭おかしいだけなのかな?)

 ユリシアとクリスは、話しやすいよう庭園にある椅子に腰掛けていた。怯えさせないようにニコニコしているクリスに、警戒心を醸し出しながらも、ユリシアは未だ涙に濡れる目下をハンカチで拭き取っている。

「実は私、好きな人が居まして。その人のタイプがマーガレット様みたいな人なんです。」
「へぇ、その好きな人って。ヴォーレン・バウセラム ミストロイア辺境伯爵?」
「!何でわかったんですか?エスパー?」
「…何となく、ね。」

(…ただのマーガレットの好みってわけじゃないのだろうか。

マーガレットと辺境伯の間に何かあるのか?
いや、マーガレットの身辺調査は完璧にしている筈だ。)

「でも、辺境伯の好みがマーガレットでも、彼女は僕のものだ。
君がそんな思い詰める程では無いように思うけれど。何がそんなに不安なんだい?」

「…(今、さらっと〝僕のもの〟とか言った?なんか怖いこの王子…。
それにしても、どうしようかな。小説の事言ったら頭おかしい奴と思われるよね?それは伯爵家の娘としてまずいかな…)」
※もう思われてます

「もしかして、人に言うのは、はばかられる内容なのかい?」

 すっと細められた目に、ユリシアの背筋がゾクりと凍りつく。此処で王子が納得する答えを言えなければ、ユリシアよりも辺境伯爵の身が危ない気がした。

「わ、私!今年で12歳になるんですけど!」
「へぇ、それで?」
「辺境伯様は…今年で22歳なんです。」

 項垂れて俯いたユリシアを見て、クリスは何を言おうとしているのかを悟った。

「…。」
「私、これでも少しでも大人に見えるよう努力してるんですよ。今日だって、大人っぽく見えるように髪も…マーガレット様が前回やってた髪型にして。

でも全然だめでした。
可愛いって言って貰えても、子供としてしか見てもらえなくて…。」
「……。」
「ずっと好きだったんです。大好きで大好きで。あの人の笑顔見てるとキュンってして。正直無邪気を装い、エッロイこと…いや、ちゅうくらいしてもいんじゃないかな?みたいな。気分になる訳です。」
「……。」
「まぁやりませんけどね。そんな度胸ないので。」
「……。」
「ていうか、王子様には気持ち悪いだけですよね、こんな話。
わかってます。私がおかしいんです。10歳も上の人にこんな…。」
「思わないよ。」
「え?」
「気持ち悪いなんて、思わないよ。」
(僕の思考を読み取られたと思ったよ。)

「……。王子…。」

 
しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...