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王子とヒロインは出会いを果たす2
しおりを挟む「会話しても良いですけど、絶対私を好きにならないでくださいね?」
「…ぁあ、うん。」
(やっぱり頭おかしいだけなのかな?)
ユリシアとクリスは、話しやすいよう庭園にある椅子に腰掛けていた。怯えさせないようにニコニコしているクリスに、警戒心を醸し出しながらも、ユリシアは未だ涙に濡れる目下をハンカチで拭き取っている。
「実は私、好きな人が居まして。その人のタイプがマーガレット様みたいな人なんです。」
「へぇ、その好きな人って。ヴォーレン・バウセラム ミストロイア辺境伯爵?」
「!何でわかったんですか?エスパー?」
「…何となく、ね。」
(…ただのマーガレットの好みってわけじゃないのだろうか。
マーガレットと辺境伯の間に何かあるのか?
いや、マーガレットの身辺調査は完璧にしている筈だ。)
「でも、辺境伯の好みがマーガレットでも、彼女は僕のものだ。
君がそんな思い詰める程では無いように思うけれど。何がそんなに不安なんだい?」
「…(今、さらっと〝僕のもの〟とか言った?なんか怖いこの王子…。
それにしても、どうしようかな。小説の事言ったら頭おかしい奴と思われるよね?それは伯爵家の娘としてまずいかな…)」
※もう思われてます
「もしかして、人に言うのは、はばかられる内容なのかい?」
すっと細められた目に、ユリシアの背筋がゾクりと凍りつく。此処で王子が納得する答えを言えなければ、ユリシアよりも辺境伯爵の身が危ない気がした。
「わ、私!今年で12歳になるんですけど!」
「へぇ、それで?」
「辺境伯様は…今年で22歳なんです。」
項垂れて俯いたユリシアを見て、クリスは何を言おうとしているのかを悟った。
「…。」
「私、これでも少しでも大人に見えるよう努力してるんですよ。今日だって、大人っぽく見えるように髪も…マーガレット様が前回やってた髪型にして。
でも全然だめでした。
可愛いって言って貰えても、子供としてしか見てもらえなくて…。」
「……。」
「ずっと好きだったんです。大好きで大好きで。あの人の笑顔見てるとキュンってして。正直無邪気を装い、エッロイこと…いや、ちゅうくらいしてもいんじゃないかな?みたいな。気分になる訳です。」
「……。」
「まぁやりませんけどね。そんな度胸ないので。」
「……。」
「ていうか、王子様には気持ち悪いだけですよね、こんな話。
わかってます。私がおかしいんです。10歳も上の人にこんな…。」
「思わないよ。」
「え?」
「気持ち悪いなんて、思わないよ。」
(僕の思考を読み取られたと思ったよ。)
「……。王子…。」
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